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第2幕 『くるみ割り人形』のヒロインの場合 ①

 ここはある伯爵家の大きなお屋敷―


このお屋敷には両親と一緒に暮らす2人の兄妹が住んでいた。兄の名前はフリッツ。そして妹の名はクララだった。

フリッツは20歳になる金の髪の美しい青年で、現在は遠方の大学に通っている。しかしクリスマス休暇と言う事で今は邸宅に帰省していた。

そして妹のクララも金の巻き毛の18歳のそれは美しい女性だった。


 今日は12月24日、クリスマスイブである。

伯爵家のクララの家には大勢の着飾った紳士や貴婦人がパーティーで集まっており、クララの両親と兄のフリッツは客人達をもてなしていたが、そこにはクララの姿は無かった。

クララは本日と、明日も開催されるクリスマスパーティーに出席する事を禁じられていたのだ。しかも決して誰にも見つからないように部屋の外に出てはいけないと命じられていた。何故なら・・・。


「ああ・・・やはり今年も私はパーティーに参加する事を許されなかったのね・・・。」


クララは部屋に閉じこもり、ため息をついていた。

部屋にはクララの為だけに用意された小さなツリーに来賓客達に用意された同じ食事、小さなケーキにワインがテーブルの上に用意されている。


「毎年イブとクリスマスは1人で過ごさないとならないんて・・・寂しすぎるわ・・。」


クララはポツリと呟いた。


さて、何故クララがこのような待遇を受けているかと言うと、それはクララは父親の婚外子であるが為であった。

クララの母はこの家で働くメイドで、とても美しい女性だった。それをこの家の主人・・・クララの父に見初められ、無理やり手籠めにされて生まれたのがクララだったのだ。

クララの母は妊娠した事を告げるとメイドをクビにされ、代わりに小さな家を1軒と僅かばかりの手当てをやるので愛人になるように言われ・・・仕事を失ってしまったクララの母はやむを得ず、愛人になる事を承諾した。そして母は難産の末、クララを出産し・・・二度と帰らざる人となってしまい、行き場の無くなった赤子のクララはやむなく父に引き取られ、フリッツの義理の妹として育てれる事となった。


 夫人は快くクララを受け入れ、2人を差別する事無く接したので、夫人の評判はうなぎのぼりに良くなった。だが夫人がクララを受け入れたのにはある深い事情があったのだ。

それは・・・フリッツは愛人との間に生まれた子供・・・。

つまり、フリッツとクララの間には全く血がつながらない兄と妹の関係なのであった。しかし、夫人はその事実をひた隠しに隠し通し・・・フリッツとクララの関係を隠す為に夫人はクララを目立たないように育て、決してパーティーの席には参加させなかったのである。

そしてクララは生まれて18年、毎年クリスマスを1人寂しく過ごしていたのであった―。




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