第六話
「私はマスクウェル・ド・アドラスだ」
「王太子殿下。これからお傍に付くことをお許しいただけますか?」
「ふむ。それを判断するのに手を見せてくれ」
「手をですか?」
「あぁ。それを見て判断する」
アンリはマスクウェルに手を見せる。
「ふむ。良い手をしているな」
アンリは華奢な手をしている。
女性なのだから当たり前なのだが。
だが、それだけでなく剣ダコが出来ていた。
「王太子殿下。失礼ですが良い手ではないと思うんですが・・・」
「そうか?華奢な体をしているのに良く訓練しているそんな手だ」
「ありがとうございます」
マスクウェルにそう褒められると嬉しくなる。
「傍に仕えることを許そう」
「はい。これからよろしくお願いします」
「では、早速だが訓練場に行くとするか」
「訓練場ですか?」
「アンリがどれぐらいの腕前なのか確かめたい」
「そういうことでしたら・・・」
アンリはマスクウェルに連れられて訓練場に移動する。
相手をするのはなんとマスクウェルだった。
「どこからでも打ってこい」
「では・・・」
アンリは剣を正眼に構えマスクウェルの隙を伺う。
だが、マスクウェルに隙は存在していなかった。
仕方ないので正面から打ち込み様子をうかがうことにする。
マスクウェルは的確に動き完璧に防御してみせる。
「アンリの攻撃は軽いな。それで終わりか?」
「まだまだ・・・」
アンリは力で攻めるのではなく手数で勝負する。
だが、その全てをマスクウェルは軽々と防いでみせた。
「はぁはぁ・・・。王太子殿下。強すぎません?」
「自分の身を守れるぐらいには強いつもりだ」
アンリは自分が強いつもりはないがそれでも日々、訓練してきたのだ。
ここまで自分の手が通用しないと自信がなくなってくる。
「アンリの強さは大体わかった。次はこちらからいくぞ?」
マスクウェルはそう言って構えを変える。
次の瞬間にはマスクウェルの剣が上段から迫っていた。
アンリは何とか防御するがその一撃だけで腕がしびれる。
それだけでその一撃にどれだけの力が込められていたのがわかろうというものだ。
アンリはしびれた腕を回復させるために後ろに後退する。
だが、マスクウェルはぴったしとついてくる。
どうやら腕を回復させるのは諦めるしかないようだ。
アンリは回避したり防御したりしてマスクウェルの攻撃を何とかしのぐ。
だが、最終的には剣を弾き飛ばされ両手を上げて降参するしかなかった。
「王太子殿下。参りました」
「最後まで諦めないその精神は気にいった」
そう言ってマスクウェルは笑顔を見せるのだった。




