第5話 初クエスト
「ここがワドル町かぁぁぁ!」
数日の山道生活を終え、とうとうたどり着いた。
「ミズキは初めて来たんだっけ?」
修行ばかりで、足を運んだことはなかった。
祖父が買い出しに行くことはたまにあったが、大概は週に2度来る商人の馬車で村での生活を賄っていた。
「うん! なんかすっごく広いし、人がたくさんいるね!」
僕らと同じような人間族から、耳の長い森人族や背の低い土人族もいる。
他にも本では見たことないような種族もいる。
そして、その中で一際目立つのは龍人族だ。
「僕襲われたりしない?」
「大丈夫よ。龍人族は知能が高く、普通のドラゴンとは違うのよ」
ハルカは笑いながら説明してくれた。
「仲良くなって見たいけど、食べられちゃいそうで怖いね」
「ミズキはおいしそうだもんね」
そんなわけないと言いながら、ハルカはどんどん街中を進んでいく。
目に映るものどれもが新鮮で楽しく、冒険って感じがする。
きょろきょろしながら僕はハルカの後ろを着いていく。
「おい見ろよあそこ」
「あんなかわいい子この街にいたか?」
「後ろの子タイプなんだけど!」
「俺は前の子だな!」
僕の耳にも届くほど大きな声で周りがざわついている。
たしかにハルカは僕の目から見ても可愛いと思うけど、それを聞こえる声で言っちゃうのはどうなんだろうか……って、後ろの子!?
それって僕じゃん!
僕のこと可愛いってやばい人じゃん!
「ミズキが可愛いってよ」
ハルカは後ろを振り返り、僕をからかう。
「きっとあの人たちも可愛いハルカと比較して僕をからかってるだけだよ」
「そりゃ私は可愛いですけどね! さぁ、もうすぐ目的地のギルドに着くわよ!」
ハルカは急に歩くスピードが速くなる。
「ちょ、待ってよぉ!」
僕も置いていかれ、迷子にならないようについていく。
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「ここで依頼を受けましょ!」
ギルドに着き、ハルカはそう言う。
生活をしていくためには資金が必要だ。
なので冒険者らしくクエストを受けることにした。
「ぼ、僕のレベルに合うやつにしてよ!?」
クエストの難易度によって報酬も変わる。
もちろん難しいほうが報酬も良い。
「わかってるって!」
ハルカはクエストボードと言う依頼書が無作為に貼られている掲示板を見つめる。
ハルカの実力のクエストを選ばれたら僕は死んでしまうかもしれない。
それくらい実力差はあると思う。
「よしっ!」
びりっと紙をちぎり、受付のお姉さんのところまで、持っていく。
今、サーベルクロコダイルとかいう、凶暴な魔獣の討伐って見えた気がしたけど、気のせいだよね?
僕下級魔族しか相手したことないよ?
そいつ中級魔族だよ?
「あら、ハルカちゃんじゃない!」
どうやらお姉さんとは顔見知りみたいだ。
「こんにちは! 今日はこれ受けます!」
提出してる紙をちらっと見ると、そこにはやっぱりサーベルクロコダイルと書かれていた。
「ハルカ!? これ本気?」
思わず、口を出してしまった。
「あら、ハルカちゃんのお友達?」
お姉さんと目が合い、会釈をする。
「新しいパーティの仲間です!」
「あら、そうなのね。解散したのは聞いていたけれど……。でも、これ2人で大丈夫?」
お姉さんは僕を見て心配する。
実績のあるハルカとは違い、僕は初陣だ。
そりゃお姉さんも心配する。
「いや、これじゃないのにしまs……」
「大丈夫ですよ! この子はこう見えても勇者なので!」
僕の言葉をハルカは食い気味で遮って、お姉さんに反論する。
僕が勇者とか言わないでよ!
まだ、実力もないんだから、恥ずかしいじゃん!
「あらあら、そうなのね」
お姉さんはどうやら冗談だと思ってるっぽい。
「勇者一族は勇者様の赤目が引き継がれているとされているわ。それはまるで聖剣に埋め込まれた魔石のようにきれいな赤い瞳よ! それに女の子が勇者になることはありえないとされてるわ」
少しトーンを下げ、薄く開かれた目を向けられ早口でそう言われる。
なんか目も怖い……。
たしかに、お姉さんの言ってることは正しい。
僕の瞳は赤と言われるには少し薄く、ピンクの瞳になっている。
それに元男ではあるが、漢力を吸い取られ女の子にもなっている。
聖剣が何よりの証拠になると思っていたが、意外と似たような剣は多く存在しており、素人目には分からないらしい。
実際ここに来るまでに赤い魔石や青い魔石などが埋め込まれた同じような剣を見かけた。
つまり、お姉さんも僕が偽物の剣を握った勇者に憧れてる女の子と思っているわけだ。
「今回はハルカちゃんもいるし、1体だから受理はするわね。ちゃんと気を付けるのよ」
「本当なのにぃ……」
ハルカはなんだか悔しそうにしている。
ってこれじゃないクエストにしようと思ってたのに、受理されちゃったよ!!
「ほんとにこれ大丈夫なの!?」
「私がいるから余裕だけど、作戦変更よ! これはミズキだけで倒すのよ!」
「ええええ!!!???? 無理無理無理無理!!!」
ハルカみたいに魔法使いで中遠距離攻撃ならいいけど、僕は近距離の戦闘だよ!?
サーベルクロコダイルみたいな、鋭い牙と爪も持った凶暴な中級魔族なんて相手にしたら僕はぐちゃぐちゃのぎたぎたにされて死んじゃうよ!
「ここでお姉さんに見せつけるのよ! 勇者だぞって!」
お姉さんはにこにこしながら、僕らのやり取りを見ている。
「悔しくないの? あんたは勇者よ」
その言葉に胸を打たれる。
いつまでも弱気の僕ではいたらだめなんだ。
勇者を名乗って笑われているようじゃ、いけない。
勇者を名乗ったら、喜ばれるように。
そして名乗らなくても認知されるように。
そんな勇者にならなくてはいけない。
それが漢力に繋がる。
「……僕頑張るよ」
腰の聖剣を握り、気合いを入れる。
「たまに男らしい顔するんだから……」
「何か言った??」
ハルカは何かぼそぼそと言っていた気がする。
「何でもないわよ! さっさと行くわよ!」
ハルカに引っ張られながら、僕はギルドを後にした。
お姉さんは最後までニコニコしているだけだった。
【作者からのお願い】
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「ミズキとハルカの今後が気になる!」
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これからも更新していきますのでよろしくお願いします。




