第十四話
王城に戻るアンリには試練が待っていた。
「アンリ。風呂に入るぞ」
「殿下。私は後程、入らせていただきますので・・・」
「昨日は一緒に入ったのに駄目なのか?」
「そうです。駄目です」
「そうか・・・」
マスクウェルは諦めてくれたが寂しそうな顔をしていた。
だが、アンリとしても譲るわけにはいかない。
一緒にお風呂に入ればいつ自分が女だとばれるかわからないからだ。
「私はここで待機してますので何かあればお声かけください」
「わかった」
マスクウェルはそう言って服を脱ぎお風呂に入っていった。
だが、そう時間はかからず声がかかる。
「アンリ。すまないが入ってきてくれ」
「マスクウェル殿下。何かありましたか?」
アンリは服を着たままお風呂に入る。
「すまないが背中を洗ってくれ」
「わかりました」
アンリは服が濡れないようにマスクウェルの背中を洗う。
その背中はガタイがよく自分の体とは全く違っていた。
マスクウェルの背中を見ていると不思議な気持ちになる。
この気持ちは一体何なんだろうか?
深く考えてはいけないような気がして背中を洗うことに集中することで誤魔化した。
「かゆいところはありませんか?」
「あぁ・・・。気持ちいい」
「そうですか」
アンリが背中を洗い終わるとマスクウェルがお礼を言ってくる。
「アンリ。ありがとう」
「いえ。流石に前は自分で洗ってくださいね」
アンリはそう言って風呂場を出る。
30分ほど経ってマスクウェルが風呂場から出てくる。
「お湯加減はどうでしたか?」
「あぁ。丁度良かった」
「それはよかったです。体を拭きますね」
アンリはマスクウェルの体を丁寧に拭いていく。
心臓の鼓動が早くなった気がする。
まるで恋する乙女のようだ。
アンリはマスクウェルに聞こえてしまうのではないかと心配したがマスクウェルが気がついた様子はない。
「マスクウェル殿下。拭き終わりましたよ」
「あぁ。服を着せてくれ」
アンリはマスクウェルに服を着せる。
「どうだ?おかしなところはないか?」
マスクウェルはそう聞いてくる。
「完璧です」
「そうか・・・。私は先に戻るがゆっくり入るといい」
そう言ってマスクウェルは自分の部屋に戻っていった。
アンリはマスクウェルが戻ってこないか確認してから服を脱ぎお風呂場に入った。
「ふぅ・・・。気持ちは嬉しいけどばれないかひやひやするな」
アンリは自分の体を洗いながらそう言う。
改めて自分の体を見てみる。
男とはまるで違う。
前世では男らしい体つきとは程遠い体形をしていたがここまで頼りなくはなかった。
改めて自分が女になったのだと突き付けられたような気持になった。




