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少し目が泳いだけど、ちゃんと答えないと、とでも思ったのか私の方を見つめて来た。
「えーと、それは、もちろん・・・腕を組んだり、キスをしたりしました」
「・・・それ以上は?」
「はっ?」
「だから、セッ「うわー!」
私の言葉を遮るように大声を出され、吃驚して目を瞬いたのよ。
「お願いですから、間宮さんの口からその言葉を言わないでください」
「え~、ただの行為の言葉じゃない」
「それでもです」
涙目でお願いって・・・もうもう、可愛すぎるでしょう!
「じゃあ、その行為はしたの?」
「・・・そんな無責任な事出来ません」
真剣な表情をしていう彼に、何となくどういった育てられ方をしたのかが分かった気がした。
「もしかしてまだ・・・」
「あっ、いえ、それはもう」
一応体験はしているようだ。・・・って、じゃあなんで結婚してないの?そう云った行為があれば彼のことだから、結婚しているわよね。
傷を抉ることになるかと思ったけどこれも聞かないと、話しが進まないよね。
「じゃあ、なんで結婚してないの?」
「・・・重いと言われました」
あー、多分責任がどうのと言ったんでしょう。だけど落ち込んでいる様子が可哀そうだけど、かわいい。・・・イカン。もう末期かもしれない。こんなにもツボる人だなんて。
「それでですね、間宮さん」
「はい」
「お付き合いをするのであれば、結婚まで真剣に考えています。こんな私でよければなのですが・・・。それで、今の話を聞いてどう思いました?」
だからさあ~、そこで捨てられた子犬のような目で見て来ないで。可愛くて抱きしめたくなるじゃないの。
「私は嬉しいわよ。そこまで真剣に考えてくれるのなら」
「へっ?」
いや、へっ?は、無いでしょう。
「でも、その、私は女性から見たら優柔不断で女々しいらしいですから。それに重いですし」
「それさあ~、私から見たら、全然優柔不断でも女々しくもないんだけど」
「えっ、そうなのですか」
「優柔不断な人が会って間もないのに、一目惚れしたって交際を申し込んだりしないでしょう」
「・・・そうでしょうか」
「それに、私は訊きたい。上野さんは今まで付き合った女性たちに未練ってあるの」
「・・・いえ、全然ないです」
「ほら、女々しくないじゃない。女々しい男って言うのはいつまでも未練たらたらしているものよ」
「そうなのですか」
「それと、重いっていってたけど、私はもう28歳なの。遊びの恋愛なんて考えられない年なのね。だから、先のことを考えてくれているのなら、重いだなんて思わないわよ」
私の言葉に彼の顔はパアーっと明るくなった。
でも、私はさっきの自分の行動が、彼に嫌われる行動だと気がついたので、どうしようかと思った。言わないで、後からあの時のことが原因で別れることになるのは嫌だし、懸念材料は先に失くしておくべきよね。
「ところでさ、さっき私がキスしたでしょ。それは嫌じゃなかったの」
彼は思いがけないことを言われたというように、私のことを見つめてきた。
「嫌じゃないです。とても嬉しかったです。ただ・・・」
そこで言葉を止めて彼は私から視線を外した。
「ただ?」
意地悪かなと思いながら、訊いてみる。
「その・・・自分の方からしたかったな~、と」
ちょっと頬を染めていう様子がかわいくて、またキスをしたくなったと言ったら、彼はどう思うのだろうか?
というか、照れる。なんなの?このカワイイ人は。もう、さっきからキュンキュンしてくるんだけど。
彼が私の顔を見てきた。
「あの、キスをしてもいいですか?」
き、聞くの?このタイミングで?
「う、うん」
なんか、彼が可愛すぎて恥じらってしまった。私の返事に彼は立ち上がるとそばに来て隣に座った。私の方を向いて座る彼に、なんか恥ずかしさが込み上げてくる。両肩に手を置かれて彼の方を向かされた。そのままゆっくり彼の顔が近づいてきて、私は目を閉じた。そして唇が重なった。軽く触れ合うだけのキス。唇が離れたら自然と俯いてしまった。
そのままギュッと彼に抱きしめられたのだった。




