第十八話
アンリとマスクウェルはマスクウェルの部屋に戻ってきた。
「マスクウェル殿下。本日のご予定は?」
「すまない。今日は政務が入っている」
「そうですか・・・」
政務と聞いてアンリは残念な気持ちになる。
なんだかんだ言って、マスクウェルと過ごす時間は好きなのだ。
「アンリ。今日は人をつけるから城の中を見てまわってくるといい」
「城の中をですか?」
「そうだ。これからこの城で過ごすのだ。不案内では色々困るだろ?」
「確かにその通りですね」
「本当は私が直接案内してやりたいのだが悪いな」
「いえ。マスクウェル殿下のお仕事を邪魔するわけにはいきませんから」
そこにノックの音がする。
マスクウェルが許可を出すと書類を抱えた文官が入室してきた。
「王太子殿下。書類をお持ちしました」
「ご苦労。悪いが人の手配を頼む」
「かしこまりました」
文官はそう言って下がるすぐに男の使用人を連れて戻ってきた。
「王太子殿下。何かありましたか?」
「すまないがアンリに城の中を案内してやってくれ」
「かしこまりました」
「では、王太子殿下。行ってきます」
アンリはマスクウェルに見送られて部屋を後にした。
城の中を移動し設備や政務を行っている各部署を案内してもらう。
王城の中は広大であり油断すれば迷子になってしまいそうだった。
「どうですか?覚えられそうでしょうか?」
「すみません。迷子になりそうです」
「でしょうね。私も最初は迷子になりましたから」
「その時はどうしたんですか?」
「たまたま通りかかった先輩に泣きつきまして・・・。案内してもらいました」
「なるほど・・・」
迷子になっているのに歩き回っては余計に迷子になるだけだ。
もし、迷子になったら通りかかった人に助けを求めようと決めた。
「どこかまわってみたい場所はありますか?」
「いえ。今日はありがとうございました」
「いえいえ。お役にたててよかったです」
アンリは教えてもらったばかりの道を思いだしマスクウェル部屋へと向かった。
複雑な構造をしているが何とか迷わずマスクウェルの部屋に戻ってくることができた。
アンリはノックしてからマスクウェルの部屋に入る。
部屋の中ではマスクウェルが文官と話をしながら政務に取り組んでいるところだった。
「お邪魔でしたか?」
「いや。いい。城の中はどうだった?」
「広いですし構造が複雑で迷子になりそうです」
「そうか。確かに少し複雑な形をしているからな」
「複雑な形をしているのは何か意味があるのでしょうか?」
「意味ならあるぞ」
どうやらちゃんと意味があるらしい。
「戦争になった際、王城は最後の砦だ。単純な構造では時間稼ぎにならないからな」
「そういった意味が・・・?あの・・・。私が知ってしまってよかったのですか?」
「アンリなら問題ない。私を裏切るようなことはしないだろ?」
「そうですけど・・・」
マスクウェルは自分のことを信頼しすぎではないだろうか?
嬉しい気持ちもあるがその想いに重さも感じていた。




