最終戦はサラリと
「さぁて…っ行け!! 萌」
おい
「萌チャン援護隊出動うぅぅう…ヒャッハアァ!」
お前ら…
「先手必勝の法則よ、須賀クン」
「吉瀬リンが、オレを…名前で…クンづけで…呼んでくれたあああ」
「五月蝿い」
あれ
今まで何て呼ばれてたアイツ
「須賀ぁあっ、敵は何体だ?」
「いつまでもスタート地点すね先輩…およそ30っすよ」
オーケー
ジャキン、とな
来るわ来るわ、廊下の先からワラワラと。
「…あいつら…部下だ!」
マジすか
知らねえぇよ萌お前が真っ先に攻撃してるし
敵は防弾チョッキ完備。
高そーあれ
「なんでアイツら閃光弾が効かないんだ!」
ごめんなさいな
敵は混乱している。
その時だった。
「瀬戸か」
誰だよ
「ククク、お前が主導だから手こずってたんだな」
「有明?」
「こちら、状況が掴めません。吉瀬リンどーぞ」
「同じくよ。後で殴ってやるわ須賀クン」
「やっぱりリンは嫌っすか」
コツコツと靴を鳴らしながら、長官姿のソイツは近づいてきた。
金髪で細かい三つ編みを横に垂らした悪魔顔。
間違いない
有明だ
三十路近いのにかっけぇな
「なるほど、ラスボスはお前か」
「いやぁ? 一応私には上司がいるからなぁ」
あー、あの髪よく燃えそうだな
「とりあえずボコッていいの瀬戸?」
「ククク…可愛い家族が出来たじゃないか」
「誰があんな変態ロリバカの身内だって?」
そこまで言うか吉瀬
悲しいぞ俺は
いつのまにか、本当にいつのまにか、周りには敵がいなくなっていた。
「あれ?」
「あら?」
「あっれー? 誰が倒したんすかって決まってますが」
カラン。
血まみれのナイフが落ちた。
30の小山の中に立つのは凛々しい彼女だ。
「…勝利圧勝無敵完璧」
「さっすが、萌ね!」
「萌チャンしびれるっす」
「ほう? あれは日本じゃないか」
「…有明?…あなたの部隊も衰えましたね」
悪い
スゴく気になるんだが萌お前、名字日本なのか
似合わねー
「…」
「うぉっ!?」
「…馬鹿にしたな?」
え、聞こえてた?
とにかくナイフが無いからってその辺の人間を投げるなよ
「私を甘く見ない方が良いぞ」
「有明…ぶっちゃけ負ける気がしねぇからさ、先に告白タイムに入ってくれないか」
「先輩カッコいい」
だろ?
「私より下にいたくせに余裕だな」
「そんな過去知らないな」
「もともとこの訓練だって、私がいなければ始まらなかったんだぞ?」
始めなくてよかったんじゃね
「…有明…死んで?」
「ちょっ待て萌っ…」
「萌チャン!」 「あんたにはもうナイフ無いのよ!」
グサッ
「え?」
「ほほう、胸に隠し持ってたか…ゴボッ…見事に急所を当ててるな」
「…当たり前」
「有あ…け?」
「ガハッ…ククク、まさかこれで終わりじゃないですよね」
有明…お前弱っ
「萌チャン最強だぁ」
「流石あたしの犬」
聞こえなかったね何も
「…う、あ?」
「萌?」
ドサリ
「ククク、未熟者」
「萌チャンに何した貴様!」
思い出した
有明史斗の得意技は暗殺術。
「…首…がぁ…あ」
「萌、今行くからね」
「落ち着け吉瀬」
「無理」
「吉瀬えぇえ! 止まれっ」
「私の可愛い萌の首を赤く染めやがって変態ナルシストナルシストナルシストがあぁああ」
「ククク、私はどれだけナルシストなんだ?」
「吉瀬リンっ」
「はうっ」
「え? 吉瀬…?」
見たこと無い、想像もしていなかった倒れる吉瀬。
鵜那の殺気にもものともしなかった吉瀬が、震えてる。
「負ける気がしないね…今でもか? 瀬戸」
ブチキレそうだ
この温厚な俺がな
「萌チャン…吉瀬リン…嘘っすよね。演技っすよね? 先輩っ」
「予想外にアイツは強い」
胸にナイフ刺したまま、平然としやがって
「女性だからね、優しくしたが。君たちは苦しませてやろう」
「やってみろよナルシスト」
「須賀、ちょっと待て」
「もう、なんすか? 先輩っ」
「なんで今俺たちは戦ってんだ?」
静寂
あぁ、吉瀬が起きてないとこんなに静かなんだな
「答えて欲しいか」
「ったりまえっす!」
まだお前がいたな、須賀
…チャキリ
双剣だ。
「私を倒したらな!」
なんつうか、今言うのもなんだが…ワンパターンだな!
ワンパターンで萌と吉瀬を傷つけるな
「行くよ、瀬戸先輩」
タメになりやがって
「ああ、須賀」