表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

最後の波を視た女

最後に波を視た女

作者: Yuribo

はじめまして。初心者で初めて小説を書いてます。この物語はAIと共同執筆しています。ご了承ください。

プロローグ

1. 準備


風が強かった。


ビルの屋上から見下ろすと、都市の光が波打っていた。

玲奈は無意識に眉を寄せる。


(……こんなに高かったっけ?)


彼女は足元に視線を落とす。

そこには、小型の救命ボートが二隻並んでいた。

屋上の端に固定されたロープを確認しながら、備蓄品をボートに積み込んでいく。

防水シートに包まれた非常食、飲料水、簡易医療キット。


『玲奈、そっちの固定、大丈夫か?』


声をかけられ、顔を上げた。

隣には男がいた。ヘッドライトをつけ、慎重にロープを締め直している。


「大丈夫。これなら流されないはず。」


玲奈もロープをもう一度確認した。

風が唸る。雲が流れる。


屋上の向こうに広がる都市は、まだ何事もないかのように煌めいていた。

だが、玲奈は知っている。


「あと、数時間……」


『……玲奈?』


男が顔を上げた。


玲奈は遠くを見つめていた。

どこかで警報が鳴る音が聞こえた気がした。


(この準備で、本当に足りるの?)


胸の奥に、得体の知れない焦燥感がこみ上げる。

彼女はビルの屋上から、遥か遠くの水平線を見つめた。


——そこで、見た。


黒い影。


——違う。


それは、壁のようにそびえ立つ水の塊だった。


次の瞬間——


玲奈の世界が、白く光った。


2. 目覚めと異変


——玲奈は飛び起きた。


額に汗が滲む。荒い呼吸。

心臓の鼓動がうるさい。


「……夢?」


部屋の中は静かだった。

狭いワンルーム。ベッドの隣に積まれた本とノート。

窓の外はまだ夜明け前で、街の明かりがぼんやりと浮かんでいる。


「……違う。」


玲奈はスマートフォンを手に取る。

これは、ただの夢じゃない。


(あれは——未来。)


不安を振り払うように、彼女は検索を始めた。


「水没 都市」「気候変動」「南極 異変」


何か、根拠がほしかった。


数分後、玲奈の指が止まる。

画面に表示された記事のタイトルが、彼女の脳を揺さぶった。


「南極氷床、想定以上の崩壊——環境調査員が警鐘」


記事の最後には、観測データのグラフと南極の写真が添付されていた。

広がる氷の大地が、巨大な亀裂によって崩れ落ちる瞬間の写真。


玲奈は息を呑んだ。


——この夢と、関係がある?


まさか。偶然かもしれない。

だが、夢の映像が脳裏に焼き付いて離れない。

まるで、何かが自分に警告を送っているような感覚だった。


彼女は記事のURLをコピーし、念のためブックマークに保存した。



3. 南極の現場


南極の空は、灰色に染まっていた。


強烈な風が氷の大地を削り、冷たい空気が肌を刺す。

ジョナサン・クルーズはスノーゴーグル越しに広がる氷床を見つめ、息を呑んだ。


「……クソッ。」


彼の目の前に広がるのは、氷の裂け目だった。


長さ数十キロ、幅は数メートルから十数メートルにも及ぶ亀裂が、まるで地球そのものが悲鳴を上げるように広がっていた。


「想定を……はるかに超えている。」


通信機に声を落とす。


「基地、こちらクルーズ。セクターCの氷床に大規模なクラックを確認。予測よりも早い。」


「どの程度の崩壊が予測される?」


「……数ヶ月以内に、氷床の一部が完全に分離する可能性がある。」


数ヶ月——


本来なら、数百年かけてゆっくりと進行するはずだった南極氷床の溶解が、一気に加速している。


もしこのペースが続けば……


(世界の海流が変わる。)


気候のバランスが崩れ、異常な潮流と津波が発生する。


「これを公表しなければ……」


彼は意を決し、手元のタブレットに報告を打ち込み始めた。


——そして、その報告は玲奈の目に触れることになる。


だが、ジョナサンはまだ知らなかった。

彼が記録したデータが、意図的に抹消される運命にあることを。


4. 秘密会議


「この情報を封鎖しろ。」


暗い会議室。

壁に映し出された南極のデータ解析画面を前に、重い声が響いた。


「既に環境調査員が記事を公開しました。しかし、削除措置は完了しています。」


「問題は、その記事が拡散されているかどうかだ。」


「SNSでは一部で拡散されましたが、大手メディアは一切報じていません。我々がコントロールできる範囲です。」


「今の段階では、国民に知られるべき情報ではない。」


「避難計画は?」


「不要だ。……少なくとも、“公には”。」


沈黙が落ちた。

やがて、静かに会議は閉じられる。


5. 記事が消えた


玲奈は再びスマートフォンを手に取った。

今朝読んだ記事をもう一度確認しようとして——凍りつく。


「404 Not Found」


玲奈の心臓が跳ねた。


ページが、消えている。


(そんなはずない……)


彼女はすぐに検索をかける。

「南極 氷床崩壊」「ジョナサン・クルーズ」「環境異変」——


しかし、どのワードでも、同じ記事は見つからなかった。

いや、ジョナサン・クルーズの名前すら、検索結果にほとんど出てこない。


「……嘘……」


違和感が走った。


彼の報告が、事実だったから消された?

誰かが、意図的に情報を隠した?


——なぜ?


玲奈の中に、じわじわと冷たい不安が広がった。


(これは、夢なんかじゃない——本当に、起こる。)


彼女は深く息を吸い、スマートフォンを握りしめた。

彼女には、やらなければならないことがあった。


(私が動かなきゃ。)


世界が気づく前に——世界が沈む前に。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ