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神坂陸羽のブレスレット


 一睡もする事なく朝を迎えた。


「おはようございます兄上、もうすぐ学校に行かなくてはいけませんがどうしますか」


 火陰の声と共に扉は開かれる、どうやらもう学校に行く時間のようだ。


「兄上、もしや一睡もできていないのですか」


「ずっと音花の顔が忘れられないんだあの時の陸羽の首と一緒に」


「一日で忘れる事は無理なのは分かっています、今日は学校を休みますか、休むなら連絡しておきますが」


「そうした方がいいかもな」


「では私も一緒に休みましょう」


「別に俺が休むだけで火陰が休まなくてもいいんだぞ」


「こんな状態の兄上を一人家に残しておく訳にはいきません」


 火陰はすぐさま部屋から出ていく、きっと学校に連絡を入れにいったんだろう、数分後には部屋に戻ってきたが少し落ち込んだ様子で部屋に入ってきた。


「今学校に休むと連絡しました、でも今日は生徒会の大事な会議があったことを思い出して休む事ができませんでした」


「生徒会の用事ならしょうがない火陰は学校に行ってくれ」


「本当にすみません、終わり次第すぐに帰って来るので」


 火陰は部屋から出ていく。


 お昼前になり、人間というのは不思議と腹が減る、部屋から出て、リビングの冷蔵庫を漁る、食べ物と思える物が少ないので、何か買いに出ようとする。


「はあはあはあ」


 おかしい、家を出る準備までは簡単にできた、だが腕が玄関の扉を開けようとはしない、呼吸が荒くなっていき、意識も無くなっていく。


「ここは」


 普段から見上げている天井、額が少し冷たい事に気づく、起き上がると同時に額に当ててたタオルが落ちた、ベッドの横に風音姉さんが眠っていた。


「あれ、弟くん起きたんだ」


 起き上がった時に風音姉さんを起こしてしまったらしい、風音姉さんは瞬きを数回繰り返す、まだ少し寝ぼけているようだ。


「もしかして風音姉さんがベッドまで運んでくれたの」


「玄関で倒れてたからね、酷いうなされてたみたいだけど、もしかして昨日の事」


「ずっと昨日の事が頭から離れないんだ」


「まあ一日やそこらで、精神面は普段通りといかないのは分かってるけど、けじめをつけるのも早い方がいいよ」


「けじめをつける」


「そう、はいこれ」


 風音姉さんはメモ用紙を渡してきた、メモには今日の日付と時間が書かれていた。


「これは」


「電話があってね、神坂陸羽の両親から、弟君に話があるからこの時間に家に来てほしいんだって」


 時計を確認する、もう既に夕方で時間まで三十分もなかった。


「行かないの」


「俺に行く資格なんてあるのかな」


「電話で話している時は少し悲しそうな声だったけど、弟くんには絶対に来てほしいって聞いたよ」


 ポケットを探り、ブレスレットを取り出す。


「それは」


「神坂陸羽の腕に嵌めてあったブレスレットだよ、前に陸上の大会で優勝した記念にプレゼントしたんだ」


「もしかして弟君って」


「俺はずっと神坂陸羽に片思いしてたんだ、あいつが俺の事をどう思ってたかも知らないけど、これからもあいつの事は忘れずに生きていくそれを伝えに行くよ」


「それよく私の前で言えるね」


「よくよく考えたら風音姉さんって俺の命を狙ってるはずだよね、なのになんでこんなに良くしてくれてるの」


「それは、別にどうでもいいでしょう、行くならさっさと行ってきなさいよ」


 風音姉さんに背中を押され、強制的に部屋から出される。


「もうすぐ火陰ちゃんも帰って来るだろうから、出来るだけ遅くならないようにね」


 風音姉さんは、玄関の扉を開けてくれた、俺は急いで神坂陸羽の家に向かうのだった。


「いつまでそこに突っ立てるつもり」


「バレてましたか」


「よく私の前に現れるわね」


「落ち着いてください、敵意はありません」


「敵意はないと言いながら、大勢仲間を連れてるようだけど」


「後ろの人達には手出ししないよう話しています、今時間はありますか、あるなら少し喫茶店でお茶を飲みながらお話でもしませんか」


「承諾して私にメリットでもあるのかしら」


「他の仲間が先輩の動向を監視してます、また私に先輩を攫われたくないのなら素直に従ってもらわないと」


「なら通っている喫茶店がすぐそこだから、そこで話しましょう」


「素直に従ってくれて助かります」


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