少女の正体
「あなたがウィリト様ですか?」
「何故、俺の名前を知っているのですか?」
「失礼いたしました。私は世界の創造主であるエリエア様の神殿を守る守護者の一人、ベルナルドと申します。エリエア様のご神託により、ウィリト様をお連れするよう参上仕りました。」
「…。」
もちろん俺は話を理解しきれないでいる。
そこに追い打ちをかけるようにベルナルドは言った。
「私たちと一緒に神殿へお越しいただけますでしょうか。」
守護者養成学校の入学試験が7日後に控え、できるだけ多く勉強しなければならない。
つまり、時間が惜しい。
なぜ俺が呼ばれたか知りたい気持ちもあるが、試験に落ちるわけにはいけない。
「7日後に守護者養成学校の入学試験が控えているので、それ以降でも大丈夫ですか?」
俺の中で、最善の案だと思う。
「申し訳ございません。今すぐにお連れするようにご神託がございましたので。お時間はそれほどいただきません。お越しいただけるのであれば、可能な限りご支援させていただきます。
「ご支援とは?」
「守護者養成学校に通うのに必要な費用、5年間住まう場所など、必要なもの全てでございます。エリエア様のご意向ですので、私たちは可能な限りご支援いたします。」
神様がなぜそこまでして俺を呼ぶ必要があるのか、守護者の方の熱意に折れ、俺は神殿に向かうことにした。
「分かりました。ご支援のことはさて置き、神様にお会いしたいので、向かうことにします。何度も申し上げますが、時間がありませんので、それほど滞在できません。」
「お越しいただけるということ、大変ありがとうございます。お時間のことはご心配には及びません。転移石にて神殿まで向かいます。」
そう言うとベルナルドは持っていいる水晶を割り、辺りが光る。
眩しいので目を瞑った。
ゆっくり目を開けると、白い石でできた建物の入り口らしき所に立っている。
すると、ベルナルドは言った。
「こちらが、エアリア神第一神殿でございます。神託の間へご案内いたしますので、こちらへお越しください。」
初めての光景に、辺りを見渡してしまう。肌の色が黒い人もいれば、桃色の人もいる。いろいろな人種がいるのだった。何より驚いたのは、人の多さだった。向こうの通りは、お店が並んでいるのだろうか。歩くところもないくらい人がいる。
「さぁ、こちらへ」
辺りを見渡していて、ついてこない俺にベルナルドさんは、言った。
「すみません!」
恥ずかしくて顔が赤くなった気がした。
ベルナルドさんの後ろについていき神殿の中へ入る。
進んでいくにつれ、どんどん人を見なくなった。
この部屋にお入りください。
中に大神官様がお待ちですので、ご指示にお従いください。
ベルナルドさんは一礼し、ドアを開けてくれた。
俺はベルナルドさんに会釈し部屋の中に入った。
「失礼します。」
「こちらへお越しください。」
純白の衣装に身を包み、白い布で目を覆った老人が出迎えてくれた。
指示された場所へ向かうと老人は、微笑みながら言う。
「ようこそお越しくださいました。私は大神官のフレデリックです。よろしくお願いします。」
「ウィリトです。よろしくお願いします。」
「お急がれていらっしゃるとのことですので、早速ですが、エリエア様へのご挨拶をお願いしてもよろしいでしょうか。」
「はい。」
「私に続いてください。片膝を立て、両手は額の前で組んでください。そして目を瞑り心の中で、エリエア様へ語りかけてください。」
大神官さんはそう言い、目を瞑った。
俺も大神官さんに続く。言われたように目を瞑り語りかけた。
「ウィリトです。私をお呼びでしたでしょうか。」
「よく来たな。私の見せた未来の効果はあったようだな。」
女性の声が頭の中に響いた。
誰なんだ。何なんだこの声は。