表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/63

第二十七話 ボディーガード?

あけましておめでとうございます。

本年もよろしくお願いいたします。

いつもより少し遅めの更新になってしまいましたが、お楽しいいただければ幸いです。

ではでは。

「それで、変質者の正体はまだわからないの?」

 翌日の放課後、何の気なしに天文地学部に顔を出した私はその場で由里子につかまり、なぜか部外者のぬりかべ先輩まで参加しての尋問になった。

「うん。一応警察も付近の見回りを強化するとは言ってくれたんだけど、直接危害を加えられたわけじゃないし…」

「え、だって追っかけられて車にひかれたんでしょ?」

「ひかれたというか、私が勝手にぶつかっただけというか…」

「何言ってんの!」

 憤慨した由里子は、歯切れ悪く答える私をさらに問い詰める。

「追いかけられなければ車にぶつかることもなかったでしょ?」

「確かにそうなんだけどねー。今のところ事故原因は私の飛び出しとワゴン車の前方不注意ってことになってる。不審者は私以外誰も見てないから」

「何よそれーっ!」

 由里子のボルテージはさらに上昇する。さすがに見かねたぬりかべ先輩が叫ぶ彼女の肩を押さえつけて椅子に座らせると、代わりに身を乗り出してきた。

「それでその、事故の目撃者とやらは不審者の姿を見なかったのか?」

「それが、目の前であんまり衝撃的な出来事が起きたので周りに気を遣う余裕がなかったそうで…」

「まあ、それが普通の反応か。しかし君には申し訳ないことをしたな」

「本当ですよ!」

 憤慨する私を放置してぬりかべ先輩はそのまま顎をつまんで考え込む。一方、由里子が再び立ち上がって私をびしりと指さす。

「とにかくナツ、進展があるまで単独での登下校は禁止!」

「ちょ、ちょっと待って。禁止って言ったってどうすんの? 走はいないわけだし」

「ちょうど私にボディーガードの心当たりがあるわ。トモヒロ!」

 と、部室の隅で知らない顔を決め込んでいた部長にいきなり声をかける。

「あなた、今日からナツを護衛しなさい。登下校はもちろん、外出時にもつきあうこと、いいわね!」

「いやいや、それはさすがにトモヒロに申し訳ない…」

「いいよ、やる!」

「えっ!」

 てっきり断ると思っていた究極の面倒くさがり(トモヒロ)が思いがけずやる気を見せたせいで、私の反論は中途半端のまま、結局その日の下校から共に行動するように申し渡されてしまった。

(ああ、面倒くさいなー)

 そうは思ったもののすぐにはうまい断り文句も思いつかない。なし崩しにその日はトモヒロと肩を並べて部室を出ることになってしまった。

 別にトモヒロを嫌ってるわけではない。考えてみれば彼とも小学校以来の長い付き合いで、走を別にすれば最も気心の知れた男子と言えるかも知れない。ただ、走とそれ以外との格差があまりにも大きすぎて、これまで特に意識すらしたことがないというのが正直なところ。

「トモヒロも災難だよね。無理につきあわせてごめんねー」

「いや、俺は別に嫌じゃない」

 軽い調子で愚痴ったところを彼らしくないきっぱりとした口調で断言され、話の接ぎ穂をあっさり失ってコミュニケーションに困る。

「…あ、ありがと」

 そのまま会話は途絶えたまま、二人ともただ黙々と歩く。トモヒロも特にそれ以上話しかけては来ず、結局最後まで無言のまますぐにガッティーナに到着してしまった。

「あの、ここ、私のバイト先」

「へえ…」

 紹介されて明らかにトモヒロは困惑している様子。ぱっと見外見上は一般住宅と何ら区別も付かず、軒下に掲げられたイタリア国旗と控えめな看板がなければしゃれた注文住宅と言われてなんの不思議もない。

「で、バイトの帰りはどうするの?」

 聞かれて悩む。今の所、私がここに身を寄せているのはセキュリティの都合上、一部の関係者以外には部外秘ということになっている。警察からも出来れば当分は新しい住居は公表しないように言われているし。それに、よく考えてみれば朝はどうしようか。まさかここに直接迎えに来てもらうわけにもいかないし。

 自他共に認める適当アバウトな性格のトモヒロがどの程度秘密を守りきれるかもまだ判らない…。由里子らしくもない、穴だらけの警備計画に内心頭を抱える。どうしてここでいきなりトモヒロの起用なんだろうと少し不思議にも思う。

 とりあえず、後でシェフや真弓先生と相談することにして、今日はここでお引き取り願うか…。

「あのさ、帰りは遅くなるから店の人に車で送ってもらう。だから送ってもらわなくても大丈夫」

「店の人って…男か?」

 ところが、表情を強ばらせ、変なところに食いついてくるトモヒロ。

「違うよー。この店のオーナーシェフ。真弓先生と同い年の女の人」

「そっか」

 あからさまにホッとしつつ、ちょっとだけ残念そうな表情の彼をそのまま追い返すのもなんだかしのびなく、「もしよかったらちょっと休んでいく?」と誘ってみるとぶんぶんと首を縦に振る。

「じゃあ、ちょっと待ってて」

 一応許可が必要なのでと言い訳して先に入り、営業中の札を出そうとしていたシェフを捕まえてこれこれこうと耳打ちをする。

「あー、なるほど、ナツとしてはあんまり気乗りしていない男子な訳ね」

「いや、そういうじゃないんですけど、今までほとんど無視だったのに突然間合いを詰めてこられて戸惑っているというか…」

「…なるほど。ということは、お姉さんの勘ではそんなに遠くないうちにちょっとしたイベントがありそうね」

「え?」

 なんだかとっても楽しそうに意味不明なセリフを発すると、

「んー、まあいいわ、見極めてあげるから早速連れてらっしゃい」

「だからそんなのじゃないんですって」

「まあいいからいいから」

 そのまま問答無用で背中を押されて扉から押し出される。


「あー、えっと、どうぞ」

「おう」

 突然ノープランで本人の前に立たされて戸惑う私。でも、それ以上にトモヒロの挙動は不審だった。

 慌てて両方の手のひらを太ももにこすりつけると、右手と右足が一緒に出るロボット的な動きでギクシャクと店の中に入ってくる。

「いらっしゃい、どこでも好きなところに座ってちょうだい」

 シェフににこやかに迎えられ、突っ立ったままぼーっとシェフの顔を見つめていたり。

「あら、私の顔に何かついてる?」

「あ、いえ、その…」

 そのまま赤面して黙り込むと、すぐそばにあったカウンターの椅子に電池が切れたようにストンと座り込んだ。

 シェフはすぐに彼の前によく冷えたブラッドオレンジジュースを出すと、相変わらずにっこり笑いながら言う。

「どうぞ召し上がれ。開店準備があるからあまりお構いも出来ないけど、ゆっくりしていっていいからね」

 コクコクと機械のように頷くトモヒロを確認して、私も更衣室に下がる。ディナーの営業がもう始まるのだ。あんまりのんびりもしていられない。ささっとユニフォームに着替え、頬の傷跡はいつもより少し濃いめのチークでごまかしてフロアに出る。と、ちょうどそれを見計らったように最初のお客さんが来店された。

「はーい、いらっしゃいませ!」

 これまで見えたことのない新顔さんだ。テーブルに案内して大ぶりのグラスに入れた冷たいミネラルウォーターを出し、請われるまま丁寧にメニューを説明した所無事にオーダーが入る。と思うとすぐに次のお客さんだ。慌ただしくメニューを揃え、できあがった料理を出し…と、息つく間もなくくるくると動き回ること一時間あまり。気がつくといつの間にかトモヒロの姿は消えていた。

「あれ、シェフ、トモヒロは?」

「もう帰ったわよ。ジュースごちそうさまですって」

「あー、なんだ、悪いことしちゃったな。一言くらい言ってくれたらよかったのに」

 ぶつくさ言う私をおかしそうに見つめた後、シェフは私にさあもうひと頑張りと活を入れ、厨房に戻っていった。


 結局その日は不思議に客足が途絶えることなく、ようやく一息ついたのはオーダーストップも間もなくという時間だった。

「やー、なんだろう今日は。忙しいですよね?」

「ナツの復帰初日だからじゃない?」

「いや、まさかそんな」

 答えながらも、確かに今日は常連さんに話しかけられる回数がいつもより多かったなあと思う。

 「お、久しぶり」とか「どこか旅行でも行ってたの?」といった軽い問いかけばかりだったけど。

 そこに月に一、二度来店されるスーツ姿の男性二人組が来店。

 確か近所の大学の教授だか准教授だかという話しを前にチラリと聞いた気がする。もうオーダーストップの時間だったので念のためシェフと目線を合わせ、OKサインをもらったのでメニューを持って行く。

「すいません。間もなくオーダーストップになりますがよろしいでしょうか?」

「ああ、本日のディナーセット、まだいけるかな? あとワインリストを」

「はい。ディナーセットお二人様。本日のメインはポークですが、味付け的にシェフは赤をおすすめしてます。リストはこちらに…」

 正直ワインの味は未成年なので説明のしようがない。ただ、そもそもうち(ガッティーナ)は庶民的なお店だし、私にそこまで無茶振りしてくる常連さんは今のところほとんどいないので助かっている。

 ところが、二人組のうち年かさの方が今日に限って妙にチラチラと私の顔を凝視してくる。なんだろう。

 途中気になって鏡を覗きに行くと、チークで隠していたはずの傷跡がほんのうっすら、ピンク色の筋になって浮き出している。

 自分でも気にして見ない限り判らない、ほんのわずかな傷跡だけど、やっぱりヤバかっただろうか?

 そんなことを考えながらちょっとだけビクビクしながら料理をセットし終わったところで、いきなり真顔で呼び止められる。

「きみ、ちょっと…」

「はい、何か?」

 心臓がドキンと跳ねた。なにか粗相があっただろうか? 

 でも、シェフが厨房から見守っているのに気付いて少しだけ落ち着き。

「きみ、ロケットガール、だよね?」

 いきなり問われ、私は驚きのあまりトレイを取り落とした。


---To be continued---

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ