第三話
アンリは人生初の馬車にテンションが上がっていた。
「馬車に乗れる日が来るなんて・・・」
「そこまで喜ばれるとは思いませんでした。殿下と過ごせばこういう機会も増えますよ」」
セイルはそう言って微笑ましいものを見るように笑っていた。
「そうなんですか?」
「はい。殿下は基本的に外出の時は馬車を使いますから」
馬車は街の中を進みアンリは窓から街を風景を興味深そうに眺める。
家があったのは王都の外れの為、街に出ることはほとんどなかったのだ。
「そんなに珍しいですか?」
「街にはほとんど来たことがないので・・・」
「では、よく見ておいてください。今後、街に出る機会も増えるでしょう。殿下は街の散策が趣味ですから」
「そうなんですね」
アンリは活気のある街を見ながらこれからお仕えする王太子殿下はどういう人なのかを考える。
女嫌いとのことだが、それ以外の情報はない。
「王太子殿下は女嫌いとのことですが理由はあるんでしょうか?」
「理由はちゃんとありますよ。すぐにわかることなのでお教えしましょう」
「はい」
「殿下が女嫌いの理由はお披露目のパーティーでのことです」
「お披露目のパーティーですか?」
「はい。そこで殿下は狙うご令嬢がやらかしまして・・・」
「やらかすって何を・・・?」
「しつこく迫り大変困っておりました。それだけでなく、そのご令嬢のつけていた香水も嫌だったようです」
なるほど。
確かにしつこく迫られれば困惑するだろう。
香水だって嫌いな匂いがあるはずだ。
「それだけでなく、ご令嬢達の争いも目にしたようでして・・・」
「争いを皇太子殿下が目にされたのですか?」
普通はご令嬢達もそんな姿は見せないはずだ。
「目にしたのはたまたまです。ですが、そんなご令嬢達の姿を見て殿下は女性嫌いを発症しました」
「わからなくもないですけど・・・。そんな王太子殿下に私が仕えても問題ないんですか?」
「ですから男装していただくのですよ」
そうだった。
男装するのだった。
すっかりそのことを忘れていた。
改めて自分の体を見てみる。
体格は男性と比べれば華奢だが男性でもそういう人がいないわけではない。
何とかなるだろう。
胸は多少のふくらみがあるがほとんど平坦だ。
さらしでも巻けば気付かれないだろう。
王命とはいえ男装して仕えることに不安がないわけではない。
だが、自分がポカをして裸体を晒すとかでもしない限り大丈夫なはずだ。
男として過ごした前世の知識をフル活用すれば何とかなるはずだ。




