第二十三話
夕食も終えお風呂に入ってからアンリは自分の部屋に戻ってきた。
「ふぅ~。疲れたなぁ。でも、マスクウェル殿下の役に立つためにも頑張らないと」
アンリは気合を入れなおしてメイドさんの到着を待つ。
扉がノックされメイドさんが姿を現した。
「お待たせしてすみません」
「いえ。他にもお仕事があるのにすみません」
「お気になさらずに。では、今日も勉強を頑張りましょうか」
「はい!」
アンリはメイドさんの指導の元、文字を書く練習をする。
最初は失敗したが数をこなすうちに初歩的な文字だけだが書けるようになっていた。
「アンリ様はやはり習得が早いですね」
「でも、まだ覚えないといけないことが多いですよね?」
「確かに組み合わせを覚えたり特殊な文字はありますけどこれだけ出来れば基本的なやりとりは出来ると思いますよ」
「政務で困らないぐらいになりたいんです」
「なるほど・・・。確かに政務をこなすには難しいかもしれませんね」
「そうですよね・・・」
「アンリ様が政務を行いたいのは王太子殿下の為ですか?」
「そうですね・・・。王太子殿下は優しくしてくださいますし、少しでも恩返しをしたいんです」
「そこまでおっしゃられるなら人肌脱ぎましょう」
「どうするんですか?」
「最新の政務の記録は無理ですが過去の政務なら持ち出せるはずです。実際にそれを用いて勉強しましょう」
「そんなことが・・・。無理していないですか?」
「無理なんてしてませんよ。王太子殿下の負担が少しでも軽くなるなら国益になりますから」
マスクウェルは女性嫌いだがメイドさんはマスクウェルのことが好きなのだろう。
近寄らせてももらえないはずだがそれでも仕え続けるその忠誠心には心から称賛を送りたい。
「お辛くはないんですか?」
「辛いですか・・・?」
「王太子殿下は女性嫌いで近寄らせてももらえないですよね?」
「そうですね・・・。お近くで仕えることは許してもらえませんがそれでもそれは私達の為でもあります」
「どういうことですか?」
「ご令嬢達を遠ざけているのに私達が傍にいればご令嬢達の悪意は私達に向くでしょう」
「そんなにご令嬢の悪意というのは恐ろしいものなのですか?」
アンリにはよくわからなかった。
「女性の悪意というのは恐ろしいですよ。ましてや権力が絡めば何でもしてきます」
「何でもですか?」
「はい。ですから、アンリ様も絶対に女性だとばれないようにしてくださいね」
本気でそう言っているのがわかってアンリは今更ながらに恐怖を覚える。
絶対にご令嬢達にはばれないようにしなければ・・・。




