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第1幕 『星の銀貨』のヒロインの場合 ⑦

 ルナは凍えるような寒さの中、次の教会を目指して歩いていた。


(神様・・・どうぞ私をお守り下さい・・・。)


ルナは麻袋に入っている4本のパンを大事に少しずつ食べながら一つの村に辿り着いた。そこはルナが住んでいた村よりもずっと貧しい村だった。


(この村に教会はあるかしら・・・?)


ルナは教会を探して歩いていると、道端に1人の老人が倒れていた。その身体は痩せこけ、手足は針金のように細かった。


「おじいさんっ!大丈夫ですかっ?!」


ルナは驚いてその老人に駆け寄り、助け起こした。


「あ・・ああ・・・お腹が空いて・・もう死にそうです・・・。もう5日間何も口にしていないのです・・・。も、もし・・何か食べ物があるなら・・どうかこの私にお恵みを・・・。」


「そんな・・5日間も何も口にされていないのですか?分かりました。今すぐにパンを差し上げますね?」


ルナは自分の食べかけのパン以外、残りの3本のパンを全て老人に渡した。


「え・・こ、こんなに沢山のパンを頂いても構わないのですか・・?」


老人は信じられないと言わんばかりの目でルナを見た。


「ええ、お爺さん。私は自分の分のパンがあります。どうぞ食べてください。それでお伺いしたいのですが、この村に教会はありますか?」


「教会なら、この道をずっと真っすぐに行くとありますよ。」


老人の指さした方向には小高い丘があった。


「有難うございます。お爺さん。」


ルナはお礼を言うと、老人に手を振り教会を目指した。寒さに凍えながら歩き続け、ようやく教会へ辿り着いた。


「すみません!どなたかいらっしゃいますか?!」


しかしいくらドアを叩いても返事は無い。試しに押してみると、ドアは何なんく開いた。


「失礼します・・・。」


ルナはドアを開けて中へ入ると、そこは蜘蛛の巣だらけの古びた教会だった。

まるで何年も無人の様であった。


「まあ・・・ひょっとするとこの教会には神父様はいないのかもしれないわ。すみませんが、イエス様。今夜一晩泊めてください。その代わり、お掃除させて頂きますね?」


ルナは教会の中を探し回り、ほうきとぞうきんを見つけた。そこでほうきで埃や蜘蛛の巣を綺麗に払い、雑巾がけをすると教会は見違えるほど綺麗になった。


「神様、どうか私を見守っていて下さい。」


そしてルナはパンを一口だけかじると椅子の上に横になり、身体を縮こませて眠りについた。



 翌日―


 夜明けと共にルナは次の村へと旅立った。



 一足遅れてアーサーはルナがやって来た村へと足を踏み入れた。そして切り株の上に座っている1人の老人を見つけた。


「すみませんが、この村に若い娘さんが訪れませんでしたか?」


すると老人は答えた。


「ええ、昨日会いましたよ。それは優しい娘さんでした。飢え死にしそうだったこの私に自分のパンを3本もくれたのです。そして向こうにある朽果てた教会へ向かいましたよ。」


「本当ですか?有難うございます。」


アーサーは頭を下げると、急いで教会へ向かった。ようやく教会へ辿り着き、ドアを開けて驚いた。朽果てた教会と聞いていたのに、中はとても綺麗に掃除されていたからだ。


「こ・・・これは・・・やはり、その娘さんが掃除したのだろうか・・?」


驚くアーサーの後姿を黙って見届けていた老人は満足そうに頷くと、突然身体が金色に光り輝き、スッとその場で消え失せた―。




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