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第13話一緒に三人で

 シャイニーの告白を受けたその日の夜、セリーナとムウナが目を覚ましたとの一報が入ったので、俺は早速二人が眠っている部屋にやって来た。


「セリーナ、ムウナ、よかった目を覚ましてくれたんだな」


「咲田様……。こわ心配させてすいません……」


「咲田、すまぬ……。妾までこんな目にあってしもうて」


「いいんだ。二人がこうして目を覚ましてくれたんだ。俺はそれだけでも充分だよ」


「咲田様……」


「病み上がりの二人に悪いんだけど、二人に話したい事があるんだ。入ってきてくれフィオナ」


 部屋にフィオナを招き入れる。何も事情を知らない二人は、驚きの声を上げた。


「げ、げ、げ、原始の姫巫女様?! ど、どうしてこちらに」


「そ、咲田。こ、これはどういう事じゃ」


「お初にお目にかかります。王女様と大地の姫巫女さん」


 俺は二人にここまでの経緯と、これから俺達が始めようとする事を説明した。それにはフィオナも付け加えをしてくれ、俺はスムーズに話す事ができた。


「この世界から姫巫女を……。確かにそうすれば、今起きている問題は解決できるかもしれませんが、その後の森や大地の守護はいかがなさるんですか?」


「それはこの世界に住む人間が手を組んで守っていくんだよ。大地の民も、俺達も一切関係なく」


「姫巫女をこの世界から失くす、それはお主やシャイニーがどうなってしまうのかも理解しておるのか?」


「分かっていて言っている。俺はその覚悟はできている」


 まだ若干ながら揺らいでいるけど、それは全てが終わるまでに決着をつける。シャイニーは恐らく心の中では反対しているだろうし、一筋縄ではいかないと俺は思っている。


「フィオナ様もそれが一番だとお考えですか?」


「一番も何も、これ以外の方法はないと私は考えています。もし可能なら、私も別の方法を考えたいのですが、なにせまだ目覚めたばかりなので頭が回らないのです」


「今でも充分回っておる気がするがのう」


 そもそもこの話を聞かされたのは彼女が眠っている時。どのくらいの時間あの場所で眠っていたのか分からないが、相当頭は回るかもしれない。


「それで二人は協力してくれるのか? 一応全員賛成してくれたけど」


「姫巫女を失くすことに抵抗は感じますが、まだそれが結果とは限らないので、私も協力します咲田様」


「大地の姫巫女として、大地の民を説得するのに妾の力も必要じゃろうから、協力するぞ咲田」


「ありがとう。これで作戦を始められる」


「もう何をするか決めておるのか?」


「ああ。まずは明日グリーンウッドへ行こうと思う」


 ■□■□■□

 一通りの話を終え二人がいる部屋を出ると、向日葵が待っていた。


「どうした向日葵」


「ちょっと咲ちゃんと話がしたいんだけど、いいかな」


「ああ。雄一は呼ばなくていいか?」


「二人で話がしたいの」


「分かった」


 二人で話すなら俺の部屋がいいという事になり、向日葵とともに俺の部屋へと向かう。

 その道中、


「え? 明日から違うところに行くの?」


「ああ。セリーナとムウナが意識を取り戻したし、早速動こうと思ってさ」


「私達は付いて行っちゃダメなの?」


「うーん、とりあえずは二人ともここにいてほしいな。居残り組は居残り組みでやってもらいたい事があるし」


「やってもらいたい事?」


「それは明日説明するよ。本当は俺も怪我人だからもう少し様子見したかったんだけど、やっぱり俺には性に合わないしさ」


「それは知っている。昔から咲ちゃんを見てきているから知っている。でも」


 俺の後ろを歩いていた向日葵が歩くのを止める。


「私は咲ちゃんと離れたくない。特にこの世界にいる間は」


「向日葵も付いて行きたいのか?」


「うん。そうでないと不安に押しつぶされそうで嫌なの」


 さっきはああ言っていたけど、やはり彼女は今回の話に消極的だった。ただでさえ、俺がこの世界に残る事を反対していたのだから、それは当たり前だと思う。彼女は人に優しい代わりに、自分の本当の気持ちを外に出さない。それを俺は一番理解していた。


「やっぱり不安だったんだな。この世界に残る事が」


「うん。だって元の世界に帰ってしまえば、誰かが傷つくのを見なくて済むし、何より咲ちゃんと別れる事もなかった」


「ごめんな、俺の我儘でこんな事になって」


「謝るくらいなら……最初から大人しく帰ろうって言って欲しかったよ私! どうして……どうして咲ちゃんと別れる前提で、一緒にこの世界にいなければいけないの? ねえ、教えてよ咲ちゃん」


「それは……」


 その問いに対して俺は答えを出せなかった。二人がこの世界にいるのも、元の世界に帰れないのも全て俺の我儘のせいなのを理解している。だから何を言っても言い訳になってしまう。

 そうだと分っているから、俺はなんて向日葵に言葉をかければいいか分からなかった。


「私……咲ちゃんが今度こそ本当にいなくなるのなんて、嫌だよ! ねえ、お願いだから居なくならないで! この世界でやる事を全部やって、三人で一緒に帰ろう!」


「……ああ」


 果たして叶えられる願いは分からない。でもそれで、少しでも彼女が楽になるのなら、俺はそれでいい。何せまだ未来は確定していないのだから。今からでも少しずつ修正できるはずだ。


「三人で一緒に帰ろう、日本へ」

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