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この夏俺は世界を守る巫女に生まれ変わりました  作者: りょう
After story ある夏の三日間
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第3話変化と繰り返し

 初日は明日の準備などで皆疲れていたのか夕食を食べた後、明日に備えて早めの睡眠を取ることに。


「なあ今から寝るんだよな」


「勿論」


「だったら何でこんな大部屋で、しかも三人とも何かする気満々なんだ?」


 なる予定だったのだが、俺は今セリーナを除く三人と一緒に城の中のある大部屋で布団を敷いている。


「だってもっと聞きたいんですよ、咲田君の話」


「話って言っても、そんなに話す事なんてないぞ。強いて言うなら、この体になった事くらいだけど」


「言われてみれば不思議な話じゃのう。お主が転生をしたのは水の姫巫女があったからこそじゃというのに、二度も転生するなんてのう」


「何か女に転生しないといけない使命でもあるんじゃないの?」


「そんな使命嫌だよ」


 でもムウナの言う通りだった。正直な話この魂と記憶を引き継いで、女性の体になってまた目覚めた時はかなり驚かされた。

 水難事故で命を落として、この世界に転生したのだって偶然水の姫巫女というものが存在して、それに俺が合致しただけだ。それと比べて今回の生まれ変わりは、何の脈略もない。


「それにもう一つ俺も気になっている事があるんだよ」


「ここに来る前に聞いた声の事?」


「そうだ。あの声の主は恐らくこの世界の事もら四年前の事も、そして俺の事も知っている。そうでなければこういう事は起きなかった」


「どこかのお偉い神様とかなんですかね」


「ありえない話でもないな。まあどちらにせよ感謝しないとな」


「そうじゃの。こうしてまた巡り会えたのは、その神様みたいな存在のおかげじゃからの」


「じゃあそろそろ寝るぞ」


 明かりを消して、皆が布団に入る。さあ、明日は忙しそうだし早く寝ないと。


「って何自然に寝てるのよ! 話したい事山々なのに」


 まあ、そう簡単にはいかないのは知っていたけど。


「明日早いんだろ? だったらゆっくり寝かせてくれよ。一応時差ぼけもあるんだから」


「時差ボケって何?」


「ああそうか、この世界にはないのか……」


 すごく今更な話だけど、一応時差ボケが生じているためかなり体が堪えている。それだというのに、三人は起きる気まんまだし、俺にとっては地獄にしかない。


「私も正直眠いですけど、咲田君の話の方が大切ですから我慢します」


「いや、そこは我慢しなくていいからな」


 とりあえず俺の夜はまだ長くなりそうだ。

 ◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎

 ようやく三人が寝たのはそれから更に二時間後。その間色々と質問責めされた俺は、今度は逆に眠れなくなってしまった。


(一体俺が何をしたっていぅんだよ)


 とりあえず眠くなるためにも、少しだけ散歩に出かける。そういえばこの世界に来てから一度も外に出てなかったっけ。


(うわぁ、あれから大分変わったなここも)


 すっかり人の気配が消えたウォルティア城周辺。街は明日の祭りの仕様になっていて、どんな事やるか分からないのにワクワクしている。


「四年でここも大分変わりましたよ。人も国も」


 その代わり映えに呆気を取られていると、後ろから声がする。どうやらセリーナもまだ寝れていなかったらしい。


「世界が元の形に戻った時には、この後どうなるか心配したけど頑張ったんだなセリーナ」


「受け継いだからには、やれる事はやり尽くしたいって決めたんですよ私。この記念祭もその一環でもあるんです」


「なるほどな。お前だけじゃなくグリアラ達も多分同じ事を思ってるよ。もう二度とあんな事が起きないためにも自分達ができる事をしようって。だから統合にも合意したんじゃないのか?」


「そうかもしれませんね。正直簡単な話ではない事ですからね。沢山の国々が一つになるって」


「そういう事だ」


 皆思っている事が一つだからこそ、それが成し得ると俺は思っている。四年前人の心の闇から生まれたあの悲劇は、完全に消え去ったとは言えないだろう。人はいつだって心に闇を抱えているのだから。


「さて、明日も早いですしそろそろ寝ましょう咲田様」


「そうだな」


 セリーナと話をしたおかげで、眠気が増したので城に戻る事にする。


「それではおやすみなさい、咲田様」


「おやすみ」


 途中でセリーナと別れて、部屋へと戻る。三人は相変わらず爆睡しているので、俺もようやくゆっくりと睡眠が取れそうだ。


『四年振りの再会、ずいぶん楽しめたみたいだのう』


 布団に入り、目を瞑った直後声が聞こえた。俺をもう一度この世界に呼んだあの声だった。


「誰なんだお前は。またこの世界に連れてくれたのは感謝しているけど、いきなりだったから正直驚いているんだよ」


 他には聞こえないように俺は小声で、天の声に話しかけてみる。


『確かにいきなりは申し訳なかった。しかし時空門が開かれるのこの三日しかなくて、急遽呼ぶしかなくてのう』


「急遽って、俺が願っていた事以外に何か理由でもあるのか?」


『お主は覚えているか? 四年前の事』


「当然覚えているよ。世界を修復するのに、かなり苦労したからな」


『あれが再び起きようとしている。それも記念祭の明日の日に』


「え?」


 四年前、世界は一度大きな闇に包まれている。それが再び起きる可能性がある、そんなのあり得ないと思いたいが完全には否定できない。


『まだ確実に起きるとは言えない。未然に防ぐ事ができる。その為にお主を呼んだ』


「未然に防ぐって、どうやってだよ」


『今回起きてしまう一番の原因として考えられるのが、王妃であるセリーナ』


「セリーナが? どういう事だよ」


『お主は恐らく知らぬようだから、ここで語っておこう。彼女の話を。そしてそれを聞いた上で、お主にはある事をしてもらいたい』


「ある事?」


『現王妃、セリーナをその手で討ってもらいたい』


 あれから四年、俺の夏は転生の時以上に最悪の夏になってしまうかもしれない。

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