一汁一切
枕元夢の足跡錯落と
散乱させた無為の細動
緑屋根腰を下ろした静寂に
さえずり届くこのしたの陰
味噌汁で一つのわだかまりが昇華されていく。
凝り固まった不安は湯気と共に部屋の隅の多肉植物が食べてしまったようだ。
急ぎ疲れた体を椅子に沈ませ空虚に冴えた目を動かすと、積み上げられた妄想の存在を思い出す。
目を瞑るべきだと気づいてはいるが、気になってしまった魅惑から逃れるのは難しそうだ。
手に取るべきではないという体と、求め始めた脳。
昼夜逆転するかのように連動しない体と脳。
鞭で打たれて本当に痛むのは脳。
疑似体験で本当に疲れるのは体。
足踏みを揃えて消化する事が出来るのであれば何て素晴らしい事なのだろうか。
それを自然に持ち合わせていた事があったではないか。
抑えきれず近道を駆け回っていたではないか。
理性整然と採寸の違う羞らいを纏っているではないか。
半袖半ズボンに縫い付けた大人の手足を操縦桿でばたつかせていると寝る時間だと怒られる事がなくなってしまった。
味噌汁の底をすくったら上澄みは濁っていった。