第二十二話
「バルトニア。お前は相変わらずのようだな」
「王太子殿下・・・。これは違うのです」
「何が違うというのだ?自分の気に入らない者を平気で傷つける。そんな者を私が傍に置くはずもないだろう」
「王太子殿下。お言葉ですが我がエルロンド家はこの国に貢献してきました。治世を安定させるためには私が必要なはずです」
「確かにお主の父の働きは認めよう。だが、お前には期待していない。そもそも誰の許可を得て、この区画に立ち入った?」
「それは・・・」
バルトニアがそう言って口を塞ぐ。
そこに慌てたように「カツカツ」と靴音が響く。
「王太子殿下。何かありましたか?」
そう言って現れたのは立派な髭を生やした男性だった。
「サルドニアか。久しいな」
「ご機嫌はいかがでしょうか?」
「ふむ。お主の倅のせいで気分は最悪だな」
「それは申し訳ありません。王太子殿下と過ごした場所をもう一度見たいなどと言うので連れてきましたが・・・。バルトニア。お前には失望したぞ」
そう言ってサルドニアは実の息子を叱りつける。
「サルドニア。お前の功績は認めているが次はないぞ?」
「はっ。王太子殿下の目に二度と触れないようにしますのでお許しください」
「アンリ。行くぞ」
「はい・・・」
アンリは速足で歩くマスクウェルを追いかける。
アンリは誰もいないのを確認してマスクウェルに話しかける。
「マスクウェル殿下。本当によろしかったのですか?」
「あれでよかったんだ。あいつのしたことを考えればこれでも手ぬるいぐらいだ」
「マスクウェル殿下をそんなに怒らせるなんて何をしたんですか?」
「私にはかつて複数の派閥から選ばれた傍付きが何人かいた・・・。あいつは敵対派閥の者を家の権威をかざして徹底的に迫害したんだ。中には心に傷を負い、今も苦しんでいる者がいる。その原因を作ったあいつを許すわけにはいかないんだ」
「そんなことが・・・」
「アンリにも嫌な思いをさせたな」
「マスクウェル殿下が謝ることでは・・・。それにしても、マスクウェル殿下は何でここに・・・?」
本当なら部屋で待っているはずだ。
「嫌な予感がしてな。来て正解だっただろ?」
そう言ってマスクウェルは誤魔化す。
過保護にされているようで気恥ずかしいが今回は確かに助かったので強くも言えない。
「マスクウェル殿下は仕方のない方ですね・・・。でも、ありがとうございます」
アンリはそう言って微笑かける。
「アンリのその顔が見れただけでも来てよかった」
マスクウェルはそう言って笑ってみせる。
先程の怒りはどこかにいったようだ。
アンリはそれを確認して安心した。




