8
食事を終えて店を出た。会計を当たり前のように彼が払おうとしたから、抗議したら朝食のお礼と言われてしまった。言いあいをしてもしょうがないので、ここは引くことにした。
次に先にドラッグストアに案内した。彼は日用品を買っていた。次にスーパー。ここで彼は日持ちがするものを買っていた。パスタとか缶詰とかの保存食が多かった。私は野菜など家に無い食材を中心に購入した。
部屋に戻って買ってきたものを片付けると、鍵を持って部屋を出た。彼の部屋のチャイムを鳴らして暫し待つ。ドアを開けた彼が驚いていた。
「片付けを手伝おうかと思って」
そう言ってニコリと笑ったら、彼はまた頬を染めて部屋の中に入れてくれた。リビングに通されて、彼も片付けていたようで、段ボールが移動していた。
「私が段ボールから中の物を出すから、それを仕舞ってくれる?」
私の提案に彼は頷いた。手を動かしながら、疑問に思ったことを聞いてみた。
「ねえ、水曜日に引っ越してきたのなら、次の日に片付けが出来たんじゃないの」
「・・・木曜日は役所に手続きに行ったり、あちこちに挨拶に行っていたら片付ける時間が無くなったんだ」
「挨拶って、こちらに知り合いでもいるの」
「まあ・・・そうだな」
少し歯切れが悪い言い方に、この話題は流すことにした。
「それで、昨夜は何で私を捕まえたの?」
また聞かれると思っていなかったのか、彼は一瞬動きを止めた。その後、少し頬を染めた後、軽く息を吐きだしてから言った。
「その、眼鏡を飛ばした時に見た、間宮さんの瞳が綺麗で・・・キスしたいと思ったんです」
ほうほう。・・・つまりあの時、目を見開いて私を見たのは、あそこで一目惚れしたということか。・・・ふっふっふっ、勝った!私の方が先に惚れたし!
・・・って別に勝負しているわけじゃないんだから。
「それじゃあなんでキスしなかったの?」
私がそう言ったら、彼はますます顔を赤くした。
「えーと・・・それは・・・眠気に負けたというか・・・その・・・」
またまた歯切れの悪い言い方に軽く首を傾けて彼を見ていたら、彼は動きを止めた後、顔を手で覆ってしまった。なんで?
心の葛藤を乗り越えたのか顔から手を離して彼は私のことを見つめてきた。まだ顔は赤いけど・・・。
「ま、間宮さんからいい匂いがして、眠気を誘発されたんです」
・・・お~い、その顔反則!そんな潤んだ瞳で見つめないでよ。顔も真っ赤だし。どんだけ私の萌えポイントを衝くのよ、この人は!
だから心の声が漏れても仕方ないよね。
「かわいい~♡」
そう言われた彼は一瞬キョトンとした後、次第に血の気が引いていった。・・・なんで?
「あの・・・間宮さんは気持ち悪くないのですか、僕の事?」
おいおい・・・今度は僕ですか。もう、どんだけ萌えさせるのよ。僕って言ったことに気がついてハッと口を押えたところが、またカワイイじゃないか~!
「どうして?私はそのかわいい所に一目惚れしたんだけど」
・・・あれ?なんで絶句!って、顔をしているの?変なことをいったかしら?
また首を傾げたら、少し離れたところに居た彼が立ちあがって私のそばにきて、座り直した。
「間宮さん、本当のことを言ってください。見た目に反して優柔不断な僕のこと、気持ち悪いですよね」
「全然。私はそのギャップにやられたけど」
そう言ったら彼に両手を握られた。
「本当ですか?」
必死な様子でそう言ったけど、声はなんか弱々しい。あーもう、なんでこんなに可愛いのよ!
私は軽く腰を浮かすと彼に顔を近づけて、彼の唇にそっと唇を重ねた。すぐに離れたけど、彼は信じられないものを見るように私を見つめている。私の手を放して自分の唇に手を持って行く姿がかわいい。
って、頬を赤く染めないでよ。そんなカワイイ反応されたら、襲っちゃうぞ(笑)