第二十一話
「アンリ殿。重い物を持たせてしまいすみませんでした。女性の細腕では大変だったでしょう?」
「いえ。私が女性だと知っていたのですね」
「はい。私も選定には関わりましたので」
「そうだったんですね・・・」
「王太子殿下の貴方への執着を見て確信しました。貴方を選んで正解でした」
「そうですか?大切にされてるのはわかりますが・・・」
「アンリ殿。下級貴族出身のことを引け目に感じてはいませんか?」
「そうですね・・・。私より適任の方がいらっしゃると思います」
アッカバーンからは奥方候補だと言われたがマスクウェルの立場を考えれば上級貴族のご令嬢達の方が相応しいはずだ。
「私から言えることは引け目に感じる必要はないということです」
「どういうことでしょうか?」
「私も下級貴族の出身です。ですが、国王陛下も王太子殿下もそのことは気にされておりません。能力や人柄をしっかり見て評価してくださる方々ですから」
そう言って文官は微笑む。
「貴方に求められているのは王太子殿下を裏切らない。それだけです」
「王太子殿下を裏切らない・・・」
マスクウェルは良い人だとは思う。
だが、アンリはマスクウェルのことをまだよくわからなかった。
「数日で人を見極めるのは難しいことです。共に過ごし王太子殿下のことを少しずつ知ればいいのです」
「はい。ご助言いただきありがとうございます」
「あまり、遅くなると王太子殿下に叱られてしまいますね」
「そうですね。それでは、失礼いたします」
アンリはそう言って文官の執務室を出た。
だが、帰り道で困った事態に遭遇した。
「お前。見かけない顔だな?どこの家の者だ?」
「ユーステッド騎士爵家の者です」
「ユーステッド騎士爵家?聞かない家名だな。そんな者がどうしてこのような場所をうろちょろしている?」
「王太子殿下の傍付きですので・・・」
「何?お前が新しい傍付き?いるだけで王城の品位を下げるというのに傍付きだと?」
「何かまずかったでしょうか?」
「当たり前だ。王太子殿下はこの国を担うお方!下級貴族の傍付きなど足を引っ張るだけだ」
アンリはその言葉に反論できずにいた。
「今すぐ辞退し家に帰るがいい!」
そう言って怒鳴ってくる。
「誰がどこに帰ればいいだと?」
そう言って顔を出したのはマスクウェルだった。
「王太子殿下・・・?」
マスクウェルの顔を見れば今まで見たことのない憤怒の顔をしていた。
アンリはその顔を見て背筋の凍るような畏怖を感じていた。




