第十三話
アンリはその後もマスクウェルと共に街を巡った。
大道芸を見たり楽器の生演奏を聞いたり。
「街とはこんなにも楽しい場所だったのですね」
「そうだな。私もこの街が大好きだ」
マスクウェルは本当にこの街が大好きなのだろう。
アンリにはマスクウェルの笑顔が眩く映った。
自分もこんな顔をしているのだろうか?
「む。見かけない顔だな?」
マスクウェルはそう言って出店の前で止まる。
「はい。隣国から出稼ぎにきております」
「そうか。それは大変だな。商品を見せてもらっても?」
「はい。お好きなだけご覧ください」
アンリも出店の商品を見てみる。
どうやら装飾品を扱っているようだ。
どの品も丁寧に仕上げられとても綺麗だった。
その中でも花をモチーフにしたペンダントが目を引く。
「アンリ。これが気になるのか?」
マスクウェルはそう言ってペンダントを手に取る。
「そちらの商品にお目をつけるとはお目が高い」
「本当に見事な装飾だな。これはいくらだ?」
「買っていただけるのでしたらおまけしますが・・・」
「いや。正規の値段で買わせてもらおう」
「本当ですか?」
「あぁ。構わない」
マスクウェルはそう言ってお金を払う。
「ありがとうございます。これで国元で待つ家族に安心して会えます」
「色々大変だと思うが頑張ってくれ」
「はい。はい」
「アンリ。ちょっとかかんでくれ」
「こうですか・・・?」
アンリがかがむとマスクウェルはペンダントをつけてくれる。
「よく似合っているぞ」
「ありがとうございます。でも、殿下」
「何だ?」
「そういうのは他のご令嬢にしてください。私は男なんですよ?」
アンリがそう言うとマスクウェルはバツが悪そうな顔をする。
「女は嫌いだ」
ぼそっとそう呟いた。
「はぁ・・・。本当に殿下は女性が嫌いなのですね」
「アンリもあいつらの本性を知ったらわかるさ」
そう言って軽く流された。
「殿下。そろそろ戻る時間ですよね?」
「そうだな。戻るとしよう」
マスクウェルとアンリは王城へ戻るべく道を引き返す。
歩きながらアンリはマスクウェルに疑問に思ったことを聞いてみた。
「先ほどペンダントを安く買えそうだったのになんで正規の値段で買ったんですか?」
「あぁ・・・。単純な理由だ。これだけ素晴らしい製品を作れるのに値切っては職人に失礼だからな」
「失礼ですか?」
「そうだ。お前の作った作品はこれぐらいしか価値がないんだぞ。っというようなものだ」
「なるほど・・・。確かにその通りですね」
言われてみれば納得の理由だった。
職人の懐にお金が入るわけではないがそれでもその思いやりは素晴らしいものだと納得できた。
「それにアンリに渡すのだ。値切ったものなど渡せるか」
そう言ってマスクウェルは笑っていた。
「殿下。ありがとうございます。大切にしますね」
街の人達からはお似合いな2人だとそう思われていた。




