第二十話
「休憩は終わりだ。残りの仕事を片付けよう」
アンリは使った茶器を片付けつつマスクウェルに聞く。
「私はここにいても良いのでしょうか?」
「何故、そのようなことを?」
「政治の話を聞く資格がないような気がして・・・」
「アンリ殿。傍付きになった時点でその資格は十分あります。この部屋に入ることを許可された時点でアンリ殿の立場は確定したのですよ」
「聞かれたくない話なら外させる。だが、基本的にアンリに聞かれて困るような話はないな」
「そうですか・・・。では、近くで控えさせていただきます」
アンリはそう言って茶器を片付け終わった後、マスクウェルの背後に控えた。
マスクウェルと文官は難しい話をしているがアンリはその話に耳を傾ける。
時折、マスクウェルはアンリにも質問を向けてきてそれを答えるということが続いた。
日が傾いた頃、全ての仕事が終わり文官が帰り支度をはじめる。
アンリもそれを手伝う。
「やはり、アンリ殿をただの傍付きにしておくのはもったいないですね」
文官はそう呟いた。
「お前もしつこい奴だな」
「本気でそう思っていますので」
「文官にするには大きな課題もあるしな」
「それは何ですか?」
「アンリは読み書きがまだできない。それでは、文官として働けないだろう?」
「それは確かに・・・。アンリ殿は騎士爵家の出身でしたね。下級貴族で読み書きのできない者は多いですから・・・」
文官はそれだけで納得したようだ。
「でも、それを把握しているということは読み書きの勉強はされているのですよね?」
「昨日からな。呑み込みは早いがまだ習得するのに時間はかかるだろう」
「そうですか・・・。ですが、習得したら何かお仕事を任されてはどうですか?」
「仕事をか?」
「はい。ただの傍付きよりはアンリ殿の身を守ることに繋がるでしょう」
「確かにな。知識の方は十分だし何か考えておこう」
「では、私はそろそろ失礼します」
「あっ。お荷物をお持ちします」
アンリはそう言って言葉をかける。
「おや。アンリ殿。悪いですね。では、こちらの書類をお願いします」
そう言って渡された書類はかなりの重さがあった。
「アンリ。早く戻ってくこい。もうじき、夕飯の時間だからな」
「はい。それでは行ってきます」
アンリはマスクウェルにそう返事をしてから文官に続き部屋を出た。
かなりの距離を歩き文官は足を止める。
「ここが私の執務室です。中にどうぞ」
「失礼します」
アンリはそう言って文官の執務室の中に入室した。




