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友人の神坂陸羽


 次の日の朝、風音姉さんと火陰には黙って朝早くに家を出た、向かう先は友人の神坂陸羽の家だ、家の前に着きインターホンを押す、インターホンのベルが外まで響き渡り、声がしてきた。


「あらら、久しぶりね」


 若い女性の声が聞こえる、この声には聞き覚えがある、神坂陸羽の母親の声だ、インターホンのカメラ越しから俺の姿を見て、久しぶりだと答えられる、インターホンから声が聞こえなくなった、数分後家の扉が開けられる、そこから出てきたのは神坂陸羽本人だ。


「こんな朝早くに来るなんて、一本ぐらい電話してよ」


 神坂陸羽は学校に行く準備をしていたのか、着替え途中の格好で現れる、ポロシャツから水玉模様のブラが透けている。


「悪い、悪い、それよりも上着た方がいいんじゃないか」


 目を逸らす。


「なんで、って、何見てんのよ」


 透けているブラに気づき、神坂陸羽は胸を隠す、家の中へと入っていき、今度はブレザーを上に着て出てきた、ブレザーには銀のエンブレムが、そのエンブレムはこの辺りで有名な女子高だ。


「それで、一体こんな朝早くからなんの用」


 少し怒り気味な神坂陸羽、直球で昨日の事を聞く。


「昨日の夜、どこにいたのか気になって聞きにきたんだ」


「昨日の夜、別に家ゆっくりしてたけど、もしかして聞きたいことってそれだけ」


「まあな、もう一つ、今でも陸上は続けてるのか」


「そりゃもちろん、推薦で入ったんだから当然じゃない」


 神坂陸羽のという名は全国にまで知れ渡っていて、陸上の世界では神坂陸羽を知らない人間はいなかった、なんでそんな人間と友達なのかというと、実は彼女に陸上を教えたのは俺自身だったのだ、当時小学校の陸上クラブに入っていた俺はクラスメイト全員に陸上クラブに入ってほしいとお願いしていたのだ、だがクラスメイト達は他のクラブに入っていたりして唯一神坂陸羽だけは、どこのクラブにも入っていなかったのだ、神坂陸羽は興味本位で陸上クラブの見学に来てくれた、陸上クラブの体験にきてくた神坂陸羽の走りを見た先生は驚き、当時学校の中で一番速かった俺は、体験にきた神坂陸羽に負けたのだ、神坂陸羽は陸上を始め、あらゆる大会に出場し優勝してきたのだ、中学生になり帰宅部だった俺と違い神坂陸羽は陸上を続けていたのだ、しかも中学でも実力は圧倒的で、三年生になった瞬間にはもう既に推薦で高校が決まっていたのだ。


「あんたの方こそ高校はどうなのよ」


「俺、俺は別に普通さ、お前と違って平凡に生きてるさ」


「高校で彼女を作ったりとかしてないの」


「俺に彼女なんかできるわけないだろ」


「そうなんだ、まだ彼女とかいないんだ」


 聞きたいこともなくなり、このまま別れようと考えていた時、背後から気配を感じて振り返る、全速力で走る風音姉さんとその後を追いかける火陰がまっすぐこちらに向かってきていたのだ。


「やべっ、じゃあまたな」


 挨拶をして、そこからすぐに離れる、俺なんかの足じゃ風音姉さんに追いつかれるのは当然のようなものだった。


「弟君、約束したよね、朝ごはんは皆で食べるって」


 家に連行されて、床に正座させられる、いつもなら助けてくれる火陰も今回ばかりは風音姉さん側についていた。


 この家ではいくつかの約束事があり、それを破ればこうして正座させられるのだ、だが今回は俺も悪いのだ、一言も言わずに朝早くに出ていってしまったから。


「ごめん、気になる事があって、それを聞きに友人の家まで行ってた」


「友人とはさっきの女性のことでしょうか」


「そうだ、昨日家に侵入してきた人間がその友人と同じ走り方をしてたから、昨日どこにいたか聞きにいったんだ」


「それでどうだったのですか」


「昨日の夜は家でゆっくりしてたってさ」


「それなら犯人は別にいるというわけですか」


「それよりも今は弟君が勝手に朝早くに出ていって一緒に朝ごはんを食べなかったこと」


「それよりもって姉上、こうして兄上も反省してるんだし、許してあげるべきですよ」


「もう火陰ちゃんは弟君に甘過ぎ、そりゃ火陰ちゃんは弟君のボディーガードで私は弟君を暗殺するよう命令されてるけど、家族水入らずで過ごせる唯一の時間なんだから」


「姉上はこう言ってますけど、騙されないでくださいね兄上、今日もこうして姉上は兄上を暗殺しようとしてるんですから」


「ちょっ、火陰ちゃん放してよ」


 風音姉さんの言葉を聞き反省している時に、風音姉さんは足に仕込んでいたナイフで首を掻き切るつもりだったらしいが、火陰が風音姉さんの腕を掴み、背中に回し俺から離れさせた。

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