第二話
「カニス。アンリ。こちらは王城よりやってきたセイル殿だ」
家に戻ってきたアグニは2人に客人を紹介する。
「アグニの妻のカニスと申します」
そう言ってカニスがカテシーをする。
アンリも慌ててカテシーをしつつ挨拶する。
「アンリと申します」
「これはご丁寧に。セイル・フォン・タールラントと申します」
「セイル卿。立ち話も何ですからこちらに」
そう言ってアグニは食卓にセイルを案内する。
応接室といった物は存在しない。
ユーステッド家は悲しいかなかなり貧乏だった。
「今、お茶を淹れますので」
そう言ってカニスはお茶の準備をする。
「気を使わせてしまって申し訳ない」
カニスがお茶を差し出すとセイルは優雅な所作で香りを楽しみお茶に口をつける。
「それでセイル卿。わざわざ我が家にきた理由は・・・?」
「私は王命でやってきました」
セイルがそう言うと両親が緊張しているのがわかる。
「王命ですか?」
「お宅の娘であるアンリ嬢を王太子殿下の傍付きにと」
「我が娘を傍付きに?」
「はい。悪い話ではないと思いますが?」
「そのような大切な役目を我が娘に?」
「はい。アグニ卿。貴方の娘にです」
「ですが・・・。普通は同じぐらいの男児が任命されるものでは?」
「それはそうなのですが・・・」
そこでアンリは口を挟む。
「お父様。これはチャンスです」
「確かにチャンスではあるのだろう。だが、私は反対だ」
「何故です?」
「王太子殿下は女嫌いで有名だ。受け入れてくださるとは思えない」
「はい。確かに王太子殿下は女嫌いです。ですので、アンリ嬢には男装していただきます」
「男装・・・?男のふりをすればいいのですね?」
アンリには勝算があった。
前世は男だったのだ。
男のふりをするぐらい簡単だ。
「アンリ・・・。それでも私は反対だ」
「お父様。私やってみたいです」
アンリはそう言ってアグニに真っ直ぐな目線を向ける。
「うっ・・・。その目は何を言っても無駄な時の目だな」
カニスは何も口を挟まない。
爵位を持った貴族同士の会話に口を挟むのはマナー違反だからだ。
「アグニ卿。アンリ嬢はこういっているし受け入れてはもらえまいか?」
セイルはそう言ってアグニを説得する。
「わかりました・・・。娘が不幸にならないと約束してくださるなら・・・」
「そうか。そう言ってくれるか。私も強権を発動しなくてほっとしましたよ」
そもそもセイルは王命でやってきているのだ。
この話は最初から断ることなど不可能だったのだ。
「では、アンリ嬢。身支度を」
「はい!それでは一度失礼します」
アンリはそう言って部屋に戻り急いで支度をすませた。




