第十九話
「王太子殿下。喉などは渇いていませんか?」
「ふむ・・・。そうだな。休憩するにもいい時間か」
「では、紅茶をお淹れしますね」
アンリは備え付けのセットで紅茶を淹れはじめる。
アンリはマスクウェルの分だけでなく文官の分も淹れて給仕する。
「私の分まで。すみません」
「いえ。それがお仕事ですから」
まず、マスクウェルが紅茶に口をつけ文官もそれに続いた。
「ほぅ。これほど美味しい紅茶を飲んだのははじめてかもしれませんね」
「そうだろう。アンリの淹れる紅茶は世界一かもしれない」
マスクウェルはそう言って自慢する。
本当にそう思っていそうな顔にアンリも嬉しくなる。
「アンリ。1つ聞いてもいいか?」
「何でしょうか?」
「お金が余っていたとする。アンリなら何に使う?」
「私ならですか?政治的な答えをお求めですよね?」
「そうだ」
「そうですねぇ。私なら各地に穀物の貯蔵庫を作ります」
「穀物の貯蔵庫?」
「はい。災害や不作に備えての物になります。遠方から運んでいては時間がかかりますし輸送の手間や料金もかかりますから」
「なるほどな。だが、使わなかった穀物はどうする?」
「定期的に入れ替えを行い古くなった穀物は一般に安く流通させます」
「悪くない案ではあるが今すぐには難しいな」
「何故ですか?」
「そもそも備蓄できるほどの穀物の確保が難しい」
「そうなのですね。では、未開発の地の開発に援助や土地の所有を認めてはどうでしょうか?」
「狙いはわかるが・・・」
そう言ってマスクウェルは難しそうな顔をする。
「王太子殿下。私は悪くないかと。課題は色々ありますが検討の価値は十分あります」
そう言って文官が援護してくれる。
「協議を通せるか?」
「それは私の腕の見せ所ですね」
「ならば手配の方は頼む。私の方からも父上に働きかけてみよう」
「アンリ殿。1つ聞いてもよろしいでしょうか?」
「何でしょうか?」
「どこでそのような考えを?」
「いえ。私は政治のことは全く分かりません。ですが、民の為になればと・・・」
本当は前世で実際にあったことを言っただけなので、褒められるのはこそばゆい。
「王太子殿下。アンリ殿を私に貸してはいただけませんか?」
「何故だ?」
「知識がない状態でこの答えなのです。学ばれたら国に大きく貢献できる人材になりませんか?」
「確かに一理ある。だが、駄目だ」
「何故です?」
「アンリは私の傍付きだ。文官にする気はないぞ」
マスクウェルはそう言って文官を睨みつける。
「どうやら本気のようですね。ですが、気が変わりましたらお申し付けください。一流の文官に育てますので」
「気は変わらぬとは思うが心には留めておこう」
そう言ってマスクウェルは文官を睨むのをやめた。




