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コロナEX1周年記念SS〜当たりかハズレか、育ってみなければわからない(ルティア視点)〜

 るてぃあのまわりにいる大きい人はみんないそがしい。

 じじょちょうさんも、じじょさんも、ユリアナいがいはみんないそがしいからるてぃあのはなしをきいてくれないの。


「あの、あのね?おみずがほしいの」


 そういってるてぃあがじじょさんのスカートをひっぱったら、どうしてかゆかにころがってしまった。じじょさんはおこってて「スカートひっぱらないで」とるてぃあにいったからごめんなさい。ってあやまって、それからおみずがほしいっておねがいしたんだけど……


「忙しいので無理です。ご自分で井戸で水を汲んでください」


 そうってじじょさんはいどのばしょをおしえてくれた。ありがとうというと、そのじじょさんはなんだかへんなかおをする。

 たちあがって、スカートをなおすとうしろからユリアナの声がきこえた。


「姫様!一体どうしたのです!?」

「ころんじゃったみたいなの」

「転んだって……貴女!姫様が転ばれたのに見ていただけなの!」

「生憎と、私暇じゃないの」

「この宮で姫様以上に大事なことなどないはずよ!!ここは姫様の宮なのですから」

「姫様ねぇ……とんだハズレ姫のお世話を任されちゃったわ」

「なんですって!!」


 ユリアナはぷんぷんにおこっているけど、るてぃあにはどうしておこっているのかわからないの。だからユリアナのエプロンをひっぱってみる。

 ユリアナは大丈夫ですよ。ってわらうけど、なんだかどこかいたそうなわらいかただった。じじょさんはフンッていうとそのままどこかにいっちゃった。


「きっとすごくいそがしいのよ」

「姫様……」

「あのね、わたしのどがかわいたの。でもいそがしいから、いどのばしょおしえてくれたわ」

「井戸から水を汲むのは姫様にはまだ難しいですよ。私がやりますから、何かあったら私に言ってください」

「でもユリアナもいそがしいでしょう?」

「姫様以上に大事なことなどありません」


 そういってユリアナはあたまをなでてくれた。まるでおかあさまみたい。

 でもるてぃあのおかあさまはおほしさまになってしまったから、ちょっとちがうかも?おにいさまともちがう。すこしかんがえたけどわからなくて、でもユリアナのことがだいすきだからきっととくべつな人なんだとおもう。


 ユリアナは手をひいてくれて、いどまでいってちいさないれものからコップをだして、おみずをのませてくれた。のどがからからだったから、いっぱいのんじゃった。

 それからすこしおさんぽしていると、おにわでなにかしてる人がいたの。ユリアナはそのおじいさんにはなしかけて、その人はるてぃあのことをみるとにこってわらってくれた。きっととてもいい人だ。

 だってるてぃあのちかくにいる大きい人はみんなムスッとしてるから。ユリアナはニコニコしているけど、ほかの人はみんなわらわない。


「ーーーー少しの間、姫様をお願いしても良いですか?食事の用意を持ってきますので」

「それは構わんよ。しかし……他の連中は相変わらずかい?」

「全く変わりませんね。本当に腹立たしい……!!」

「ユリアナ、お前さんがカリカリすると姫様にも伝わる」

「わかっています。常に冷静であれ、ですね」


 ユリアナとおじいさんは、るてぃあにはわからないむずかしいおはなしをしている。そしてユリアナがすこしのあいだここにいてください。って……


「……るてぃあがいておしごとのじゃまにならない?」

「大丈夫じゃよ」

「食事の用意を持ってきますので、ここで待っていてくださいね」

「うん」


 ユリアナがもどってくるまで、るてぃあはおじいさんといっしょにいることになった。おじいさんはおにわのおせわをしてるんですって!


「るてぃあのおへやのおはなもおじいさんがそだてたおはな?」

「そうじゃよ。この宮のお花は全部わしらが育てた花だ」

「るてぃあね、おはなすき。とてもいいにおいがするの!」

「花は手をかけてあげるととてもキレイに咲くんじゃよ」

「るてぃあにもできる?」

「そうさの。今から植えられる花を育ててみなさるかい?」

「うん!」


 るてぃあがへんじをしたら、おじいさんははちとタネをよういしてくれた。はちに土をいれて、タネをまいて、おみずをあげるとそだつっておしえてもらったけど……


「おはな、さかないよ?」

「お花が咲くのはもっと何ヶ月も経たないとじゃな」

「なんかげ……?それってあした?」

「明日の明日のさらにずーっと明日じゃな」

「ずーっと?」

「さよう。でもその間に、間引きや剪定も必要となる」

「まびき?せんて?」


 むずかしいことばはわからない。おじいさんはるてぃあにわかるようにおしえてくれたけど、でもやっぱりわからない。ずっとずっと先にならないとおはなはさかないし、そのあいだにやることもたくさんあるみたい。

 でもそのことばのなかに、るてぃあのことをいってたことばがあった。


「あのね、あの……るてぃあもはずれなの。うまくそだてられるかな」

「ハズレだなんて誰がそんな……!!」

「じじょさんがいってたの。るてぃあははずれなんですって」

「姫様、姫様はハズレなんかじゃない。お母様が大事に大事にお腹の中で育てて産まれてきた子じゃ。そんな子がハズレなわけがない」

「でもおかあさまはおほしさまになったのでしょう?」

「そうじゃ。でもお星様になっても姫様をちゃんとみていてくれているよ」


 おじいさんはそういってるてぃあのあたまをなでてくれた。ユリアナいがいのじじょさんはだれもあたまをなでてくれない。だからきっと、このおじいさんのいっていることはほんとうなのかも?


「姫様、明日からもここにおいで。みんな姫様に会いたがっているんじゃ。きっといろんなことを教えてくれる」

「いろんなこと?」

「そう。普通のお姫様じゃ教えてもらえないことも教えてくれる」

「ふつう?」

「うむ。宮のなかは退屈じゃろ?」


 そういわれて、うなずいた。だってみんなあいてをしてくれないんだもの。ユリアナはるてぃあのはなしをきいてくれるけど……でもユリアナにだっておしごとはある。


「るてぃあがいてもへいき?」

「平気じゃよ」

「じゃあ、あしたもここにきていいの?」

「もちろん!」

「わかった!るてぃああしたもくるね」


 そうへんじをしたらおじいさんはニコニコしてうなずいてくれた。






 ーーーーそれから、おじいさんは色々なことを私に教えてくれた。基本的な文字の読み書きはユリアナから教わったけど、それ以外の計算の仕方や、ニワトリのお世話の仕方。花の育て方。馬の乗り方。魔法石に魔力を流す方法。

 それに出入りの業者の人や、厨房の人、図書館の人。いろんな人に合わせてくれて、その人達もまた私に色々なことを教えてくれた。どれもみな、私にとっては大切なできごとである。


 END 




2023年5月1日noteに公開したお話です。

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