第二十五話
朝食も食べ終わりマスクウェルの部屋に戻ってきた。
「マスクウェル殿下。今日はどうしますか?」
「そうだな・・・。アンリは馬に乗ったことはあるか?」
「いえ。ないですけど・・・」
「そうか。なら今日は馬に乗る練習でもするか」
乗馬は憧れるがちゃんと乗れるか不安になる。
「私に乗れますかね?」
「今から不安か?丁寧に教えるから安心してくれ」
「はい・・・」
アンリはマスクウェルに連れられて厩舎に移動する。
マスクウェルは1頭の馬に近づくと頭を優しく撫でる。
「この子が私の愛馬だ」
どこか気高さのようなものを感じる。
「アンリも撫でてあげるといい」
アンリは馬に近づき同じように慣れてみる。
すると馬は嬉しそうに鼻をすりすりしてくる。
こうして接してみると可愛く見えてくるから不思議だ。
「どうやらアンリのことを気にいったようだな。この様子なら大丈夫だろう」
そう言ってマスクウェルは鞍を取り出し馬に装着していく。
準備はあっという間に完了した。
「さて。行くか」
そう言ってマスクウェルは手綱を手に馬を厩舎から連れ出す。
「あの・・・。私の馬は?」
「最初は相乗りにしよう。まずは馬に慣れてからだな」
「わかりました」
マスクウェルは慣れた様子で愛馬にまたがり手を差し出してくる。
アンリはその手を取って馬の上に乗る。
だが、その位置が問題だった。
てっきり後ろに乗せてくれると思っていたのだがマスクウェルの前に乗せられる。
そして、しっかりと抱きしめられた。
「あの・・・。マスクウェル殿下・・・」
「何だ?」
「少し恥ずかしいのですが・・・」
「そうか?私は気にしないが」
これではまるで女性のような扱いだ。
同性同士ですることではない。
マスクウェルの顔を見れば「にやにや」していた。
間違いなくこの状況を楽しんでいる顔だ。
「そろそろ動くぞ」
マスクウェルはそう言って馬をゆっくりと歩かせはじめた。
抗議しても無駄だと悟り前を見る。
馬の上から見る景色はまるで違っていた。
まず目線の高さが全然違う。
「どうだ?馬の上から見る景色もいいものだろう?」
「そうですね。まるで別世界です」
アンリは抱きしめられているのも忘れてその景色に夢中になる。
マスクウェルはそれがわかっているのかゆっくりと馬を歩かせ続けた。
「満足したか?」
「はい」
「では、少しペースを上げるぞ」
マスクウェルはそう言うと馬の動きが少しだけ速くなる。
アンリは少しだけ恐怖を感じマスクウェルの服をしっかりとつかむ。
マスクウェルはそれに気がついているはずだが何も言わなかった。




