勇者召喚
絢爛な玉座の間にて、厳粛な空気が流れ出す。
人々は玉座の間の中央を囲みながら、各々の思惑を隠し静静と立って一ヶ所を見つめる。
大理石に浮かび上がる魔法陣だけが光り輝き、異様な光景に目を奪われていると、白髭を蓄えた威厳なる我が王が始まりを告げた。
「勇者召喚の儀を始める! オズよ頼んだぞ、我国の為に」
「ほ、始めるとするかのう」
静寂の中、背を丸めた老魔法師の足音だけが響き、魔法陣が放つ光は強さを増していく。
老魔法師は魔法陣の前で立ち止まると、大理石に立派な木の杖を突き刺し、両手を大きく広げ呪文を唱えだす。
「勇者よ! 我が国を救えぇ! 時の狭間に隠れし神聖なるものよ…… 幾千もの欠けらを今ここに、召喚!」
魔法陣から眩い光が放たれ、一人を除いてその場にいる人々は皆目を伏せた。
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「あー、折角ラスボス倒してたのに酷くねーか?」
「夕間よ、息災であったか」
「あぁ? んー、お、お前----- もしかしてラズロか? 老けたなー」
「なっ、無礼であるぞ!」
「まあ良い、騎士よ案ずるな。夕間は相かわらずな奴だな、元気そうで何より」
「勘弁してくれよ。ラスボスだぞ? 折角幻のエンディングまでもう少しだったのに、呼ぶタイミング考えてくれよなー。本当参ったわ」
「タイミングとやらはすまなかった。前回よりは良いであろう、裸よりはマシではないか。我国も含めてまた世界が大変でな。力を貸して欲しいのだ」
「風呂入ってたの! あー、それで? あれから何年だ?」
「あれから50年だ。以前倒した魔王がどうやら復活した様でな。また魔物が溢れ出したのだ」
「50年? てかそしたらラズロ68か? そりゃあそんな老けるわけだ、髭なんて真っ白だもんな。まあ知ってる顔がいて良かったわ、いつも知らない奴らばっかりで、めちゃくちゃ面倒臭かったからな。それにしても魔王早くねえか? 前回は確か200年は経ってたよな?」
「夕間殿、それについてはワシから話そうかのう」
「ん? お前誰だ?」
「ワシじゃよ、オズじゃ、忘れたかのう?」
「おぉー、オズ! お爺ちゃんじゃねえか! こりゃ傑作だな」
「ほ、ほ、ワシももう78じゃ。夕間殿は相からずお若いのう」
「そりゃあ、俺は歳を取ってないからな。オズも生きてたかぁー今までで一番嬉しいわ。オズだけだよ俺の事理解してくれんの」
「私の前でそれを言うか……まあいい。夕間、今回もオズが召喚してくれたのだ。他にも積もる話はあるし、私の部屋で話すとしよう…… 皆の者! 勇者は無事召喚された! この世界を救うのはここにいる空閑夕間! 我らの勇者である! 夕間が立ち上がる時、闇が広がる世界に光が差し込むだろう。期待するが良い!」
割れんばかりの歓声と足踏みで、絢爛な玉座が震える。
人々の喜び溢れる顔を眺めて、盛大に溜息を吐いた。
「あー、またか」
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