第11話 フホキ町
「今日から違う町に行こうと思うの!」
チルチンが仲間になってから数日。
僕らはずっとワドル町で過ごしていた。
もはやここの宿も家のように感じていた。
ハルカは意気揚々と提案する。
「確かにここにいても大魔王を倒せるようになるわけじゃないもんね」
僕はハルカの提案に乗る。
強力なタンク役が仲間になった今、もしかしたら僕らは魔王軍の幹部くらいなら倒せるかもしれない。
それくらいの実力はあると思う。
きっとうぬぼれだろうけど。
「それはとてもいいんですけど、目的とかはあるんですか?」
意外にも冷静なチルチン。
「ないわ!」
ハルカは清々しく答える。
「なら少し提案があるんですけど……」
「許可するわ!」
「もう1人仲間増やしませんか?」
それは思ってもみなかった提案だ。
ドSな調教師でも仲間にしたいとか言い出すと少し思っていた。
「その心は?」
ハルカは詩吟みたいに追及する。
「だってハルカさん……回復魔法使えないですよね?」
その言葉はハルカの心を刈り取った。
「ぐはっ……!!! な、なぜそれを……」
「だって一度も私たちにかけてくれたことないじゃないですか」
記憶をたどってみると確かにそうだ。
上級魔法まで扱えるほどに魔法の才に長けているハルカだが、攻撃魔法やちょっとした支援魔法|(回復以外)しか使ってるのを見たことない。
「回復魔法使ってくれれば、何度でも重たい攻撃を受けれるのに……♡」
パーティのためと言うより、私欲のためっぽかった。
「でも、実際回復魔法がないと不便だよね」
回復だけでなく支援魔法も必要な場面は出てくるかもしれない。
瀕死にならないに越したことはないが、いつかそれだけの敵が来ることもある。
欲しい存在なのは確かだ。
「そうなると、前衛が僕とチルチンで中衛がハルカだから、後衛の魔法使いがいいのかな?」
「そうですね。攻撃面に関しては心配ないので、完全な回復役で大丈夫だと思います」
「僕、パーティとかに慣れてないからこうやって詳しい人がいるととても助かるよ」
実際さっきまで回復とか考えずに、すでに大魔王の幹部くらいならいけると思っていた。
「無駄に長く生きてますからね」
「それくらい私だってわかってたし……」
ハルカは何か不満そうに頬を膨らましている。
きっと自分もパーティを組んでて知っていたが、手柄を取られたみたいで少し拗ねたのだろう。
「2人は誰か知り合いの魔法使いとかいないの?」
冒険経験がある2人ならいるかもしれない。
ここでハルカの見せ場を作ろう!
「いないわね」
「私もです」
即答だった。
「毎回歩くの遅すぎてパーティに置いていかれるんですよね……気づいたら街にもいないし捨てられる感覚で……っ♡」
とても悲壮感溢れるエピソードかと思ったらただの思い出し性癖だった。
「これも新しく探す必要がありそうね。とはいえ、急を要することでもないし次の町とかで気軽に探してみましょ」
「そうだね」
特に他の意見もないのでそれに乗っかる。
✚
「今日はここまでね」
ワドル町からなぜか徒歩で移動している僕ら。
「ま、まだ……まだいける……っ♡」
チルチンが徒歩を希望したのだ。
別に徒歩で行けないこともない距離だから賛成したが、思った3倍は進まなかった。
それにチルチンのこの態度。
なんとなく置いていかれた理由もわかる気がする。
「まぁまぁ。夜道で危険だし、魔物や変質者がでても大変d……」
「むしろ歓迎です!!!」
「ハルカー。手伝ってー」
僕らは火を起こし、拠点を作った。
最初に家を出たときはポップルを使い、火を起こしたが、今ではハルカが炎魔法で火を起こしてくれる。
とても便利だ。
日が昇れば、木の実やキノコを採取し、獣の魔物を狩り、肉を喰らう。
日が沈めば川や水魔法で身体を清めた。
こんな2週間ほどの日々を過ごし、僕らは何とか目的地であるフホキ町たどり着いた。
✚
「これから各自町を歩き回って回復役探しに出るわよ」
宿で僕たちは作戦を立てていた。
ここはワドル町よりも北に進み王都に近づいた為、人口も多く、人の出入りも多い。
そのため、多くの冒険者と商人がいる。
「NGの種族とかいますか?」
チルチンが質問してくる。
「ないわよ。ただ、強いて言えば女の子がいいわね! あと、かわいい! そして何より可愛い!」
たしかに、ここにゴツイおっさんとかが加わっても違和感が半端ない。
気を使っちゃうし使わせちゃうかもしれない。
「そうですね。……男は私一人。女の子にハブられて。邪魔者を見る目が……♡」
チルチンは今日も平常運転だ。
「ただ、第一に求めるのは腕前ね! 可愛くても役に立たないんじゃ意味がないもの」
それはとてもごもっともだ。
魔法使いは女の子が多いため、比較的探しやすいと思う。
それにここはワドル町とは違い、1人でやってくる冒険者も多い。
商人も多く、情報がたくさん飛び交っている。
町を歩いてたら有益な情報がありそうだ。
「それじゃあ今日の20時にこの宿に集合しましょう。その時にいい人がいたらできるだけ連れてくるように!」
3人でもぎり狭い部屋に集めるの!?
皆連れてきたら窮屈だけどいいのかな?
そんな不安な視線をハルカに向ける。
「女の子だけなら密着できる方がいいでしょ?」
当たり前でしょ? みたいなスタンスで言ってきた。
もちろん反論はないので、そのまま頷いておいた。
「それじゃあ後5時間程度しかないけど、探しに行きましょうか」
僕は北の方へ向かった。
ハルカは東、チルチンは南に向かった。
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周りをきょろきょろと見ながら僕はどんどん歩いていく。
魔法使いの女の子をよく見かけるが、だいたいは誰かと共にしているため話しかけることもできない。
「意外といない……??」
壁に寄りかかり、少し考える。
すると、裏道から何やら話声が聞こえた。
「やばいだろ? 飛ぶだろ?」
「ああ、本物だな。これ!」
男の冒険者2人組が何やらこそこそ話している。
大通りが騒がしく、よく聞こえない。
「体の疲れが無くなって回復するな!」
「なら、これからもう1回行かね?」
男たちは何やら興奮している。
「回復……」
もしかしたらヒーラーのいない冒険者を回復してくれる有能な冒険者がいるのかもしれない。
大通りには占い師や修理屋など、個人で屋台のように客寄せをしている人を見かけた。
回復をしてくれる人が個人でやっているなら、その人をスカウトできるかもしれない。
この人たちについていったらきっと出会える!
僕は気づかれないようにどんどん裏路地へと進んでいく2人を尾行した。
表の大通りから入り組んだ道に進んでいく。
日の差し込みが少なく、薄暗い雰囲気になる。
「ここが……?」
2人がこそこそ周りを気にするように、店に入っていった。
大きな建物の1室から階段が伸びている。
見た目はただの部屋だが、表札がある。
ネオン管のようなもので少し明るく照らされている。
「夢の館……?」
怪しんでも仕方ないので、僕は入店する。
するとそこには見たこともないようなピンクな世界が広がっていた。
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