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「まずは、こちらでスキルを調べます。待っている間に簡単な説明をしましょう」

「まずは名前を教えていただけますか、お姫様?」

「……あら。儀礼的ではなく名前を聞かれるのは久しぶりです。自己紹介をすっかり忘れていましたね。わたくしは、このリーデンベルグ王国の第三王女、ソフィアーナ・リーデンベルグ」

「僕は今野内須。ナイスが名前だ」

「宗来院美香。ミカよ」

「響華。ハナで良い」

「中山涼音。呼ばれなれないけどスズネね」

「……田中、未来、ミライです」

「ぶふぅ……ふぅ。山田、太郎、です。タロウ「おお、素晴らしい」」


 最後の最後で遮られた。文官っぽい人が話している間にも今野に水晶を握らせたり、ペンダントを押し付けたりしていたんだけど、なんかわかったらしく興奮している。

 雰囲気的にオタク気質の人っぽいけど、服装は華美なので、この人も貴族っぽい。


「どうしました?」

「ナイス殿ですが、聖剣と光魔法をお持ちです。まさに勇者に相応しいと言えましょう。どちらも珍しく、強力なスキルです。魔力量も多く有望です。これは是非とも詳細なステータスを測らないと。姫様、そちらの手配もお願いできますでしょうか」

「それは素晴らしい!ステータスについても、後日調べられるようにしましょう。

 さて皆さま。今ここでスキルを調べますが、ある程度使いこなせるようになるには訓練が必要です。後日教師を付けますので、半年ほどは訓練することをお勧めしますわ」

「その間、こちらで過ごさせていただけますの?向こうの世界ではいくらでもなんとでもなりましたが、こちらでは勝手が違いまして」

「ええ。問題ありませんわ。必要でしたら、こちらの世界についても教える教師を用意しましょう」

「よろしくお願いしますわ。では、次は私で」

「……おぉこちらも素晴らしい。魔力増加に賢者とは。ダブルが続くこともそうですが、王道の組み合わせ」


 宗来院、いや、ミカは魔法使い系の最高峰賢者ですか。ナイスは勇者的組み合わせだし、マジで星に恵まれた奴らだな。こうなると、ハナとスズネ、ミライもすごいんでしょうね。けっ。

 俺はオチ担当かよ!神よ!見た目で選ぶんじゃねぇぞ!……是非ともおやめください。伏してお願い奉りまする。


「ハナ殿は武神と身体強化。魔王と戦うには強大な戦力となりますな」

「力で殴るよりも、スピードで一撃必殺がハナにはふさわしいな。戦場に舞う一凛の薔薇だ」

「ナイスらしい華美な例えだな。……でも嬉しい」

「スズネ殿は、守護と氷魔法。これまた、守ることにかけては一級品ですな」

「私らしいのかしら。使い勝手は良さそうですね」

「ミライ殿は……これは、聖女と言えますな。回復魔法と支援魔法です」

「パーティーとしてのバランスも良いですね。これで斥候系のスキル持ちがいれば……」


 みんなの視線がこちらを向く。その一瞬前に、両脇で支えてくれていた騎士たちが手を離した。……今までありがとうとは思うが、急に放されても踏ん張れると思うか?ちょっと体勢が崩れたが、なんとか倒れないように足に力を込めて踏みとどまる。おぉ。俺の幸運が最高の仕事をしたぜ!

 その光景を見ていた周りからため息が漏れた。はいはい。俺だって無理だと思うよ。そもそも魔王を倒すハーレムパーティーに俺の居場所があるわけねぇだろ!おてんば王女か獣人の盗賊娘辺りが追加で来るんだろ?

 オーク顔のデブにはおこぼれでサービスシーンを見ることすらできねぇんだろ?わかってるよ。


「……えっと、君は確かターロ殿だったか?獣人かね?」

「こちらではなんと言うかわかりませんが、人です。これでも。あっちと同じく。

 名前はタロウですが、言いにくければターロでも構いません。こだわりないので」

「そうか。タウロ殿は……た、体重倍加?!これもまた珍しい」

「……」


 珍しいだけのダメスキルだろ?名前からして。無言で見つめてくる皆の視線が痛い。

 この巨体が2倍の重さになったら、つぶれて死ぬだけじゃね?いや、違うのはわかってる。なにせ、人類最高の体重は300キロを超えてるからな。つまり、死ぬ役にも立たない。ああ、そうだな。俺に相応しいスキルだな。くそがっ!


「……そのスキルは、確か150年ほど現れていないスキルでは?」

「さすがソフィアーナ様。そうです。155年前に亡くなった方が最後ですな。……一番古い記録では553年前、今までわずかに4名。全く解明が進んでいないスキルです。

 異世界人には珍しいスキルが発現すると言われておりますから楽しみにしていましたが、これほどとは……」

「なぜ進んでいないのです?」

「……一番最初の者がスキルを発動した際に全身骨折して苦しみぬいて死んだからですな。そのため、その後使われていませぬ。効果の詳細も、何もかもが未解明です」


 追放ルート一択でしょうか。神様。そんなに俺が嫌いですか?地球だけじゃなくて、こっちに来たばかりなのにこっちの神様にも嫌われてんの、俺?救いがねぇぞ!冗談は顔だけにしろや!……はぁダイエットしようかな。つーか、しなきゃ死ぬ未来しか見えん。

 そんな俺の方を向いたソフィアーナ様が奇麗な笑顔で言う。


「気にすることはありません。異世界人タロウ。父王に掛け合い、勇者様と同じく半年の猶予を与えましょう。その間に、生きていく術を身に付けるのです」

「……寛大なお言葉ありがとうございます」


 客観的に見れば、ものすごい厚遇だ。召喚された異世界人とは言え、勇者的なのはすでにいる。予備とするにも、見た目にも、スキル的にも選択肢には入らない。支配者側からしたら、完全なる無用の長物。それなのに、今すぐの放逐じゃなくて、少なくても生きていけるように機会をくれると。見た目だけじゃなくて、心まで優しい王女。

 あ、これダメな奴だ。一目でわかった。あの冷酷そうな王様よりもひどい。優しそうな表情だけど、瞳は濁ってる。他の人間を、自分と同じ人だと認識してないタイプ。間違いなく、散々利用されて最後は殺されるパターン。班編成とかで「このままだと山田君がかわいそうだと思いまーす」なんて言い出して、自分の思い通りの班にするための出汁にしたあの女と同じ濁り方。あいつのせいで、修学旅行の班活動は独りはぐれたことにされて、しまいにゃ教師に俺だけ怒られたんだぞ!集団行動もルールも守れないクズ扱いで。

 ……いや、今は我慢だ。生き延びるための方法を見つけ出せ。できなきゃ死ぬんだ。人生一番の大博打だぞ。あの手のやつは、利害に聡い。メリットをきちんと示せば、まともな保護してくれる。今だって、形ばかりの保護になんらかのメリットがあると判断したからだし。

 その後、姫様とミカのやんどころないコンビは馬が合ったようで、話が弾んでいた。まあ、文化は違えど、高貴だの高品質だのには通じるものがあるんだろうな。上流階級すぎて俺にゃさっぱり。

 明日から教育だの訓練だのが始まるんだが、その前にもう一度王様に謁見だって!?バカ言うなよと思ったが、姫様の決定には逆らえません。最後尾を騎士二人に連れられながら、俺も同行。

 二人の視線が優しかったのは、人生で一番うれしい出来事と言っても良いくらいだ。……ああ、不幸な人生歩んでんな、俺。あ、もちろん二人には改めてお礼を言いました。言葉でお礼を言うのはタダだから。心証も良くなるし。

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