2.俺は空閑夕間
「あー、だるい」
学校の帰り道、友達もいない俺はゲームセンターに立ち寄った。
今まさに格ゲーをしてる最中なのだが全くつまらない。
俺より強い奴はいないのか? 今日も弱い奴ばっかりだ。
俺の人生には色がない。白と黒しか感じない世界に生き、ため息ばかりが漏れ出す。
何をしても直ぐ理解出来るし、勉強だって一度聞けば頭に入る。
ゲームを始めた最初の頃は、少しだけ色がついたように感じたが今見てる画面に色はもうない。
このまま生きてて楽しい事あるのか? そんなご都合主義はこの世界にはないな。
やれやれ、相手ももういないようだ。
俺に挑戦するような面白い奴は、いないか。
------ 大人しく家に帰ってアップデートしたゲームでもやるか。
昨日から開始されたイベントは豊穣祭り。
名前の通りモンスターを倒すと、金貨やアイテムが沢山出るらしい。
レベルをカンストして、装備を最強にしている俺には関係ないが、豊穣祭り限定のクエストがあるとsnsに書かれていた。
しょうがない。どこかのパーティーに臨時で入るか。
ソロで遊ぶ俺としては、パーティーが嫌いだ。
自分勝手に攻撃して、自分勝手に死んでいく奴ばかり。少しは連携しろよって言いたいが、相手の声を聞くのも嫌でチャット機能をオフしている。
俺は直接はもちろん、画面越しでさえも人と関わるのが嫌だ。
特に会話。
何の意味がある? 馬鹿な話についてくのも疲れるし、愛想を振りまく理由が分からない。
空閑家は旧華族の家柄で、父や母とも近くない距離で育った。
俺の周りにいるのは、能面のような使用人ばかり。
顔がない使用人達の名前を覚える気はないし、一人でいる事が当たり前。食事だって一人で食べる。
そんな中、唯一俺に笑いかけてくれたのは、武道を教えてくれたジジィであり師匠。
いきなり部屋に来て、首根っこ掴まれた時は流石に驚いたな。
もうヨボヨボだったジジィが、俺が12歳の時死んだ。初めて涙が出て、胸が苦しかった。
まあ、俺も若かったな。あれから泣いてないし、泣く事もないか。
ジジィ以外、俺の人生に交わる人間はいない。
そしてこれからもいらない。
生きるって面倒くさい事だからけだなと、空を見ながら歩いているといきなり身体が急降下した。
穴なんてあの辺に開いてたか? と、顎に手を当てて考る。
周りを見ても真っ黒な光景。
そしてどこまで落ちるんだ?---- 怖さもなく冷静に俺は思った。
衝撃がないまま、足裏に地面が当たる。一度バウンドして再び地面を感じると、目に強い光が入り込んできた。
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