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ゴンといういい音に私の方が焦った。


「ちょっと」

「アタタタタ。ちょっと勢いよく頭を下げ過ぎたな」


顔を上げた彼の額は赤くなっていた。


「何をやっているのよ」


私はそういうと洗面所に行ってタオルを濡らして戻って彼に渡した。


「またまたすみません」


小さくなる彼に呆れた視線を向けた。私の視線にますます小さくなる姿がかわいくて、クスッと笑ってしまったの。私の笑い声が聞こえたのか、彼が私のことを見てきた。


「その、怒ってない・・・とか?」


恐る恐るという感じに言う様子がまた、可愛く見える。何だろう。これがギャップなのかしら?・・・あれ?なんでギャップなんて思ったのだろう。


では、なくて。


「怒ってはいませんけど、呆れています。それにいろいろ説明して欲しいんですけど」

「はあ~、そうですよね」


眉尻を下げた彼の姿に、ヘタレワンコの姿が重なる。・・・カワイイ。

・・・いかんいかん。そんなことを考えている場合じゃないな。


「えーと、どこからお話ししましょうか」


そういう彼に私はいろいろ質問をしたのだった。


話を要約すると、彼、上野さんは水曜日に引っ越してきたそうだ。急な転勤の辞令で急いだ結果が週の半ばということになったということだ。それに本当なら昨日の金曜まで有休を入れていたのに、急遽会社に呼び出されて仕事をする破目になったとか。夜は大学時代の友人と、もともと会う約束をしていて飲んだそうだ。


だけど、急な引継ぎなどのオーバーワークがたたったのか、あまり飲まない内に眠気に負けて帰ってきたそうだが、部屋にたどりついたものの鍵が合わずに困ってしまい、ドアの前で座りこんでしまった。


それで帰ってきた私との会話で、部屋を間違えたことが分かり、自分の部屋に戻ろうとしたけどふらついて・・・。

あとは、私が彼を部屋に送ったあの話になるらしい。


でも、納得できないことがあった。なので、それを訊いてみることにした。


「なぜ、私の部屋の前にいたのかは分かりましたけど、部屋に入った所で私を捕まえたのはなぜですか」


そう言ったら彼がまた顔を赤くした。モゴモゴと口を動かしたけど、言葉になっていない。結局、はっきりと言葉にならないまま、彼は口を噤んでしまった。


私は息を吐き出すと違うことを尋ねた。


「あと、上野さんは彼女っているんですか」

「いませんけど。・・・って、えっ?」


彼はすごく驚いた顔をした。まあね、何の脈絡もなく訊かれたら吃驚するよね。


「では、好きな人っていますか」

「・・・それもいません。あっ、いえ・・・その・・・います」


そう言って彼は目線をそらして尚更顔を赤くした。最後の言葉は小さすぎてよく聞こえなかったけど・・・。

しばらくチラチラと私の顔を見てきたけど、意を決したように私の顔を真直ぐに見つめてきた。


「あの、間宮さんはつき合っている人はいるのですか」


真直ぐ過ぎる視線に私はたじろいだ。


「えっと・・・いませんけど」


なんか返答するのを躊躇ってしまうくらいに見つめてくるから、私の方が視線を逸らしてしまった。・・・というか、イケメンと視線を合わせるなんて、心臓に悪いわ。


「じゃあ、好きな人は」


何ですか?さっきの返しですか?


「い、いません」


めちゃくちゃ見てくるけど・・・ごめんなさい。見つめないでください。邪まな事を考えてすみませんでした。土下座でも何でもしますから~。


そんな私の内心に気づかずに、彼は笑みを浮かべた。


「それでしたら、俺・・・いえ、私とつき合って頂けませんか」

「はっ?」


・・・って、なんでそこで頬を染めるの?あんたは乙女か。

・・・何?その照れた仕草。いや~、もう、ツボだわ。


「その、信じて頂けないかもしれませんけど、一目惚れです」


だからさ、夢見る乙女みたいな目を向けないでくれます?



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