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6.全員女?!

「夕間様。おはようございます。お迎えにまいりました」


 真面目そうな可愛い王女フローラが、俺の元へ現れた。昨日はオズの優しさに触れて情けなく泣いた後1人で考え込んでしまい寝不足だ。


 フローラと向き合ってはいるが自分の容姿に自信がない俺としては話す事さえ辛く感じてしまう。それにスタイルまで良いんなんて---- 現実世界で関わる事は絶対ないな。


 フローラのような金髪に綺麗な青い瞳の女と、俺は朝から何を話せば良いんだ---- 


 と、取り敢えず挨拶だけでもするしかないよな。挨拶ぐらいなら俺でも出来る筈だ。頑張れ俺! 


「お、お、おはよう。宜しゅく」


 あー! やっちまった! 宜しゅく?!


 聞いた事ねぇ! 恥ずかしすぎる!


「ユーマ、早くいこ」


 気付けば幼女のミンハが俺の近くに立っていて、下から俺の顔を見ている。パッチリとしたまん丸な目と目が合いこんなに出るのかと思う程額から汗が垂れてきた。


 聞いたのか? 聞こえてたよなあ?!


 幼女にも聞かれるなんて、俺はどうしたら良いんだ。宜しゅくだぞ? 誤魔化す事も出来ねえ!


「夕間様。大丈夫ですか? どうかされました?」


 フローラは俺の様子を心配するかのように、前屈みになって話しかけてきた。


 座る俺の目の前で大きい胸が揺れている---- 近くで揺れる胸から目が離せずつい固まってしまった。柔らかそうな胸にくっきりと浮く鎖骨が近くにあるなんて今までそんな経験さえない。


「ユーマ、フローラの胸見てる」


「えっ?!」


 胸元を隠すように後ずさるフローラを見て、慌てて立ち上がった。


「ち、違う!! 見てないしゅ興味ない!」


 あー! また噛んだ、何で俺は噛むんだよ!


 俺の慌てる気持ちとは違いフローラは少し怒っているようだ。胸元を隠しジーっと俺を見つめてくる。赤らむ頬を膨らませて疑っているのかピンクの小さな唇を尖らせたフローラは可愛すぎて怖さなんて全くない。


 何だ? 怒ってるのに可愛いなんてあり得るのか?! 


 取り敢えず笑うか? こういう時あまり言い訳を言うと逆にやばい奴になりそうだ。電車で痴漢だと思われたらとシュミレーターする。黙ってたらそのまま捕まるし、怒って反論するなんて論外だ。違うと否定しつつ余裕な態度を示すのが1番良さそうだな。


 俺は余裕があるフリをする。違うといった手の素振りを見せて否定しようと口を開いたら、ミンハが俺の手を握ってきた。


「早くいこ」


「あ、ああ。フローラ連れてってくれるか?」


「------ 分かりました。私も反応し過ぎましたわ。申し訳ありません。では参りましょう」


 た、助かった? 元をいえば確実にミンハのせいだが、ミンハに助けられたな。幼女なのに振り回してくるとは----


 ミンハのいる方へ顔を向けると、ミンハは俺から思いっきり顔を逸らしたが握られた手は離れないまま。


 ハア---- もう何が何だか分からん。朝から疲れるな。


 こんなのが毎日続くと思うとやはり憂鬱でしかない。男だけの方が気は楽だし慣れているから良いけど、女と一緒に行動するなんて思い出しても運動会の時ぐらいだ。手繋ぎ競争とかしか思い出せない自分を残念に思ってしまい、何だか切なくなってくる。


 もう嫌だ。オズに相談してみよう----


 フローラの後に続きミンハと廊下を歩いていくと、立派な扉の前でフローラが立ち止まった。どうやらこの部屋に集まるらしく、ドアノブを回してフローラが中へと入る。


 他の奴らはどういう奴だろう。今回ばかりは少しだけまともな奴がいて欲しい---- 


 ま、もう女はいないだろうし、残りの奴らに期待するか----


「夕間様。どうぞ中へ」


 フローラの言葉を聞いてドキドキと緊張しながら部屋の中を覗いたが誰の姿も見えず部屋の前で拍子抜けしてしまった。


 あれ? 誰もいない? 


「もうすぐこちらに来ますので、ソファに座ってお待ち下さい。ミンハ案内してあげて?」


「ユーマ、こっち」


 ミンハに手を引かれて、部屋の中央にあるソファへと行き腰を下ろす。柔らかなクッションのソファによしかかると、緊張がとけて一気に脱力した。


 誰もいないとは---- 緊張した時間を返して欲しいくらいだ。


 とりあえず誰でもいいから早く来ないかな。男のパーティーメンバーに会って安心したいし、女だけの空間から早く脱出したい。王女に幼女なんて変な組み合わせだよな---- それにしても---- 


 って、おい! 何で2人は俺の隣に座るんだ?!


 タラタラと汗を流す俺の右にはフローラ、左にはミンハが近い距離で座っている。見るからにまだソファが空いてるのに隣に座って来るなんて一種の嫌がらせとしか思えない。2人は俺が女と話すのが苦手だと分かっていてわざとしてきているのか?


 ミンハの距離の近さにも引くが、フローラからは何だか良い匂いがしてくる。花のような良い匂いに胸がドキッとした。


 良い匂い?! なんの匂いなんだ---- いやっ違う。そうじゃない。


 ああー、これはもう耐えられん。


 頭を抱えて自分がソファを移動するべきかぐるぐると考えていると、扉をノックする音が聞こえてきた。助けがきたかの様なノックの音は今の俺にとって有難い。


 誰だ? パーティーメンバーか?


 フローラがソファに座ったまま入室を許可すると、扉が開かれ隙間から獣耳が見えた。


 な、何だ? 獣人?! 


 獣人だろうが何だろうが男であれば良いんだ---- 頼む早く入ってきてくれ。


 獣耳に続いて尻尾は見えるのに、扉の外にいる獣人は中々部屋へは入ってこない。扉の向こうからヒソヒソと話し声が聞こえてきて、何やら残りのメンバーと話しているようだ。


 -------- 何で入って来ないんだ?


 俺は苛ついてきてソファから立ち上がると、大股で部屋の扉まで行きドアノブを掴んで思いっきり扉を引いた。


「わっ、わわ! 勇者様?! あーんサバンナ一生の不覚ですぅ。きちんと挨拶しようと思ったのにぃ」


 ------ ハア?!


 何だこの猫耳少女は?! 緩く巻いた赤い髪から耳が見え元気っ子キャラのような見た目に驚く。話し方も変だしどうなってるんだ?!


「サバンナ、だから早く入りなさいと言ったでしょう? 夕間殿申し訳ありません。失礼致しました」


 いきなり色気ある騎士のお姉様が猫娘の後ろから出てきて、俺に頭を下げた。


 なっ、美女?! しかも色気ありすぎるだろ。口下のホクロなんか似合いすぎだし、ストレートの銀髪はサラサラとしている。


「サバンナ、レーリア遅かったですわね。夕間様、紹介致します。こちらの騎士がレリーア、こちらがサバンナですわ」


「勇者様ー、挨拶がきちんと出来ずぅすみません。わたし案内役兼サポートのサバンナですぅ。宜しくお願いしますにゃん」


「私は第一騎士団団長のレーリア。夕間殿と一緒に魔王討伐へ行けるなんて騎士として光栄よ。どうぞ私を使って下さいね」


 やばい。やばい。


 こんなハーレム小説みたいな展開なんて今まであったか? いや、まだパーティーメンバーはいるかもしれない。このままだと俺、魔王倒しに行ける自信ない---- 


 落ち着け---- 俺よ落ち着くんだ。気をしっかり持て。

 猫耳娘と色気ある美女から目を離しフローラへと目線を向ける。


「------ フローラ、パーティーに男はいないのか?」


 フローラはソファに座ったまま首を傾げて、片頬に手を添えて微笑みだした。


「あら、皆女性ですわよ。お父様から聞きませんでした?」


 ----- 


 ------ ああもう嫌だ。


 俺が何したと言うんだ。色々とおかし過ぎるだろ。彼女なんていた事もないが、求めてもいねぇ。


 あー何なんだ今回の召喚は? 王女と幼女の次は、猫耳娘に、お色気美女騎士ぃ?!


 体が崩れ落ち床に膝をつけながら俺は叫んだ。


「こ、こんな---- ご都合主義があってたまるかあー!!」


 俺の心からの叫びは部屋に響き渡り、皆の目を丸くさせた。






読んで頂き有難う御座います!

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