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自重が自重しません  作者: ネルシュ


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1-12

 魔力が枯渇したミライはすでにベッドで気絶している。だから、こんな話ができる。俺の中で、未来は小さな小さなガキで、不安そうな目で周りをキョロキョロと見回している姿だ。その印象しかない。

 いくらここ数年付き合いがなかろうが、気にくわないグループに居ようが、実際は同じ歳であいつの方が優秀だろうが。これからする話は、なかなか言えるもんじゃない。


「昨晩必死に考えた。俺の使えるものってのはなんだかわかるか?」

「……命?」

「うわっきびしっ!

 まあ、間違っちゃいないな。まずは異世界知識。斜め読みの半可通だが、こんな世界のこと、こんなの世界で重宝される向こうの知識、危険視される向こうの知識、そんな情報を君らよりは持ってる。具体的には知らなくたって、どんな感じの情報が重宝されるかってことを知ってる。頭の良いあんたのことだ。それがどれほどのアドバンテージがわかるだろ?」

「……そうね。特に、タブーなことには気が回らなかったわ。それにしても、そんな知識なんて持ってるの?思いのほか、勉強家だったのね」

「もちろん、詳しい知識に関しちゃ二人にゃ敵わないが、物理現象なんかが向こうと完全に同じとは限らないからな。概念的なことやちょっとした考え方だけで充分に価値があるんだよ。中世の時代なら、知識ってのは、ぼんやりしたもんだって桁違いに価値があったんだぜ?」

「私たちにとっては当たり前だけど、こちらでは考えもつかないこと。その逆もたくさんありそうね。

 でも、私たち以前にも異世界人はかなり来ているみたいじゃない」

「それでこの状況だからな。魔物や魔法の影響か、それとも、他の理由があるのかは知らないけどね。

 ま、俺のこの頭でも使い道があるってことだ」

「で、その頭を使って何か考えたのよね?」

「……その通り。その作戦についてあんなの判断を聞きたいんだ。

 まず、体重倍加。このスキルについてほとんど解明されていないってのがポイントだ。解明のために協力しようと思う」

「……命懸けよ?話が正しいとすればだけど」

「そう!そこだ!命懸け?それってほんとか?倍加って2Gってことだろ?それで全身の骨が折れるなんて考えづらい」

「……そう言われればそうね。訓練しているとはいえ、戦闘機のパイロットなんて10G超えるって聞いたことがあるわ。それで全身骨折するならニュースになるわね」

「ジェットコースターだって2Gくらいあるのはあったはずだ。でも、それで骨折したなんてニュースは見たことない。なんらかの理由があるはずだ。

 そういったことを検証しつつ、スキルでできること、条件なんかを調べる。あっちには今までわからなかったスキルの情報がわかるし、こっちは自分の能力がわかるWin-Winだろ?」

「ふぅ。貴方の考えはわかったわ。貴方が持っている現代知識がなんの役に立つのかはまったくわからないけど、それの対価として生活の保障を射てもらうのね。

 ……本当に、それだけ?」

「はっ。そんなわけないだろ。それだけじゃ、俺を半年世話するのと釣り合わねぇよ。検証には、最低限『ヒール』と『ハイヒール』が唱えられる人間が複数いるんだぜ?使えないレアスキルの検証データじゃそこまでの価値はない」

「今は手厚い保護が受けられてるものね。最高の教師と生活レベル」

「それを俺に提供するだけのメリット……それは、ある。

 それはズバリ子飼いの回復法師の成長と、回復魔法に関するノウハウの蓄積さ」

「ちょっと何言ってるのかわからないわ」

「……知識が力だって言っただろ?こんな時代じゃ、大抵回復を囲い込んでんのは宗教だ。ミライのところにもそんな話があっただろ?人も技術も囲い込んでるのが普通だ。それが宗教組織の力になる。

 国だって、独自の研究や手は確保しているはずだが、そこまで大々的にできるわけじゃない。何せ、虎の子のスキル持ちだ。無茶はさせにくいだろう。怪我人が多く出る戦場なんかにゃ出せないし、そこらの怪我人の世話をさせるわけにもいかないだろ?

 そこで、俺だ。俺がスキルを使う時は検証、つまり、きちんと対策を取った形でやるわけだ。魔力切れまで『ハイヒール』を使いまくって気絶したってそいつに危険はない。周りに騎士だっているし、そもそも味方しかいない場所でやるんだ。安全な場所で経験が積める。魔法使いまくりーの気絶しまくりーの。成長すればするほど、こんな絶好の機会なんてなかなか得られないだろ?

 それも、全身骨折ってことは、回復役は複数人必要だろう。それだけの人数を成長させられる絶好のチャンス。王女様の派閥拡大には持ってこいだ。

 それだけじゃない。『ハイヒール』や『ヒール』、そんな魔法を覚えるためのノウハウも手に入る。上手くすればその上の回復魔法にだって手が届くかもしれない」

「ノウハウ?その上の回復魔法?何言ってるの?」

「呪文さえ覚えれば誰でも魔法が使えるのか?違うだろ?簡単なやつだって、誰でも使えるわけじゃなかった。練習が必要だった。

 スキルがなきゃ絶対に使えないのか?それも違うだろ?宮廷魔法師の先生は、自分が持ってないスキルの魔法を使ってた。つまり、努力次第では使える可能性があるんだ。

 なら調べるべきは、どうやったら効率良く『ヒール』を覚えられるか。『ハイヒール』に成長させられるか。『キュア』の可能性。効果的な魔法の使い方。新作HP回復薬にMP回復薬の効果。貴人が危険な状態になったと仮定しての効果的な治療法。貴重な実験台だ。試すことなんていくらでもあるだろうさ。

 協力者はいくらでも見つかる。成果だって上げやすい。分の良い賭けさ」

「……正気?その賭けにベットしてるのは自分の命よ?」


 やっぱりこいつはわかってねぇ。

 恵まれてる奴は、生まれてこの方恵まれ続けた人間はわかりゃしねぇ。

 俺は、命を賭けて、やっとお前らの足元に近づけるんだよ。俺の身体を見ろよ!ぶくぶくに太った贅肉の塊。中身は特に優秀なところのない軽いオタク趣味のガキ。現代日本なら許されても、こっちじゃ相応の権力や金がなけりゃ生存は許されない。ダイエットに使える時間は半年……なんて思ってたらそいつは馬鹿だ!権力者にとって邪魔だったら、価値がなかったら、半年なんて猶予は一瞬で溶ける。俺は、薄氷の上を歩いてるんだ!同じ命賭けるなら、まだ、生き残れそうな方にかけるだろうが!

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