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レスター視点:幸せを紡ぎあう未来へ1

 月日はあっという間に過ぎて。


 領地に帰ってなかなか会えないソフィアとの遠距離恋愛に切ない思いをした半年弱。

 けれどそれも、あと少しで終わる。


「父上、母上。ソフィアももう近くまで来ていますし、次の休みの日に天馬でソフィアを先に連れてこようと思います」


 喜びを隠し切れずにそう伝えた自分に、母が呆れ返った目を向ける。


「どうせ止めても迎えに行くのでしょう。好きになさいな」

「うむ、気持ちはわかるぞレスター。ソフィアさんが天馬に乗れる人でよかったな」

「あら、高いところが苦手な私に対する当てつけかしら?」

「ま、まさか。だが、たまには天馬で二人きりになれる場所に出かけたいんだ…。高くは飛ばさないから、日帰りで湖の方へ行ってこないか?」

「もう、レオルドったら」


 両親が何やらいい雰囲気だが気にしない。なぜなら、もうすぐソフィアをオルフィルド家に迎え入れられるのだから。


 結婚前からソフィアがここに住んでくれるなんて、楽しみで仕方がない。

 移動の負担を減らすために、気に入りのもの以外は実家に置いてくるよう伝えている。新しい家具もドレスも日用品も、しっかり吟味して取り揃え済みだ。なんなら身一つで来てくれても私は全く構わない。


 あまり長距離の空の移動は負担になるから我慢していたが、そろそろ迎えに行っても許されるだろう。

 ドキドキと期待に早鐘を打つ胸に手を当てる。明るい未来に、期待しかなかった。






『魔がでたわ』


 そんな囁きが来たのは、ソフィアを迎えに行く予定日の前日夕方だった。


 タイミングの悪さに歯噛みしながら、迎えを延期する旨の謝罪の手紙を認めて、使用人に早馬で送るように託す。

 伝達の精霊が示した発生場所は、魔の森の中でも山となっている部分の中腹あたり。距離があるので、森の外で待つより天馬を操れるものを集めて森に入った方がいいだろう。


 とりあえず場所の確認をと、精霊石で作られた剣を下げ、日が沈む前に天馬で空へと飛び立つ。いっそこのまま一人で滅してやろうかと思うが、危険は冒さない方がいいと理性が止める。魔は、精霊石の剣を突き立て、数人で一気に加護の力を注いで滅するのだが、その時に力が足りないと抵抗されて痛い目を見るのだ。

 魔に肌が掠っただけで、数日は酷い倦怠感と吐き気に呻くことになる。そんな無様な姿をソフィアには見せられない。


 ため息を押し殺して、発生場所へと急ぐ。

 黒く不気味に淀めく場所と、その近くの木々が切れた天馬の降りたてる場所と。必要なことを確認して、日が落ちる前に屋敷に戻る。


「レスター、魔が出たと?」

「ええ。先ほど見てきましたが、ここからは遠いので森で討ったほうがいいでしょう。天馬の降りられるところから少し距離があるので、行き帰り含めて3日か4日程は野宿になりそうです」


 家に帰ると厳しい顔をした父が立っていて、簡潔に見てきたことを報告する。


「そうか…」

「いい機会ですし、ノセやフェルドを連れていこうと思います。やや大きめの魔だったので、その2人を除いて6〜7名ほどで動くのがいいでしょう」

「そうだな。2人のフォローは私がするから、お前が部隊を率いろ」

「了解しました」


 発生の知らせを聞いた時は間が悪いと思ったが、改めて考えるとソフィアがくる前に危険を排除できるのはよかったかもしれない。

 とにかく彼女に恥じないよう、自分の責務を全うしよう。そう決意して、必要な連絡を各所に送った。



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