秋の気配
夕方、川沿いの道を散歩した。
昼間はまだ夏のように暑かったのに、日暮れ近くなった今はずいぶんと涼しくなった。
貴方と歩いてみたかったなぁ…この道。
遠く離れていて直接声を聞いたり触れたりする事は出来ない。
そもそも貴方にとって私はそんな特別な存在じゃない。
けれど、ふと貴方の笑顔を思い浮かべてみたら心がフワリと軽くなった。
少し冷たい風が頬を撫でて、私の伸ばしかけの髪を梳くように抜けた。ずっと短くしていた髪を伸ばし始めたのは、叶わぬ恋の願掛けのつもり。
いつか…貴方に会えたらいいのに。
いつか…いつか…
沢山の願いが、想いが…積もって募っていく。
川のそばまでやって来て流れを見つめながら腰かけた。この流れもやがて貴方の住む街まで繋がっていくのだろうか…?
そんな途方もない妄想をしている自分が何だか急におかしくなって、恥ずかしさを隠すように空を仰いだ。
そこには、青く蒼く雲ひとつない澄んだ空が広がっていた。
…きっとこの空は貴方の住む街へと繋がっている。
秋の気配を感じる高い空に希望と切なさを感じて、思い切り胸に空気を吸い込んだ。少し冷たい空気のせいで頭の火照りも取れたみたいだ。
さぁ、またゆっくり歩いて帰ろう。
また明日を頑張る気力がもらえた気がした。