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本当の恐怖

作者: 神名代洸

僕は今とある場所に来ている。

ここにはダチが数人いるだけだ。

そしてビデオカメラで録画撮りしながら歩いていた。


ここはつい先日まで立ち入り禁止の黄色いテープが貼られていた場所。

そう、殺人事件の現場だ。

死体は惨たらしいほどに何カ所も鋭利な刃物で刺されてぐちゃぐちゃになっていたと聞く。



被害者はこの住居の住人で一人暮らしの女性とのことだった。

それ以外の情報はまだ知らないが、計画的な犯行じゃないかともっぱらの噂だ。


目撃者が何人もいて、似顔絵も作成された。皆、犯人は似た様な目つきの鋭い男だったと言う。

一度でも犯罪を犯した人間は現場に戻ってくると言う話を聞いて僕以外の皆は木陰の影等から覗いて犯人を見つけ、手柄を立てようなどと言っている。バカなのか?顔を見ると真剣だから何も言えない…。


どうせ誰もやって気やしないと僕は思っていた。たまの休日をこんな風に過ごすなら一人で部屋でビデオでも見てれば良かったとブツブツと独り言を喋っていたら誰か来たようだ。

靴音が遠くから聞こえてくる。

この辺りはこの時間は人通りが少なく、犯罪が起きやすい場所としてテレビで取り上げられることもあった場所だ。


「おい、誰か来たみたいだぞ!ビデオカメラはいいか?」「おう!ばっちり準備して来たからな。バッテリーも持って来てるしな。」「さすが準備がいいよな。俺なんか携帯くらいしかないし〜。親が買ってくれなくてさ。ケチなんだよ。」「シーッ!!」




何かが暗闇で光った。

土の上を何か金属物を引きずる音が響く。

皆緊張で黙っていた。

まるで相手にこの場所がわかってしまっているかのように徐々に近づいてくる感じがして心臓の鼓動が速くなっていた。


くちゃくちゃ何かを咀嚼する音が聞こえて来たと言うことはだいぶ近くにいると言うことになる。


誰一人として音は立てられなかった。

怖かったのだ。

もしよ、もし殺人犯だったら洒落にならない。僕らも危なくなる。それだけは怖い。


しばらくその場に立っていた誰かはプッと何かを吐いてその場からいなくなった。

しばらくの間誰一人声が出せなかった。それほどの恐怖だったのだ。

だけど僕らは知らなかったんだ。本当の恐怖というものを……。





その場から離れた誰かは街頭の明かりで判別できたのは男だと言うこと。

野球帽をかぶりマスクをしていたが、男性のコロンの香りが微かにした気がしたのだ。

でも両手に何か持っていた気がした。

…と言う事は鋭利な何かと金属の何かか?

一定の距離を保ったまま尾行を続けた。もちろんその間にその場から一人離れて警察に電話をする事をやめない。

仲間が戻ってくるまでは緊張しっぱなしだった。



それからどれくらい経っただろう?

仲間の1人がいつまで経っても戻って来なくなった。

今更か?怖くなったとか?

それは僕もおんなじだ。



「なぁ、あいつまだ戻ってこないぜ?おかしくね?」

「怖くなったから逃げた…とか?」

「まさか…俺らを置いてったりはしてない…よな?」

「どこまで電話しに行ってるんだ?」



遠くにいる男は相変わらず独り言を喋っているようだ。でもだんだん声が大きくなってる気がしたのは僕だけだろうか?



「こいつのかーおはグッチャグチャ。次のヤーツはどうしよう。」



明らかに手の部分が大きな影となっているのを見て嫌な予感しかなかった僕らはカメラをズームした。そしたらさ、そこに写ってたのは…ダチの首だった。

血が滴り落ちてまだ殺されたばかりだと言うことがわかる。怖くなった僕らは皆で逃げることにした。

行き先は交番だ。

だけどそこには誰1人としておまわりはいなかった。

巡回中とある。

ったくなんでこんな時にいないんだよ!腹が立ったがそんな事よりもついてくる謎の男を振り切りたかった。

とにかく交番内のどこかに隠れるしかない。

持っていた携帯をマナーモードへと切り替えた僕は必死になって息を殺していた。

謎の男が手にしている携帯を鳴らし僕らを探そうとしてる。

みんな気付けよ!

願ったが叶わなかった。

だから男の隙をついてこっそりと部屋の奥から交番の外に出た。

その時だ。

「ギャー!!た、助けてくれ!」

「な、何で俺らがこんな目に…。」その時男が言った。「これで全員か。」と。

気が動転してる仲間達は皆頷くが、1人だけ違った。気付いたのだ。僕がその場にいないことに…。


「い、いない。あいつどこいった?」

「本当か?嘘は言ってないな?」

「本当に本当だって。さっきまで一緒だったんだから。」

「っそっ。ならもうお前いいわ。消えろ。」

そう言って手に持っていた凶器で頭を殴りつけ何度も何度も叩きつけるように殴って殺した。


それを道挟んで反対側まで来ていた僕は外から交番内を見ていた。そこに警ら中のおまわり2人が戻ってきた。男は警戒していたようで、さっと身を隠して僕と同じように裏口から建物内を抜け出した。


現場は地獄のような有様だった。

壁中に血が飛び散っている。

生きているものは…いなかった。

すぐに本部に連絡を入れ、現場保持された。

その後どうなったのかは知らないし、知りたくもなかった。




逃げて来てすぐに自宅の二階の自室に籠ると頭から布団を被りガタガタと震えていた。

みんな死んじまった。

男はダチと何か話ししてたみたいだけど何だったのかまでは聞き取れなかった。それが僕自身のことだなんて思いもしなかった。

その日の夜はなかなか寝られなかった。

目を瞑ると事件のことを思い出すからだ。

怖い。

正直な気持ちだ。


でも寝ないとダメだ。

目を瞑り気持ちを無にして何も考えないようにして眠りについた。





「ハァハァハァ…。逃げなきゃ!捕まったら終わりだ。」

何から?

分からない。

ただ言える事はダチがみんなあいつに殺されたってことだけだ。


夢を見ていた。

ダチとみんなで遊びに行った時の事を。

夏には海に行ったりもしたなぁ〜。

みんなで同じ場所から一斉に泳いで誰が先に岸に辿り着くかを競ったっけ。

僕は泳ぎはあまり得意ではない為、ハンデで浮き輪を使わせてもらってたよな。

みんなと泳いでいたら突然片足が何かに掴まれた気がした。

ダチを呼ぼうと思ったらいつの間にか海には僕1人だけしかいなかった。

みんなを呼んだが誰も返事をしない。

また足首を掴まれた。今度は引っ張られた。

浮き輪があったから沈む事はなかったけれど、たまたま海の中を覗いたらそこにはダチみんなの顔が…。

見えるのは顔だけだ。怖いと思ったよ。恐怖しかなかった。

足を動かして掴まれた足を何とかしようとしたが、つかんでいるのは1人だけではないようで引っ張る力の方が強かった。

これは夢だ。そうだ!夢に違いない。


起きろ!

目を覚ませ!

ヤバイよ!早く!



目が覚めた時には身体中汗でベトベトだった。

何気に足首を見た僕は真っ青になっていた。

両足首が何かに掴まれたようになっていたからだ。

クッキリと人の手の跡がみてとれた。

夢…じゃない?

じゃあ…じゃあ、本当に死んだんだな。

生き残ったのは僕だけ……。


あいつは今どこに?

狙われているかもと思うだけで震えがきた。



すぐに警察に電話したよ。

◯◯交番の被害者は僕の友達で、僕はその現場にいた唯一の生き残りだって事。

電話口でザワつきが分かる。

仲間の人数と名前を伝えた。

僕?僕の名は…。僕の名は。





電話を切ったあと、最寄りの交番まで来て欲しいという事だったので、言われるまま自宅を後にした。


背後には男が1人…離れたところに立っていた。


手には何かを持っていた。





僕は気付かぬまま交番に向かった。

そこは誰もおらず、また巡回中の紙が立ててあった。おかしいなって思ったのはいるはずの場所にいるはずの人がいない事。一瞬嫌な予感がしたよ。

振り返ろうとした時振り返った目の前に例の男の顔を見た気がした。



その時頭に痛みが遅い意識が遠のいた。




僕は…死んだのか?


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― 新着の感想 ―
[良い点] ホラーとして、最後まで楽しめました。 [気になる点] 最初の友人と、犯人の接触。 後をつけていたら、犯行そのものを目撃してもおかしくないような気も……。 [一言] よく主人公、マナーモード…
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