第九話
「マスクウェル殿下。拭き終わりましたよ」
「そうか。すまないが服を着せてくれ」
「あの・・・。マスクウェル殿下・・・」
「何だ?」
「今まではどうしていたんですか?」
「今までは男の使用人にやらせていた」
「では、何故、今回は私に・・・?」
「アンリがいるから必要あるまい?だから、断った」
「そうですか・・・」
今後は体を拭いたり服を着せたりはアンリの担当になるようだ。
マスクウェルがそう望んでいるのだ。
諦めるしかない。
アンリは無言でマスクウェルに服を着せる。
「何だ?嫌なのか?」
「いえ。嫌というわけでは・・・」
アンリはそう言葉を濁す。
精神は男のつもりだが肉体に引っ張られているのか妙に気恥ずかしい。
マスクウェルの体を見ていると変な気持ちになってくるのだ。
アンリは最後に服を整える。
「終わりましたよ」
「親しい者に世話をされるのは気分の良いものだな」
「そうですか・・・」
「そろそろ食事の時間だな。参ろうか」
「参ろうって流石に一緒には食べられませんよ?」
アンリの立場は傍付きだ。
臣下が一緒に食事をするのは難しいだろう。
「何を言っているのだ?もう準備もさせている」
どうやら逃げ道はないらしい。
だが、アンリは抵抗してみる。
「国王陛下とか気分を害しませんか?」
「大丈夫だ。父上の許可もとってある」
「そうですか・・・」
陛下。
何でそこで断ってくれなかったんですか!
と、心の中で突っ込む。
「では、行くぞ」
「はい・・・」
アンリはマスクウェルに連れられ食堂にやってきた。
食堂には他の王族が既に揃っていた。
「マスクウェルよ。その子が新しい傍付きか?」
「はい。父上」
「国王陛下。はじめてお目にかかります。アグニ・フォン・ユーステッドの嫡男。アンリ・ユーステッドと申します」
「うむ。アッカバーン・ド・アドラスだ。今回は無理を聞いてもらって感謝しておる」
アッカバーンはアンリが女であることを知っているはずだ。
だが、無難に言葉を返してくる。
「さぁ。隣に」
マスクウェルがそう言ってくる。
末席ではなくマスクウェルの隣とはアンリの待遇はかなり良いようだ。
「では、失礼して」
アンリは断れるわけもなくマスクウェルの隣に着席する。
次々に料理が運ばれてきて食べていくが緊張して料理の味はわからなかった。
食事も終わり、食後のお茶を飲んでいるとアッカバーンから声がかかる。
「アンリ殿。すまないがこの後、時間を貰えるかな?」
「わかりました」
どうやらアッカバーンから話があるようだ。
何を言われるかわからないが1国の王から呼び出されて断るという選択肢はなかった。




