第二十九話
休憩も終わりアンリは使い終わった茶器を片付ける。
片付けるといっても所定の場所に戻すだけだが・・・。
洗うのは置いておけば他の使用人がやってくれるのだ。
「アンリ。すまないが仕事を頼めるか?」
「もちろんです。何をしたらいいですか?」
「決裁した書類を各部署に運んでほしい」
「かしこまりました」
「一応、地図も用意したが場所がわからなければ適当に人を捕まえるんだぞ」
「はい」
アンリは書類を受け取りマスクウェルの部屋を出る。
まずは農務を取りまとめる部署に向かう。
「失礼します。王太子殿下からの書類をお届けにまいりました」
「王太子殿下の?見ない顔だが・・・」
「新しく傍付きになったアンリと申します」
「そうか。書類はそこに置いておいてくれ」
アンリは言われた場所に書類を置く。
「それでは私は失礼します」
「ご苦労だった」
アンリは部屋を出ると次の書類を確認する。
次は税務を担当する部署だった。
地図を確認し税務を担当する部署に向かう。
少し距離があったが騎士になる為に体を鍛えていたのでこれぐらいなら疲労を覚えることもない。
「失礼いたします。王太子殿下からの書類をお届けにまいりました」
「おぉ。待っていたぞ」
そう言って一番奥の席に座っていた男性が受け取りにやってくる。
「こちらになります」
「これがないと仕事にならなくてな。助かった」
「それでは失礼いたします」
アンリは他の部署にも順調に書類を届けていった。
「ふぅ。全て届け終わったし戻ろうかな」
アンリが窓から外を確認すると日が傾きはじめていた。
アンリは地図を頼りに今いる場所を確認しマスクウェルの部屋に向かう。
マスクウェルの部屋に到着すると丁度、文官が退室するところだった。
「アンリ殿。書類は無事に渡せましたか?」
「はい。全て届けました」
「助かりました。それにしてもアンリ殿がいなくなってからの王太子殿下はわかりやすかったですね」
「何かあったのですか?」
「ずっとそわそわしておられました。送りだしたのはいいものの心配で仕方なかったのでしょう」
「そうだったんですね・・・」
確かに心配でそわそわしているマスクウェルの姿を思い浮かべれば可愛いかもしれない。
「それでは私は失礼します」
文官はそう言って行ってしまった。
アンリはマスクウェルの部屋の扉を開き中に入る。
「マスクウェル殿下。ただいま戻りました」
「仕事は無事に終わったか?」
「はい。地図を渡してくださったおかげで迷子になることもありませんでした」
「そうか。ならいい」
アンリはマスクウェルの顔をじろじろ見る。
だが、いつも通りのマスクウェルに見える。
「何か私の顔についているか?」
「いえ。何も」
「おかしな奴だな」
文官が言っていたような素振りは見えないがそれを顔に出さないようにしてると考えればそこがまた可愛いと思ってしまった。




