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第三話 報情装太

 オレの名前は報情装太(ほうじょうそうた)。今はとある異能者を管理する学園に通っている。それは何故か。オレもまた異能に覚醒した能力者だからだ。


 能力に目覚めたきっかけは勿論オレにもある。それは中学生時代のことだった。オレには当時好きな女の子がいた。今のオレならまだしも、中学生時代のオレはかなりの恥ずかしがり屋であった。他の女子とは普通に接することは出来てもその好きな女の子の前だとまともに話せなくなってしまうのである。


 そんな日々が続き、その女の子と接する機会はどんどん減っていった。それから時が経ち、そのことに焦りを感じ始めたオレはどうすればこの現状を打開できるのかを考え始めた。だがしかし、考えれば考えるほど答えは何も出ず、今から思えばとても無意味な日々を送っていた。


 更に時が経ったある日、一つの転機が訪れた。それは友達の家でやったゲームがヒントとなった。そのゲームはギャルゲーだ。オレはこれまでゲームというものは全くしたことがなかった。このギャルゲーは女の子との接し方をシミュレーション出来るだけではなく、色々と勉強になるというまさに当時のオレにとって神ゲーであった。


 友人が一通りのプレイを終えると、オレに最初からやってみるかと聞いてきた。これは神がオレに与えてくれたヒントなのではないか。当時のオレは深く神に感謝を捧げながら生まれ初めてのゲーム、それもギャルゲーをプレイし始めた。


「君の名前を入力してね☆」


 ゲームから発せられる音声に従い、オレは自分の分身となるキャラの設定を終えていく。始まるギャルゲー。プロローグを読み終え、いざストーリーが始まり出したその時、オレはある意味運命の出会いをした。それは主人公である俺の分身の親友キャラだった。


「よう! せっかく同じクラスで隣の席になったんだ! これから仲良くやっていこうぜ!」


 初めてこのキャラを見た時は何なんだこの馴れ馴れしい奴は……オレが今気になるのは女の子だけなんだ。野郎は早くどこかへ行けと思っていた。だが次の瞬間にオレはこいつの存在を深く記憶に刻みつけることになる。


「あ、そうそう! 入学して早々だが、お前気になる女の子はいるか?」


 女の子のことしか気になってないっつーの!


「いるならその女の子の情報提供するぜ? 可愛い女の子の情報集めは俺に任せな!」


 オレはこの言葉に衝撃を受けた。そう、オレに足りないものがこの瞬間に理解できたのだ。それは情報だ。予め好きな女の子の情報がわかれば今よりは話せるはずなのではないだろうか。そしてもう一つ足りないものはこの情報提供をしてくれる主人公の親友である。このことに気付いたオレはその日はひたすらギャルゲーをやり込んだ。友人がまだ攻略していない女の子を攻略し、ネタバレをするほどまでに。


 ゲームからヒントを得た翌日。オレは早速行動することにした。まずは情報だ。オレは女の子の情報を持っている友人を探した。それはもう必死に。だが残念なことに誰もまともな情報を持っている者はいなかった……


 半ば諦めかけていたオレはあることを思い付く。それは自分自身がその親友と主人公の役割になればいい。そうすれば一々好感度を親友に確認する必要はないし一石二鳥なのではないだろうか。そう思ったオレは自ら行動をしようと決意する。


 オレが自分自身で情報を集めるようになってから数日後に新たな転機が現れる。そして、その日がオレの異能が覚醒し能力者となった日となったのだ。


 移動教室が多い日だった。その日は偶然、オレは遅刻で遅れて学校に登校をしていた。自分の教室に着くとその時は理科の実験による理科室への移動教室で誰もいなかった。自分の机に荷物を置いたオレも合流しようと移動しようとしたところ、好きな女の子の鞄から体操服が少しハミ出していたことに気づいてしまった。それを見たオレは情報を知りたいという気持ちからブルマを手に取ってしまった。そして気づいた時には手遅れだった。オレは何を考えていたのか、好きな女の子のブルマを頭に被ってしまっていた。オレの異能が覚醒したのはまさにその瞬間だった。


 オレの能力は対象が身につけた衣服などを自分が身につける事でその持ち主の情報を抜き出す能力だった。好きな女の子のブルマを頭に被ることでその女の子の情報を得ることに成功した。そしてその情報の中身は……


「報情くんって何かキモくない? 最近特に怪しい感じだし」


 オレは泣いた。心の底から泣いた。そのまま学校から泣きながら帰った。泣きながら頭にブルマを被りながら走って帰った。


 その後は能力の覚醒により、すぐにこの学園の中等部に転校した。それがオレのこの学園に通うようになったきっかけだった。


 オレはギャルゲーの主人公のようにはなれなかった。それなら主人公の親友ポジションとして主人公となる誰かのために情報を提供しよう。そう思うと不思議と気持ちが楽になった。それからは特に気になる女の子と接しても緊張しなくなった。人は何かをきっかけに変われるものなのだろう……そう思い、オレは今日も誰かに情報を提供する。




◆◆◆


報情装太(ほうじょうそうた)

対象の情報を抜き取る能力。能力の発動条件は対象が身につけた衣服などを自身が着用すること。特に下着を頭に被ると良い情報を抜き取りやすくなる。

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