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この夏俺は世界を守る巫女に生まれ変わりました  作者: りょう
真・第1章帰ってきた元姫巫女の夏休み
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第9話解放されし姫巫女 前編

「もし仮に姫巫女をその呪いから救い出した時にはどうなるんだ?」


『縛られた魂は解き放たれて、旅立つ事になります』


「旅立つって、つまり」


 本当の死を迎えるって事だろうか? それはつまり、シャイニーはこの世界からいなくなるという事だろうか。


『あなたの考えている事そのままです。そしてあなたは気づいてないかもしれませんが、あなたもその呪いを受けている一人なのですよ』


「お、俺も?」


 それは少し予想外だった。俺は水の姫巫女の任を四年前に終えていたから、呪いとは関係ないと考えていた。でも原始の姫巫女の話を聞いて、ここまでの謎が解けた気がした。


(よく考えればありえない経験をしているんだよな、俺も)


 四年前に自分の世界に戻ってから、俺は一度記憶も全て引き継いで転生をしている。ただの偶然だとは思っていたけど、それももしこの彼女が言うように、呪いだというならば俺はこれが終わったら……。


『思い当たる節はあるようですね』


「あるけど、それはつまり俺は姫巫女達を救ったら、今度こそ本当の意味で死ぬのか?」


『残酷な話かもしれませんが、そうなります』


「そうなるって……」


『よく考えて動いてください。あなたには辛い話になるかもしれませんが、いざという時には私が力をお貸しします』


 それが昨日の会話の最後の言葉だった。信じたくはない話ではあったが、よく考えれば当たり前の話だったのだ。何せ俺は一度死んでいるのだから、転生なんて話は本来非現実的な話だ。

 だがそうは分かっていても……。


(俺は本当の意味で死ぬのが、怖い)


 この体でおれは当たり前のように六年近く生きてきた。女の体だったとは言えど、向日葵や雄一と楽しい時間をずっと過ごして来れた。ずっとこの時間が続くとさえ思っていた。


(だけどもし今回の事件が解決して、原始の姫巫女が望んだような世界を手に入れられたら)


 俺やシャイニー達はもうこうして当たり前のような生活はできなくなってしまう。


「俺は……どうすればいいんだ、原始の姫巫女」


 昨日のあの部屋についてすぐ、俺は原始の姫巫女に問う。セリーナとムウナの件も同じだけど、今回は問題が多すぎる。


『昨日はいろいろな事が起きましたね。まさか大地の姫巫女までが負傷するとは』


「全部見てたのか……。なあ、どうして大地の姫巫女の命が狙われるような事が起きたんだ?」


『本来は存在しない闇の姫巫女が復活した事が大きく関係していると思われます』


「闇の姫巫女……やはりラファエルは生きているのか」


『間違いなく。そして一連の事件に彼女は深く関わっているでしょう』


「あいつは一体何者なんだ」


 ラファエルに関しては謎が多かった。水や大地や光があるように、闇がこの世界に存在しているのは分かる。けど以前、ラファエルはこの世界の人々の心の闇から生み出された存在だと俺は聞かされていた。

 だからこの世界の姫巫女の概念とは本来かけ離れているといえる。


『闇の姫巫女、先ほども言った通り本来存在しないはずの巫女なんです。しかし何故彼女がこうしてまた復活した理由を考えると、納得の行く理由が一つあります』


「昨日言っていた呪いの事か」


『彼女もまた、同じように魂を縛られる一人の被害者かもしれません』


「それなのにどうして……」


『一連の事件の真意は私にはまだ分かりませんが、彼女ともう一度接触する時が来れば分かるかもしれません』


「この世界に闇があるかぎり僕はいなくならないよ」


「え?」


 背後から声が聞こえる。その声は昨日襲撃された際に効いた声で、尚且つ六年前に何度も聞かされた声だった。


「まさか君がまたこの世界に現れているとは思わなかったよ。元水の姫巫女ミスティア」


「ラファエル!」


 ■□■□■□

 予期せぬ侵入者に俺は動揺を隠せない。まさか昨日の今日で再び彼女がここに現れるとは思っていなかった。


「まあまあ、今日は戦いに来たわけではないから、身構える必要はないよ」


「セリーナやムウナに怪我を負わせておいて何を言う」


「いやぁ、まさか大地の姫巫女に現場を見られていたとは思っていなかったんだよ。ここの王女様のいのちは元から頂戴するつもりではあったんだけど」


「ムウナを襲ったのは口止めのためか。だが残念ながらムウナもセリーナも生きている」


「大地の姫巫女は元から死ぬとは思ってなかったからいいけど、王女が生きているのは計算外だったかな」


「ふざけるな!」


 体を動かしてラファエルを殴ろうとするが、あっさり避けられてしまう。


「病み上がりなんだから動かない方がいいよ。それにさっきも言ったけど、僕は今日は戦いに来たんじゃない。君に話をしに来たんだ」


「俺に話、だと」


 にわかには信じがたいが、向こうが有利である以上は変に刺激を与えない方がいい。ここは素直に話を聞こう。


「君は知っているかい。ここに眠っている原始の姫巫女が何故旧ウォルティア城にあるのかを」


「お前はそれを知っているのか?」


「僕も長く生きているからね。君達が知らないことを色々知っている」


「だったら教えてくれよ。お前が知っている事を」


「教えてもいいよ。でもその前に」


 ラファエルは原始の姫巫女が眠る水晶に触れる。するといとも簡単に水晶は砕け、中から少女の体が出てくる。


「なっ」


「まずはこの姫巫女を僕のものにしてから、だけどね」

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