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7.作戦会議をしましょう

 ハア、何でこんな事に----


 俺は頭を抱えながら、目だけ動かして周りを見る。


 横を見ても、前を見ても女しかいない。しかも俺の事なんか気にせず、4人でおしゃべりして盛り上がっている。ファーストフードでこの4人を見たら皆振り向くんだろうな。


 それぞれ種類が違うハイレベルな女性陣を見てため息が止まらない。その4人の中に自分がいるだなんて---- 俺の世界ならこのような場に俺がいたら何を言われるか分かったもんじゃない。


 ハア---- 果たして魔王討伐は出来るんだろうか----


 どうにか早く帰って、ゲームの続きがしたい。


 幻のラスボスに思いを馳せる。後少しで倒せた筈なのに、何で俺はこんな所にいるのか、再びため息を吐いているとフローラが場を仕切りだした。


「皆揃ったので、明日の出発に向けて作戦会議を始めましょう。サバンナお願いしますわ」


「はあーい! 案内役のサバンナですぅ。宜しくお願いしますぅ。今回の魔王討伐に向けてのルートを考えてきたにゃん。まずはこれを見て欲しいのにゃん」


 サバンナは、テーブルの上にバサッと大きな地図を広げる。地図には、ガンナー大陸とリバイン大陸が描かれており、中々精密な地図に関心してしまう。サバンナが考え来たのかルート毎に線の色が分けられていて、距離を表す数字が小さく書き込まれていた。


「いいかにゃ! 今わたし達がいるのはここ、ガンナー大陸の真ん中だにゃん。魔王がいると思われる場所がここガンナー大陸の端か、リバイン大陸の右上。そしてガンナー大陸と、リバイン大陸に挟まれたここだにゃん。オズ様が言うには、魔王はある程度の期間で拠点を中心に移動してるみたいですぅ。なので、一つ一つ拠点を潰していかなくてはならないにゃん」


 なるほど、拠点の場所は前に行った場所に近いな。


 ガンナー大陸の端からリバイン大陸までは結構な距離なんだよなあ、戻るのは面倒くさいから先にガンナー大陸の端から攻めるのが妥当だろう。


「じゃあここ、ガンナー大陸の端から行かないか? リバイン大陸に行ってから戻ってくるのは大変だろう」


「そうね。私は夕間殿の意見に賛成よ」


「私もそれで良いですわ、端の拠点にまずは行きましょうか」


「ミンハも」


「じゃあ、まずここに行くにはこのルートが最短だにゃん。山道や洞窟を通れば1ヶ月位で着く計算だにゃん」


 1ヶ月?! そんな早く着くのか?


 サバンナの言うルートを目で辿っていけば、目的地まで山を一直線に抜けていくようだ。


 街を通らずに行けばこんなに早かったのか---- 今までの道は何だったんだ。今考えれば貴族も中にはいたし、出来るだけ宿に泊まっていたな。野営したのは最低限の回数だったって事か?


 ---- 男でさえ宿に泊まるのに、女が野営なんて出来るのだろうか? 重い荷物を運ぶしトイレだってないだろ? 皆でテントに寝るだなんて考えるのも辛い。


 想像してみたもゆっくり休めるとは思えないし、女と一緒に寝るなんて絶対嫌だ。それに山を歩く体力だってあるのかと心配になってしまう。提案してきたサバンナや騎士であるレーリアはまだ良いとして、フローラやミンハは大丈夫か? 王女が野営なんてまず聞いたことねぇ。


「1ヶ月で着くなら早くて良いわ。ただ山は良いけど、洞窟を通るのは少し不安ね。サバンナ、中がどうなっているか知っているの?」


「もちろんですぅ。このルートだと2つ洞窟を抜けるにゃん。最初に行く洞窟は短いけど道が険しいらしいにゃん。次の洞窟には噂だと伝説の大蛇が住んでいると聞いたにゃん!」


 ---- 伝説の大蛇?! そんなのがいたのか。


 通りで今まで通らなかった訳だ。それにしても大蛇ってどんなモンスターなんだ? 伝説っていうのが気になるし大ってどれくらいの大きさなんだろ----


 やばい、ちょっと行ってみたい。今まで見た事がないモンスターがいるなら少しは楽しめそうだ。


「伝説の大蛇ですか? サバンナ詳しく教えて貰えますか?」


「良いにゃん。伝説の大蛇は、普通の蛇と違って私達の体の何十倍もデカいらしいにゃん。毒を吐いて攻撃してくるから、皆倒せないと言っていたにゃん」


「毒ねえ。ミンハ毒の解除魔法は使える?」


「問題ない。ミンハ使える」


「ミンハの魔法があれば大丈夫だとは思いますが、少し不安ですわね。遭遇すれば大変そうだわ」


「冒険者達は避けてるみたいですぅ。このルートを辞めるならこっちのルートがお薦めだにゃん。こっちだと遠回りになるから2か月かかる計算だにゃん」


「結構違うものねえ。夕間殿、どうされます?」


 んー、毒はオズから教えてもらった魔法で対処出来るし、何より大蛇と戦ってみたい。


 オズがいれば何も考えずにその洞窟に行くけど---- 今回は女しかいないし、皆がどれくらい戦えるかも分からない。そもそも戦力になるのか? 伝説って言うぐらいだからきっと強いのだろうし、攻撃力が半端じゃないとか?


「夕間様。私達の事でしたら大丈夫ですわよ。気にせずお答え下さいませ。野営も気にしませんし、不安はありますがどちらでも大丈夫ですわよ?」


「そうねえ、皆が大丈夫なら私もどっちでも良いわ」


「---- ミンハは大蛇に会いたい」


 え?! 流石オズの孫というか---- ミンハは好奇心旺盛なんだな。


 皆の顔を見ていけば、飄々とした様子で俺を見ている。怖がる様子も不安な様子も感じられず、女しかいない筈のパーティーなのに何だか頼もしく思えてきた。


 そういえば今まで俺に旅のルートを決めさせてくれた事があっただろうか---- いやないな。オズやラズロは意見を聞いてくれたけど、決定権は俺にはなかった。本当に俺が決めていいのか?


 何だか嬉しい。女だからとか思うのはやめた方が良いかもな。


 よし! 伝説の大蛇、見てやろうじゃないか!


 俺は洞窟のある場所を指さして、出した答えを皆へ伝える。


「皆、ルートはこの最短の距離で行こう」


「分かりましたわ、最短距離で行きましょう。ミンハ食糧の調整お願いしますわね」


「了解したにゃん!」


「では、私はテントの確認をしておくわね。サバンナ後で一緒に来てくれる? 雨具や野営道具を追加するわ」


「分かったにゃん。んーちょっと荷物が多くなりそうで少し心配だにゃん。必要あるかないか判断してから馬車に積むにゃん」


「ミンハ。少しなら空間収納使える」


「それは助かりますぅ。お願いしてもいいかにゃん?」


「空間収納なら俺も使えるぞ? ミンハと俺のに入れれば楽なんじゃないか?」


「勇者様は空間収納も使えるにゃん?! わーそれなら安心だにゃん。宜しくお願いしますぅ」


「夕間様は流石勇者様ですわね。お父様に聞いた通りですわ。確認は皆でしましょうか」


「それが良いわね。まずは野営道具を確認しない? 各自持っていきたい物もあるわよね?」


「ミンハ、マイコップ持ってく」


「あら、ミンハは可愛いわね。持って行くといいわ」


「では早速行きましょうか。皆気合いを入れて準備しますわよ」


「了解したにゃん!」


「分かったわ」


「うん」



 俺は何だか泣きそうになった。


 皆、ごめん。俺は心の中で、皆へと謝る。


 確かに話すのは気恥ずかしいし、どう接すればいいかは分からないままだ。だけど、何だろう---- 会ったばかりだけど、仲間として俺を尊重してくれてる気がするし居心地が良い。


 皆で何かしようって押し付けてくる感じもないし、ちゃんと相手に対して気が使えてる。


 俺も少しは皆の為に動かないとな----


 準備をする為に意気揚々と皆が立ち上がったのを見て、俺も気持ちを軽くして立ち上がる。皆がおしゃべりしている背中を見ながら廊下を歩いていくと、サバンナはつまづいたのか急に前のめりになってコケだした。


 短いスカートから真っ白のパンツをチラつかせて転ぶ姿に、俺は驚愕する。


 こんな---- ラッキースケベみたいな事、本当にあるんだな----


 それにしても白か----


「痛いですうぅ! 勇者様見えましたよね?! サバンナ恥ずかしいですぅ」


「い、いや---- 白いパン」


 やべぇ、間違えた!


「あーん! サバンナまたもや一生の不覚ですぅ」


「夕間様、破廉恥ですわ! 女性のパンツを見るなんて酷すぎますわよ」


「まあ、夕間殿は男だもの仕方ないわよね」


「ユーマ、エッチ」


「勇者様ぁ! 忘れて下さいにゃーん!」


 さっき思った俺の気持ちは何だったんだ----


 やっぱりもう嫌だ。憂鬱すぎる。


 これから転ぶ度に俺は怒られるのか? 短いスカートをまずは何とかしろよ!


 ああ、もう本当帰りたい----


 俺の憂鬱な心とは裏腹に、調子を取り戻したサバンナを中心にして準備はどんどん進んでいく。見た事がない野営道具や真新しいテントを、自分の空間収納にやるせない気持ちを前面に出しながら入れていく。


 準備が終わり皆と別れると、肩を落としてオズの元へと向かった。俺の気持ちを分かってくれるのはオズだけだ---- 早くオズに会って話したい。


 オズの弟子らしき人が部屋の近くにいたので声をかけたが不在だと言われてしまった。オズがいないと知った俺は更に気力を失い歩くのも億劫になってくる。


 オズいないのか---- 寝ようかな----


 でも明日出発だし---- 仕方ねえ装備でも準備するか----


 項垂れながらラズロがくれた部屋へ行き、装備の準備に取りかる。最初に見たような興奮はなく、博物館のように見えた部屋は何だか色褪せてしまった。


 背を丸めて武器や防具を拭いている俺は、他の人から見ればきっと寂しい男だろう。


 明日からの旅に微かな懸念を感じながら、俺は武器を抱きしめて溜息を漏らした。








読んで頂き有難う御座います!


次話は魔王討伐に向けて出発します!

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