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5.オズの優しさ

 

 ああ、俺はどうすれば良いんだ。


 女とまともに話せる気がしない。こんな時クラスの奴らはなんて言ってたっけ---- 


 やばい、記憶がない。そりゃあそうだよな。俺友達いないし。


 あー誰か教えてくれ! 俺は何を話せば良いんだ----- 幼女ならまだしも、可愛い王女だぞ?! 


 何で10回目にして、女がいるパーティーなんだ?!


 これは俺への新たな試練なのか? 


「夕間殿。放心(ぼんやり)しとるとこ申し訳ないが話しをしてもいいかのう?」


「あ、ああ。大丈夫---- でも無いけど、何だ?」


 やばい。考え過ぎてた。


 また魔王の話か? あのドヤ顔はマジ腹立ったな。


「明日の準備じゃが、夕間殿が作ってきた装備やら武器をまとめといた、今回も使うかのう?」


「マジ?! 流石オズだわ、やっぱりオズは俺のこと分かってるよなー。それで? 何処にあるんだ?」


「ほっほ。陛下が部屋を下さってのう。1室にまとめてあるぞ」


「ラズロが部屋をくれたのか?! ラズロ良いとこあるじゃねえか!」


「夕間。私を何だと思っているのだ---- ハァ。オズ案内してやれ」


「ほっ。夕間殿も早く見たいじゃろうて。早速行くかのう」


「行く行く! ラズロ有難うな! オズ連れて行ってくれ!」


 何故か落ち込むラズロと別れ、豪華な石畳の廊下をオズの歩幅に合わせて歩く。歩き慣れた場所ではあるが、王が変わる度に装飾品や内装が変わる為、キョロキョロと周りを見廻す。


 お、ラズロの肖像画じゃねえか。


 プッ---- ププ--。 これカッコつけ補正が半端じゃねえ。


 ラズロは自分で気付いてないのか?! やばい、面白すぎる。


「夕間殿。歩くのが遅くてすまんのう」


「プッ---- い、いや。大丈夫。オズは本当お爺ちゃんになったなー。背なんか曲がってるし、全然前と違うな」


「ほっほ。夕間殿に会った時はまだ現役だったしのう」


 オズは今でこそお爺ちゃんだが、元は強面のマッチョで背も高い。


 魔法師でマッチョって意味あんのか? と思っていたが、オズの戦闘スタイルは普通の魔法師とまるで違った。


 風や火の魔法を杖に纏わせて、そのまま魔物を叩き倒す。後ろから攻撃を仕掛けると思いきや、前に飛び出していくので良い意味で裏切られた。


 身体強化の魔法は俺よりも工夫していたし、ラズロは剣士として同行していたが、ラズロよりも早いスピードでどんどん魔物を倒していく。


 俺のスピードについてこれたのもオズくらいだったし、考えを読んで動いてくれるから合図とかも必要ない。


 9回召喚された中で、オズと共に戦うのが一番面白かった。


「夕間殿、ここじゃ。この扉の横に青い石があるじゃろ。夕間殿の魔力を、この石に流せば開くようにしてある。ほれ、やってみたら良い」


「俺の魔力? 俺しか開けられないのか?」


「ほっ。ワシも開けれるが、夕間殿が次来る頃にはワシはもうこの世にいないと思っとったからのう」


「オズ---- 分かった。やってみるよ」


 青い石に手を翳して目を閉じる。


 久しぶりに感じる魔力に、身体がむず痒くなりながらも魔力を循環させていく。青い石へ翳した手に魔力を集めて少しずつ放出していった。


 薄ら目を開けて、石の様子を確認すれば青い石が赤くなっていく。色が赤へと完全に変わると、カチャッと扉の開く音がした。


 早る気持ちそのままに扉を開けると、大量の装備や魔道具が綺麗に並べられている。


 まるで博物館のような光景に、テンションが一気に上がった。


「おおー! オズ! 昔のまであるじゃねえか! この胸当てなんて最初に作ったやつじゃん! 懐かしいなあ、どこにあったんだ?」


「それは倉庫にあったのう。夕間殿が作ったであろう物は集めておいた」


「やっぱりオズは最高だよ! いつも一から作り直しだったから面倒くさくてさあ、これなら手直しだけで十分だ。ぉお! このナックル武器まだあったんだ! めちゃくちゃ嬉しいよ! この素材集めにくいし、仕上げも難しかったんだわ。やべぇ、今回は楽できそうだ」



「ほっほ。夕間殿なら喜ぶと思っとった。これからはここに保存しておくからのう」


「わー、一気にテンション下がったわ。まだ俺召喚されるの? もう勘弁してくれないかなー、流石に疲れたわ」


「夕間殿の名前は縛られとるからのう-----」


「そう---- だよなあ。名前を言った俺が馬鹿だったわ、あーあの時に戻れねえかな」


「まあ落ち込むでない。夕間殿が旅している間にワシが方法を探しておこう。それでどうじゃ?」


「オ、オズ---- 良いのか?」


「夕間殿は、この国を何度も救ってくれたからのう。ワシからのお礼じゃ」


「オズ-----」


 オズはいつでも俺に優しい。


 この世界では勝手に俺を召喚するくせに、感謝も謝りもせず物のように扱う奴らばかり。


 使い捨てのように無茶な命令をされたり、横暴な態度を取られるなんて当たり前だ。


 中にはラズロや、最初のパーティーメンバーの様に良い奴もいたが、そんなのほんの一部だけ。


 召喚される度に良いように使われて、俺は正直辛かった。


 俺はレンタルされるDVDじゃない。ちゃんと生きて心だってあるんだ。


 そう思い始めると、暗い穴の出現が怖くなっていく。


 3、4ヶ月に一度、急に穴に落ちる俺の気持ちにもなって欲しい。


 もう直ぐ落ちる時期かと、携帯の日付を見ては落ち込む様になり、ゲームやアニメに集中していてもふと思い出してしまう。


 最初の召喚から、約4年半だぞ? そんな続くなんて思うわけないだろ。


 俺に生きてる価値なんかない、そんなの自分が一番良く分かってる。でも普通に生活して、自由に生きる事を望んでもいい筈だろ。


 こんな生き方、もう嫌だし面倒くさいし辛い。


 オズの顔を見れば、似てないのに何故かジジィの顔と重なる。



 オズは俺にとって、珍しく大事にしたい存在だ。


 魔法陣に縛られた名前がなければ、もうここに来る事はない。でも---- オズに会う機会(チャンス)もなくなるのか----



 俺は抑えきれず、優しいオズの言葉に涙を流した。






読んで頂き有難う御座います。


次の話で女の子達が集合します!


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