第十七話
「アンリ。すまないが、着替えるのを手伝ってくれ」
「はい。では服を取ってきますね」
「あぁ。そこのクローゼットに入っている」
アンリは言われた通りクローゼットを開けると大量の服がしまわれていた。
どれがマスクウェルに似合うか考えながら服を選ぶ。
アンリは蒼系統の色で統一した服を選びマスクウェルの元に戻る。
マスクウェルの一部が自己主張をしていた。
アンリは前世でそれが朝の生理現象だと知っていたので触れずにマスクウェルを着替えさせた。
寝室を出るとマスクウェルはソファーに座り本を読みはじめる。
どうやら読書が毎日のルーティンのようだ。
「マスクウェル殿下。紅茶をお飲みになりますか?」
「もらおう」
アンリは備え付けのセットを取り出して紅茶の準備をはじめた。
今世では紅茶など淹れたことはないが前世の記憶を便りに紅茶を淹れる。
「マスクウェル殿下。失礼します」
「ありがとう」
マスクウェルはそう言うと紅茶に口をつける。
「ふむ。アンリは紅茶を淹れるのが上手いな」
「そうですか?」
「あぁ。普段飲んでいるものよりも私好みだ」
「ありがとうございます」
アンリはそう言ってマスクウェルの後ろに控える。
「アンリ。立っているだけでは暇ではないか?」
「いえ。マスクウェル殿下を見ているだけでも私は楽しいですよ?」
「そうか?」
「はい」
マスクウェルは顔をぺたぺたと触り不思議そうな顔をしていた。
「ふむ。どこが面白いのかまったくわからない」
アンリは心の中で「そういうところですよ」と思ったが口には出さなかった。
マスクウェルは考えるのを諦めたようで視線を本に戻す。
その姿はやはり絵画のようでいくらでも見ていられた。
「よし。そろそろ朝食の時間だな」
マスクウェルは読書を切り上げ立ち上がる。
アンリは少し残念な気持ちになりつつ毎日見られるのだからいいかと考え直す。
「では、ご一緒します」
アンリはマスクウェルに続き部屋を出る。
食堂に到着すると他の王族の方々はもう席に座っていた。
マスクウェルとアンリが席に座るとそれが合図だったようで朝食が運ばれてくる。
王族が食べるだけありどの料理も美味しかった。
そこで、ふとアンリは考える。
両親はちゃんと食事をしているだろうか。
母のカニスが色々工夫してくれていたがそれでもユーステッド家の食事事情はあまりよくなかった。
自分だけ毎日しっかりと食事を食べていることに罪悪感を感じていた。
「どうした?アンリ?」
マスクウェルはアンリの食事の手が止まっていることに気がついた。
「いえ。私だけちゃんとした食事を食べていて両親はどうしているのかと思いまして」
「なるほど・・・。だが、心配するな」
マスクウェルはそう言ってアンリを安心させるように微笑む。
そこにアッカバーンが声をかけてくる。
「アンリ殿がマスクウェルの側付きになったからな。その分の金は渡している。今までよりは生活が楽になっているはずだ」
「そうなんですか?国王陛下。ありがとうございます」
「お礼を言われるようなことではないがその気持ちは受け取っておこう」
アンリは不安が解消されたことで改めて食事を再開した。




