「本当のサンタクロースの話」
本当のサンタクロースの話
ある小さな街に小さな女の子が住んでいました。
女の子には大好きなパパと大好きなママがいました。
ある日のことでした。小さな女の子にママが言いました。「今日はクリスマス・イブだから今夜サンタクロースがやってきて貴方にプレゼントをくれるわ。」
女の子は特別に欲しいものがあるわけではありませんでした。女の子はただ一度でいいから世界中の子供たちプレゼントをくれる優しいサンタクロースのおじいさんに会ってみたいと思っていたのです。
クリスマスの夜、女の子は眠たいのをこらえて、ベットの中で眠らずに、ずっとおきていました。
夜も更けた頃、女の子の部屋のドアのノブが、音もなくスルリと回って、静かにひらきはじめました。
素敵な白いおひげのサンタさんに会えると、女の子がドキドキしながら、起きていることに気づかれないように、うす目を開いて眠ったふりをして待っていると、女の子の部屋へ静かに入って来たのはサンタさんではなく、大好きなパパでした。
パパは首にリボンのかかった可愛いクマのぬいぐるみを持っていました。パパはそれを女の子の枕もとにそっと置くと、また静かに女の子の部屋から出てゆきました。
女の子は何だか悲しくなりました。クリスマス・プレゼントのぬいぐるみが気に入らない訳ではありませんでしたが、初めて逢えると思っていたサンタさんに逢えなかったから、そのことに女の子は、酷くがっかりしてしまったのでした。
次の日、女の子は「サンタクロースなんていないのに、ママが嘘をついた。サンタさんはパパなのにママが嘘をついた。」そう言って、朝からぐずってママを困らせました。
いつもはとても優しい子なのに珍しく、いつまでたってもぐずるので、ママはすっかり困り果ててしまいました。お昼になっても、夕方になっても女の子の機嫌はなおらず、とうとうパパが帰ってくる時間を迎えてしまいました。
パパが帰ってくると女の子の機嫌が直らないことに困り果てていたママは早速、パパに相談しました。
ママから女の子のことを聞いた後で、パパはしばらくの間、真剣な顔をして腕組みをして考え込んでいましたが、静かに微笑んで立ち上がりました。そして困り顔のママにむかって「僕に任せてくれないか。」そう言うと女の子の部屋に向かったのでした。
パパが女の子の部屋に着いた時、女の子はパパに背中をむけて膝を抱え込んだままでした。
「君はサンタクロースは来ないからママが嘘をついたと思っているんだね。」パパがそう言うと背中を向いたままで、女の子は答えました。
「だってサンタさんは来なかったじゃない。本当はサンタクロースなんていないんでしょ。プレゼントを買ったのだってパパとママでしょう。」
「確かにプレゼントをかったのはパパとママだ。それは間違いじゃない。でもだからサンタクロースがいないと思うのは君の勘違いだよ。」パパは話を続けました。
「いいかい。良く聞きなさい。本当のサンタクロースは目には見えないんだよ。」女の子は思わすパパの方を向いて「えーっ」と声をあげてしまいました。
パパは女の子の瞳を覗き込むようにして話をつづけました。
「本当のサンタクロースの身体は透明でとても小さいから、目には見えないんだ。」パパは不思議そうな顔をした女の子の目を見ながら話を続けました。
「本当のサンタクロースは北の国、ラップ・ランドから北風に乗ってやってきて、クリスマスにプレゼントをもらった子の心にそっと住み着くんだよ。」
「パパもママも君と同じ年の頃に白いおひげを生やして赤い服をきたサンタクロースは本当はいないということを知った。でもパパもママも本当のサンタクロースがいることは知っている。」
機嫌が悪かったことなど忘れて女の子はパパの話に夢中でした。
「よく考えてごらん、何故、パパとママがプレゼントを買って用意していたか?」パパは話を続けました「それはね、パパのパパもママのママも、パパやママたちが子供の頃にクリスマスにプレゼントを買ってくれたから、パパの心にも、ママの心にも透明で小さいけど本当のサンタクロースが住みついているからさ。」パパは女の子に諭すように話し続けました。
「君が大人になって、誰か好きな人が出来て、結婚して君みたいな子供が出来た時、サンタクロースなんていないんだからと言ってプレゼントなんか買ってあげないかい?」
パパがそう聞くと女の子は満面の笑みを浮かべながら答えました。
「ううん。必ずプレゼントを用意してクリスマスにおくってあげるの。だって私の心にだって小さくて透明で目に見えないけど、本当のサンタクロースが住んでるんですもの。」
パパは女の子の言葉に笑顔で答えました「ああ、そうだね。」
おしまい、おしまい。