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第2幕 『くるみ割り人形』のヒロインの場合 ④

 翌日―


クララは夜が明ける前に、事前に荷造りをして置いた荷物を持って、そっと屋敷を抜け出した。外はすっかり雪が積もっていたが、躊躇している余裕は無かった。


(一刻も早くお兄様の元から逃げなければ・・・っ!)


クララはカバンをしっかり抱え、ドロッセルマイヤーの住む家へと向かった。

ドロッセルマイヤーの家はクララの屋敷から10k程離れた場所にある。本来なら歩いて行く距離では無かったが、この時間は辻馬車も動いてはいない。

クララは防寒マントのフードをしっかり被り、誰にも顔が見られないようにひたすら雪の降る薄暗い町中を歩き続けた。


 夜明け前の町はしんと静まりかえり、街灯の明かりも消えている。そして時折、酔っ払い同士の喧嘩する声も遠くから聞こえてくる。


(怖い・・・早く・・早くドロッセルマイヤーおじさんのところへ・・・。)


その時、突然目の前に3人の大男が立ちはだかった。


「お前・・・ひょっとして女か・・?」


1人の男が声を掛けて来た。


「・・・。」


クララは恐怖で返事も出来ないし、動く事も出来なかった。男達からはアルコールの匂いが漂っている。


「何だ・・・だんまりかよ?」


黒い髪の男がいきなりクララのフードを剥ぎ取った。すると途端に現れるクララの金の髪と美しい顔。それを見た3人の男達の顔に下卑た笑みが浮かぶ。


「こいつは上玉だぜ・・・。」


言うなり、いきなりクララに襲い掛かって来た。冷たい石畳の上に押し倒されたクララはあまりの冷たさに悲鳴を上げた。それにも関わらず男達はクララのマントを剥ぎ取ろうとした。


「いやあああっ!だ、だれか・・・・っ!」


するとの時、突然1台の立派な馬車が現れると、騎士の姿をした若者が飛び降りて来た。そして男達に向って叫ぶ。


「貴様らっ!寄ってたかってか弱い女性を3人がかりで・・・覚悟しろッ!」


若者は腰にさしてあるサーベルを引き抜いた。月明かりに照らされて、サーベルがキラリと光る。


「ヒイイッ!!」


すると男達は初めて見るサーベルに恐れをなしたのか、悲鳴を上げて逃げ出した。

クララは恐怖で震えながらも若者を見上げると言った。


「あ、あの・・・助けて頂いて・・ありがとうございます・・・。」


「お怪我はありませんでしたか?」


若者は心配そうに尋ねて来た。


「は、はい。大丈夫です。」


「一体どちら迄行くおつもりだったのですか?」


そこでクララは住所を伝えると若者は眉を潜めた。


「・・・随分と遠いではありませんか・・・。歩いて行けるような距離ではありませんよ?いいでしょう。私の馬車に乗って下さい。丁度方向が同じですから。」


「どうも有難うございます。お心遣い感謝致します。」


そしてクララは青年の馬車に乗りこんだ―。





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