終章前夜
そろそろ議論に入ろうか。
いいだろもう
「今回の演習変じゃね?」
「先輩?」
「え?」
「…」
やっぱ考えてなかった。
やっぱこいつら何も考えてなかった
「こんだけ攻撃仕掛けられといて、頸動脈切られかけられといて、穴落とされて変なゲームさせられといて、保存食が消えて…何故攻撃命令が出ないっ」
ちなみに保存食を喰ったのは吉瀬だ。
言うまでもない。
「ふうん、確かにおかしいわね」
「…敵の私は何も思わないが」
「そんなこと言ったら吉瀬リンも敵じゃないすか」
「吉瀬リン言うな」
「殴るなんてひどいっ」
「…暴力は出世できない」
「五月蠅いわね萌。生きて帰って何でまたあんたの減らず口聞かなきゃなんないのよ」
待てとまれストップ
「お前ら危機感ないだろ」
「何に対して?」
ハモるな
「東軍どうなってんだ?」
かさかさ鳴った。
360度何処からも。
「やばくない?」
「囲まれちゃってますねえ」
「…ザコ共が」
「ああ…あ、ああ、あぁあぁああっっ苛つくな手前らああ」
規制なんて知るか
腰で温まっていた銃を構える。
「先輩がぶち切れです」
「あたしもー」
「…果てろ」
奇妙な四人は四方向に飛び出した。
隠れていた軍勢が一斉に立ち上がり乱射する。
どっからこんなに人が出てくんだよ
ああもいい
どうでも
「せんぱーい、なぎ払っちゃって」
「瀬戸つよいじゃん」
「…私が勝つ」
「ちょ…萌。何に対抗してんの。その人もう気絶してるから、それ以上切っちゃだめって」
「はい、十五人目っす」
「…二十三」
「あんたらねえ…はいっ二十一」
うるさい
あ、弾が切れたか
まあいいや
ペイント弾だし
このまま銃を振り回せば
「先輩が怖いっすー」
「あれが本性なんじゃない?」
「…三十六っ三十七」
「ちょっと、萌ちゃんもいっちゃってるねー」
「マジで、ね」
一息ついたら静かだった。
「あれ?」
須賀の声が横から響く。
「あれ? じゃないっすよ先輩。何人倒したんですか?」
周りにたくさんの人影。
動かない。
俺がやったのか?
「多分…六十一」
「覚えてんのかいっ…あんたねえ」
「…負けた敗北最悪落胆終末」
「萌ちゃんが凄まじい勢いで落ち込んでいってる」
「萌どうかしたのか?」
「知らないとは言わせないわよっこの女泣かし」
「いやいや意味わかんない」
「先輩も男だったんすねー」
「益々意味わかんないぞ?」
「…頸動脈頸動脈頸動脈頸動脈」
「萌が狂っている!?」
俺の所為?
「っていうか、この人たちなんなんすかね」
「それを話し合おうとしていたんじゃないのか?」
「あ…なるー」
「でも、こいつら東軍よ」
「え?」
「ほら、あんた達と同じ恰好じゃない?」
「本当っすねー…何で」
「こいつらペイント弾は使わなかったよな」
「そこだけ命令に従っていたんでしょうか…」
「東軍の禁止令はペイント弾だったんだ」
「そうっす」
お前が真っ先に破ったがな
「へえ、西軍はリュックの保持よ」
だから荷物あさっていたのか
「どうする?」
「帰りはしませんっすよ」
「誰もそんな案だしてねえよ」
「…帰還帰宅忘却森羅万象」
「萌のキャラが変わっている!?」
ほっとけ
とりあえず木に登ってみた。
会議っぽいだろ
「整理しよう」
「オレは待機が始まり十分後に瀬戸先輩に出会いました。そこから二人で行動を始めて一時間、吉瀬さんの襲撃を受け、オレがあっさり仕留めちゃいまぐふ…仲間になりました。その後吉瀬さんがさらわれかけて逆に犯人をのしちゃったのが五時間前。先輩が頸動脈やられて萌ちゃんに出会います。森を抜けてぶらぶらしていたころ、萌ちゃんの驚異的な感覚でトラップを退けたはいいものの、先輩と吉瀬リンぐぬっ…吉瀬さんが行方不明になったのが三時間前。ようやく四人揃ったと思ったら先程の襲撃です」
御苦労
「毎回敵変わってんじゃん」
「確かにな、吉瀬の時は西軍の変態だったし、萌は西軍だろ。鵜那は部外者だろ。さっきのは東軍」
「…私を敵に区別するな」
「鵜那はある意味部外者でもないけどね」
「…シカト?」
「ふう、混乱は解けずっすね」
「…シカト?」
「決めた。東軍の基地に乗り込むぞ」
「先輩格好良い」
「なかなかの案ね」
「…死か都?」
「行くぞ」
「オレのが道案内できますよー」
「じゃ、頼む」
「あれ、意外とあっさり―」
「早く案内しなさいよ。ほら、萌行くわよー。ちょ…すねないすねない。泣かないの。ほらナイフしまって。あーはいはい頸動脈頸動脈うるさい。ちゃんとナイフしまって。瀬戸の首睨まないの」
置いてこうぜ?