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8.出発だ!

「ではお爺様。行って参ります」


「フローラ、気をつけて行くのだぞ。夕間、フローラを宜しく頼む」


 ------ だからそんな目するなよ。


 ラズロは言葉だけで無く、ジーっと俺を見て目で強く訴えてくる。そんなに心配なら出さなきゃ良いだろうに---- 

 

 フローラが怪我でもしたら煩いんだろうな。絶対後ろにいて貰おう---- 治癒だから前に出る事もないだろうし。


「ほっ夕間殿、気をつけて行くのじゃぞ? ワシも調べておくからのう。ミンハ、夕間殿を宜しく頼むぞ」


「大丈夫、まかせて」


 オズ---- 昨日会いたかったよ。結局相談出来なかったな---- まあどうにかするしかないか。


「ああ、オズ頼んだよ。じゃあ行ってきます!」


「皆準備はいいかにゃん? 出発進行だにゃん!」


 ラズロが用意してくれた幌馬車に皆乗り込むと、サバンナが馬を操りゆっくりと前へ進み始めた。


「今魔王討伐に向け勇者一行が出発した。皆の者安心するが良い! 必ずや魔王を倒すだろう!」


 ラズロの声をオズが魔法で城下の街に響かせると、瞬く間に民から歓声の声が上がり街全体が震えだす。


 城門に立つラズロやオズが小さくなっていくのを見ながら、俺達は街中へと入っていった。


 城下の街にはお祭りの様に人が大勢と集まり、パレードの様にフローラは御者席に立ち笑顔で手を振っている。王女らしい姿を後ろから見て流石だなと思う。


 俺は見慣れた光景や集まる人々の期待の表情につくづく嫌気が差して、幌馬車の中で大人しく座っていた。


 ハア。もう何回目だ? 最初の時はこんなパレードみたいのなかったよな。いつ聞いても凄い声だ、一体何処から声をだしてるんだか----


「夕間殿? 夕間殿は人前が苦手ですか?」


「ああ、もう何回も経験したし面倒くさい」


「面倒くさいですか。ふふっ確かに何回も経験してるとそうかもしれませんね」


「---- レーリアも面倒くさいとか思うのか?」


「面倒くさいとは思いませんが、私は騎士団団長ですからね。パレードではいつも先頭を歩きます」


「そうだよな。レーリアは何で騎士団に入ったんだ? 女だと大変だろ?」


「私の父が前騎士団団長でして、それこそパレードで前を歩く姿に憧れたのです。女が剣術を学ぶなんてと父は反対しましたが、母が応援してくれました。おかげで騎士学校に入り主席で卒業しました」


「そ、そうなんだ。よく団長にまでなれたな、レーリアは強いのか?」


「どうでしょう。とりあえず騎士団の中では私に勝てる者はいませんね。父の血を色濃く継いだのでしょう」


 ------ 騎士団で一番強い?!


 美人で強いって凄いな---- 見た目から勝手に親の七光だと思ってた。まあ魔王討伐に来るぐらいだし、それなりに強いだろうとは思うけど強さが全然分からねぇ。


「レーリアのレベルってどれくらいだ?」


「そうですねぇ、夕間殿にはステータスをお見せしましょうか。その方が分かって頂けやすいですし、連携も取りやすくなりますからね」


 レーリアはそう言いながら俺の横へと座り直しステータス表示の魔法を唱える。レーリアが掌を上へ向けると、ぼんやりした円形の光が現れ文字が浮かび上がった。


 ==== レーリア・オルフェット ====


  LV   65

  HP  790

  MP  150


  必殺技  フリーズフレイム


  習得技  フリーズラッシュ

       ワイドソウル


  スキル   パワーインクリース

        スパルタブレイク

        スピードアタック


   属性   氷 火


 ==============================



 LV65?! 昔のラズロよりたけぇじゃねぇか!


 スキルが攻撃に特化してやがる。凄いなこの組み合わせは、防御を殆ど考えてない----


 必殺技はフリーズフレイム? 氷と炎を同時に出すのか? どんな技なのか見てみたいなー、ワイドソウルも気になる。


「レーリア、防御する時はどうしてるんだ?」


「そうですね。身体強化だけです。あまり気にしていません」


 マ、マジ? ゲームでいうSTR特化か? 


 いや、スピードアタックっていうのがあるな、AGIも考えているのか? これは一緒に戦ってみないと分からないな----


「レーリアの戦ってるとこ見てみたいな、必殺技が気になるしワイドソウルってどんな技なんだ?」


「ふふ。楽しみにしていて下さいね。夕間殿は何の武器をお使いなんですか?」


「俺か? 俺はこれ」


 空間収納から俺の武器を取り出す。ボクシンググローブの様な形のナックル武器は、今までいくつか作ってきた中で1番のお気に入りだ。


 これ、作るの大変だったんだよな----


 運が良くないと手に入らない素材もあったし、魔法を付与するのも大変で結構時間がかかった。何よりこの世界にはナックル武器がなくて一から作らなくてはならない。見本がないまま創作して最初は失敗続きだったのを思い出す。


 これを見つけてくれたオズに感謝だ。またこいつが使えるんだからな。


「これは? 見た事がない形ですね。どうやって使うのです?」


「ああ、この世界ではナックル武器を使う奴なんかいないからな。こうやって使うんだ」


 武器を俺の拳にはめてレーリアが見えるように前に出す。黒のグローブに黄色の縞のような模様がハッキリと見えた。


「俺の武器は、このライトナックルだ」


「ライトナックル? どう戦うんですか?」


「これをつけて魔法を纏いながら敵を殴る。俺の戦闘スタイルは素手だからな。後は魔法攻撃のみで武器は持たない」


「そ、そうでしたか。拳で戦ってきただなんて---- 夕間殿のステータスはどうなってるんです?」


「ハア---- 最初は皆怪しむんだよな。まあレーリアのも見たし俺のも見せてやるよ---- ステータス」



 ========  空閑 夕間 ========


  LV   90

  HP  1150

  MP  400


  必殺技  ライトニングボム

       ダークスワロウ


  習得技  ダークチェイン

       トルネード

       ライトニングボルト

       ウィングライジング   


  スキル  パワーインクリース

       ブレイクダウン

       ボディハーデン

       アジリティラッシュ

       ヘヴィスタン


   属性   雷 闇 風


 ==================================



「凄いです、流石勇者ですね。レベルは勿論ですけど、必殺技が2つもあるなんて。しかも属性が3つ---- 初めて見ました」


「ま、俺は何度も召喚されてるからなこんなもんだろ。レーリアも強そうだし今回も何とかなるか」


「何とかって酷いですね。ふふ。私もですけど、ミンハやサバンナも強いんですよ? フローラ様は治癒や防御魔法に長けてますし、心配しなくても大丈夫です」


「そう、なのか?」


「ええ、だから夕間殿は気にせず戦ってくれればそれで良いのですよ」


「ミンハ強い」


 -------- ぇえ?! いつから横にいたんだ? 全然気付かなかった----


「レーリア強い。ミンハも強い。大丈夫」


 ミンハの目は本気だな、ミンハって何歳なんだろう---- 幼女なのに魔王討伐に良く選ばれたな、レベルとか高いんだろうか---- まあオズが送り出したって事はきっと強いんだろう。


「そっか。ミンハ頼りにしてるよ」


「------」


 あ、また顔逸らされた。素直に言ってみればこれだもんなー何だか損した気分だ、それに何でか俺の服掴んでるし。


 ま、気にしないでおくか----


「夕間様。街道を抜けて森に入りますわ」


「分かった。もうそんな所まで来たんだな」


 フローラと入れ替わる様に御者席へと移ると、サバンナは馬を操りながら鼻歌を歌っていた。


 周りを見れば明るい日差しが木の葉から差し込み、爽やかな風が気持ち良い。


 久しぶりの森を堪能していると湖が見えて来て、湖の前で馬が急に足を止めた。


「勇者様、ここで一旦休憩ですぅ。馬に水を飲ませるにゃん」


「分かったよ。俺は周りを見てくる」


「了解ですぅ、気をつけて行くにゃん」


 馬車を飛び降りて、そのまま森の中へと入る。


 ある程度森の中を進んでから、俺は身体の魔力を巡回させ身体強化の魔法を唱えた。


「強化」


 身体の一部や全体が強化するよう一つ一つ確認をしていく。久しぶりの感覚に、身体が驚いたようにビクッと動いた。


 ある程度慣らすと、今度は拳を作り腰を落として正拳突きや回し蹴りを繰り返し、空手の演武を始める。


 ジジィから教わった武道は空手以外にもあるが武器を使わないものばかり。


 最初の内は剣で戦ってみたくて練習してみたが、スキルの発動も遅くなるし、自由に手を使えないのが嫌で結局面倒くさくなってやめた。


 ま、俺には結局拳が1番やり易いって事だよな。


 ナックル武器を作り始めた時なんか、結構周りから馬鹿にされたな。レベルが高くても、本当に強いのか疑いの目を向けてくる奴らばかり。


 剣や魔法が普通の世界だから仕方ないと思いながらも、少しだけ悲しかった。ジジィに教えて貰った武道を馬鹿にされてる気がして、皆に認めてもらいたくて意地になったものだ。だから他の武器は使わないし、今回も使う気はない。


 演武を終え呼吸を整える。


 強化は大丈夫そうだな、魔法の練習でもしておくか。


 スゥっと息を吸って魔法の発動をさせようとしたら、いきなり爆発音が駆け抜けていった。


 ドドォォーン!!


 はっ? 何が起きたんだ?!


 爆発音の大きさと地面の振動の強さから、近くで爆発が起きたと分かる。


 皆がいる方角からか? やばい、皆大丈夫か?


 元来た道を身体強化をかけて早いスピードで戻っていくと、前方に黒い煙が見えてきた。


 ---- 馬車から離れた俺が馬鹿だったな。


 走りながら前に手を翳し、風魔法で煙りを散らす。


 煙りが消えてくと、デカい熊みたいなモンスターと対峙する皆の姿が見えた。先頭にはミンハが立っていて、モンスターはミンハに攻撃しようと腕を上へと高くあげている。


 「ミンハー!!」


 俺の叫びなどお構いなしに、モンスターは高く上げた太い腕を勢いよくミンハへと振り下ろした。







読んで頂き感謝です!

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