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花の金曜日だっていうのに彼氏とのデートどころか、同僚、友人との飲みもなく残業をして終電で自宅まで帰って来たのに・・・。


この邪魔者をどうしたらいいのだろう。


私の部屋の扉を背にうずくまっている男を見つけた私は、しばらく考え込んだ。


私が部屋に入るためにはこの男を退かさなければならない。

退かすためには話し掛ける。

寝ているようだから揺すって起こす。


どう考えてもこれしかないか。

仕方なくその男の肩に手を掛けた。


「あの、すみません。起きてくれませんか」

「ン? ・・・ウァ・・・誰?」


その男は私の呼びかけに目を覚まして顔を上げた。乱れた前髪越しに切れ長の目が私を見てきた。少し寝ぼけた感じが可愛く思えた。


「えーと、この部屋のものです」

「・・・この部屋? ・・・あれ? 自分の部屋・・・じゃない?」


男は顔を上げて私のことを見つめてきた。眠いのか目がトロンとしている。


「はい。ここは私の部屋です」

「あー・・・だから鍵が合わなかったんだ・・・」


お酒に酔っているのかポヤンとした言い方に、私の口許に笑みが浮かんだ。


「退いていただけると助かるのですが」


そう言ったら男の人はモソモソと横に移動をした。鍵を開けようとしてふと思いついて聞いてみた。


「ちなみに部屋番号は?」

「えー・・・505です」

「隣ですね」


私がそう言ったらまた私を見上げてきた。ついでに首をコテンという感じに傾けた。

ク~・・・かわいいじゃないか。

いい歳した男に可愛いはないと思うけど、なんか仕草がカワイイぞ。


「私の部屋は506なんですよ」

「・・・それは・・・お邪魔なことを・・・」


そう言って男の人は壁に手を添えて立ち上がった。その体がフワリと倒れ掛かる。とっさに手が出て彼を支えた。


「あ~・・・重ねがさねご迷惑を・・・」

「いえ。部屋まで送ります」

「ん~・・・そこまでの・・・ご迷惑は~」


酔っているからか、言い方もフワフワとした言い方だ。多分この人は30歳ぐらいだろう。私とそう変わらない歳だと思うけど、なんか年下を相手にしている気分になる。


「隣なのでそんなに迷惑にはなりませんよ」


そう言って彼の左腕を私の肩に回させて、私の右手を彼の背中に回して支えるようにした。彼が息を吸い込んだ音が聞こえた。


「大丈夫ですか?」

「ん~・・・なんか~いい匂いがする~」


彼はそう言うと、私の髪の匂いを嗅ぎだした。私は一瞬彼を放りだそうかと思ったけど、なんとか支えて歩いて行く。隣のドアまでの10歩ほどが遠く感じる。

何とかドアの前に辿り着き、彼がドアの鍵を開けるために私の肩から腕を外そうとした時に事件は起こった。


・・・というほどではないんだけどね。彼の左手が私の眼鏡に当たり、眼鏡が飛んでしまっただけなんだけど。幸いなことに眼鏡はレンズが欠けたりとか、歪みとかもみられなかった。この前、形状記憶タイプのフレームに変えたのは正解だったと、眼鏡を拾いながら思った。


彼を見たら、目を大きく開けて私のことを見ていた。もしかして眼鏡が破損したとおもったのかしら?


「大丈夫ですよ。フレームの歪みも、レンズに欠けたところもありませんから」

「あっ・・・ああ・・・その・・・」


眼鏡をかけながらそう言ったら、モゴモゴ言うお隣さん。やっと玄関の鍵を開けたようだ。


「じゃあ、私はこれで。あまりお酒を飲みすぎない方がいいですよ。これからよろしく、お隣さん」


そう言って離れようとしたら、また、彼がフラリと倒れ掛かる。ついまた支えて、仕方がないなあ~と、思いながら言った。


「仕方がないですね。でも玄関の中までですよ。私が出たら鍵をかけてくださいね」


そう言って、ドアを開けて彼の部屋の玄関に入った。


そして・・・えーと、なんでこんなことになっているのかしら。


玄関の中に入って彼から手を離したら、私の方を向いた彼に肩を抱かれた。その後ろでガチャリとドアが閉まったのよ。それで、そのドアに押し付けられるように向かい合ってます。



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