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この夏俺は世界を守る巫女に生まれ変わりました  作者: りょう
真・第1章帰ってきた元姫巫女の夏休み
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第12話今こそ手を取り合って 後編

「人間達の手って、もしかして今起きている事が原因なの?」


「そうです。森の姫巫女であるあなたが、姫巫女を名乗れなくなった原因である、普通の人間によって誕生した新たな森の姫巫女。本来加護を受けていない姫巫女が、守護しようとしたら確実に破滅を招くのです」


「やっぱりそうなるのね」


 それは先日グリアラが説明してくれた通りだった。でも俺はその説明に一つ疑問を持っていた事がある。


「加護が必要なのは分かるけど、地上の人との接触を拒んでいた大地の民が生み出した大地の姫巫女、フォルナは平気なのか?」


「実は大地の民には加護に匹敵する力を所持しています。私が行ってきた加護とは別の力を。それによって大地の姫巫女を確立したのでしょう」


「じゃあ大地の民が新たに生み出したフォルナとは別の大地の姫巫女は、問題が起きないって事か?」


「そうなります」


 六年前俺の目の前で二度大地の姫巫女が変わった。それがいわゆるフィオナが言っている力の事なのだろう。


(それはそれで厄介だな……)


 もし姫巫女を全て消すなら、その大地の民が所持しているという力も何とかしなければならない。そうとなると、六年前のような衝突も避けられないかもしれない。


「咲田、俺さっきから何話しているか全然分からないんだけど」


「私も」


「うーん、俺もうまくは説明できないな。もう少し調べる必要があるし」


 何はともあれ原始の姫巫女がここに復活し、ラファエルが生存してしまっている以上、早急に始めなければならない。


「そういえば歌姫達はどうなるんですか?」


「歌姫は姫巫女とはまた別の力の源があるので、これから先も続けても大丈夫です。彼女らは何一つ害はないのですから」


「よかった。お姉ちゃんはお姉ちゃんのままで居られるんですね」

 

 自分の姉の事を何より心配しているシャイニーが安堵の表情を浮かべる。自分が消えてしまうかもしれないというのに、姉の方を心配するなんて何て心優しいんだ。


「とりあえず詳しい策とかは浮かび次第またお話しします。それまでは王女と大地の姫巫女が目を覚ますのを待ちましょう」


 最後にフィオナがそう締めて今回の話は一旦終了した。


 ■□■□■□

 話が終わり皆が俺の部屋を出ていく中、何故かシャイニーだけが部屋に残っていた。


「どうしたシャイニー」


「咲田君、私どうすればいいでしょうか?」


「どうすればって?」


「この作戦が終わったら、この世界にいられなくなるかもしれないって考えると凄く怖いんです」


 よく見たらシャイニーの身体が震えている。さっきは賛成してくれたけど、本当に死ぬって考えたらやはり怖いのだろう。その気持ちは俺も痛いほど分かる。


「確かにそうかもな……。俺も雄一や向日葵、そしてセリーナやシャイニー達と別れるって考えると凄く怖い」


「でも、それ以外の道はないんですよね」


「今のところは、だな。フィオナがそれ以上の事を思いつけば、大きく変わるかもしれない。けど、それは俺達にはまだ分からない」


 正直この選択がどんな未来を描くか俺には分からない。それに全てが思い通りにいくかなんて分からないし、もしかしたらそれ以外の未来もあり得るかもしれない。


「でも不確かな未来だからこそ、可能性だってあるんじゃないのか?」


「そうでしょうか……?」


「俺はそう信じているよ」


 シャイニーの震える手を握る。


「咲田君……」


「だからこれからはこうやって共に手を取り合って、頑張ろうぜシャイニー」


「女性の姿でそのセリフを言われると、何か違和感がありますね」


「しかたないだろ。俺だって好きでこんな姿に……」


 ほんの一瞬の出来事だった。フィオナのように頬っぺたにキスではなく、唇にほんの数秒だけシャイニーの唇が触れた。俺は一瞬何が起きたか分からず目をパチクリさせていると、シャイニーはいたずらっぽくこう言った。


「本当ならこのキスも、咲田君本人にしたかったんですけど。それはもう叶わないんですね」


「シャイニー?」


「咲田君、私六年前からずっと咲田君の事が好きでした。姿が変わってしまっても、その優しいところは何も変わってなくて、私が好きな咲田君のままでいてくれたことがすごく嬉しいんです。だから……だから」


 涙声になるシャイニー。俺は何も言葉を発することができない。


「だからこうして……咲田君とお話が出来なくなることが本当は嫌なんです。私はこんなに咲田君が好きなのに、それが叶わないなんて嫌なんです」


「シャイニー、俺は……」


「返事はグリアラさんの気持ちと私の気持ち、どちらにするかしっかり決めてから教えてください。私はそれまで待っています」


「って、何でそれを」


 俺の言葉を聞く前にシャイニーは部屋を出て行ってしまった。どうやら俺は、一つの人生が終わる前に大きな決断を迫られているらしい。


(まさかシャイニーにも告白されるなんて……)


 二年前にグリアラに告白され、今シャイニーにも告白された。正直俺はどちらを選べって言われたら、そんなの決められない。男としてすごく情けない話なのかもしれないが、グリアラに対しての返事を二年経っても決められなかったのだから、今シャイニー対しても答えを出せない。


(俺は今誰が好きなんだ?)


 身体が女性でなければ、もっと良いイベントになったのだろうけど、こればかりは仕方がないか。

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